村井良大インタビュー「これだけノーテンキなのは幸せなこと」 ブロードウェイ・ミュージカル『アダムス・ファミリー』
村井良大
ブロードウェイ・ミュージカル『アダムス・ファミリー』が2017年10~11月、KAAT神奈川芸術劇場ほか大阪、富山でも上演される。ドラマやアニメ、映画化もされた作品で、2010年にブロードウェイでミュージカル化され、日本では3年ぶりの再演となる。今回、人間界のルーカスを演じる村井良大に意気込みを聞いた。
村井良大
――まずは『RENT』お疲れさまでした。もう気持ちは『アダムス・ファミリー』へ切り替わっていますか?
はい。もう切り替わっていますね。もちろん、がっちり浸る部分もありますけど、意外と終わったらすぐ次に切り替わります。昔は役に引きづられることがちょっとありましたけど、今はないですね。舞台上だけ。引きづられていたら身体もたないです(笑)。
――『アダムス・ファミリー』という作品の印象を教えてください。
初演の資料映像を拝見しました。あの音楽と、「ハンド」は印象的ですよね。そもそも『アダムス・ファミリー』といえば、音楽とハンドと言ってもいいんじゃないかな。あとは、ストーリーを知らなくても、ウェンズデーという名前も知っている人が多いかなと思います。
先日、改めて映画版を見直してみたんです。だいぶ前に見たきりであまり覚えていなったので見たのですが、かなりシニカルで、ブラックジョーク盛りたくさんで。面白かったですね。当時の時代を反映しているギャグが散りばめられているけれど、今見てもクスッと笑えるところが多い。「おかしいでしょ、そんなの!」というのを普通にやってしまう。日本人だとなかなか出せなし、感覚的にあまり好みではないであろう、暴力的な感じも所々あって。海外っぽい、ニューヨークっぽいなぁと思いました。まぁでも映画版はすごく見やすくて、面白くて、さらっと見れちゃいましたね。
――村井さんが演じるルーカスについてはどんな印象をお持ちですか?
舞台版の映像を見て、なんとなくの流れは掴んでいます。ルーカスはすごく思春期っぽい男の子だなぁと思います(笑)。ウェンズデーもですけど、かなり「アメリカ人」だなぁと。そこが面白いところでもあるから、どんどん出していった方がいいのかなぁと今は思っています。アメリカ人の特性を知っておかないと(笑)。まだ稽古前なんですが、この少年はどう育ってきたんだろうなというのは感じました(笑)。その辺をどう作り込むのか……蓋を開ければ普通の少年だけど、ちょっとなんか違う扉もあるのかな……。
――「アメリカ人」というのはどのあたりでお感じになられましたか?
日本人では考えつかないようなこと、そうだなぁ、僕もなんて言っていいか分からないんですけど、「これは良くて、これはダメ」という感覚の違いが、少し飛び抜けている。ルーカスに関して言えば、ちょっと抜けているようなんだけど、本人は真面目に考えている。そういうところが笑いにつながるかなぁと思います。
映画と同じように、笑いが多い舞台ですから、気楽に見られるかなと思います。映画よりも人間臭さが出る感じもあるんですけど、家族や恋人同士で楽しんでもらえたらと思います。
村井良大
――演出の白井晃さんに対してはどのような印象をお持ちですか?
白井さんは光の使い方と周りのエキストラの使い方がとにかく上手ですよね。雑踏が白井さんは好きなんだろうなぁと思うんです。主軸の周りの雑踏を描くのが好きで、アンサンブルをふんだんに使う。舞台っぽくないというか、どちらかといえば映画っぽく、引き気味に写っている人たちを演出しているのが印象的です。役者にとってはありがたいことなんです。むしろ本来それが普通であるべきだと思っています。裏でも生活している人がいて、その人は会話をしているし、その人の人生がある。それをとても自然に導いてくれるから、すごく好きな演出家です。
白井さんには、真面目な顔してバカバカしいこと振ってほしいですね。白井さんの面白さをなるだけ自分で噛み砕いてやっていきたいなと思います。
――2014年の初演時のメンバーが多くカンパニーにいます。
そうなんですよ。それが結構大変で、絶対に難しいと思うんですよね。白井さんとタッグを組んだカンパニーが、本番をやっている。圧倒的に回数が違うんですよ。僕もみんなに追いついていくというか、なるだけ平等であろうとしますが、絶対平等じゃない。そう思っています。だから、いかに新しいものを投げつけるかにかかっていると思います。これはどうですか?あれはどうですか?と提案する。それがダメだろうと、それはそれでコミュニケーションになるので、提案しながらやっていきたいです。
――緊張感がありますね。
めちゃくちゃありますね。自分一人で、別の会社の会議に出るような感じです(笑)。自分の立ち位置がどう思われているかも分からないのに、発信するしかない感じです。もう、嫌われてもいいぐらいの感覚で行くしかない。ダメで元々で行くしかないです。絶対この仕事している人たちは「よろしくね」と言ってくれるんですけど、どのラインの「よろしくね」かは見極めないといけないですね(笑)。頑張らないと。
――絡みの多いウェンズデーの昆夏美さんの印象は?
初めての共演です。僕にとっては『レ・ミゼラブル』のイメージが強いですね。
あ、あと思い出しました。昆さんの出ている、とある舞台を見たことがありました。その時、ある意味純粋なんだなぁと思って。いい意味ですごく冷めているなぁと。どう冷めているのかを実際本人に会った時に見てみたいですね。どう基準で笑うんだろうとか。ウェンズデーだと笑わなさそうなんですけど、稽古場で色々試してみたいですね!
ストーリーとしては、僕はウェンズデーのことが好きという立場なので、うまいこと役に取り込めたらいいなぁ。ウエンズデーは感情が見えないキャラクターなので、どう転がるか、どう受け入れてくれるか見てみたいです。
――そのほか共演者の方の印象はどうでしょう。
今回は全員初めましてなんです! 橋本さとしさんの舞台を僕が見に行って劇場でご挨拶させていただいたことがあるんですが、とても紳士的で素敵な方でした。どういう風に稽古場で演出や芝居のアプローチを練っているのかは気になります。本当に腰の低い素敵な方でしたね。全員初めましてなので、正直、どう行っていいかわからないことが多いです。しかも再演メンバーが多いので、当たって砕けろ状態です。どれだけアイディアを持っていくかですね。
――今回は、神奈川、大阪、富山の3都市を巡ります。地方公演の魅力は?
富山は初めて行く地なので、探検してみたいです! 地方公演は、公演期間が数日空くんですよ。劇場が変わって、人間が変わって、たまにポーンと5日間ぐらい空くんです。そうすると芝居がリフレッシュされて新鮮に感じられるんです。新しい見え方や気づきがあるんです。そこが地方公演の面白さですよね。もちろん、お客さんの反応の違いも楽しみです。
村井良大
――ちなみに村井さんがご自分では普通だと思っていたけれど、他人から指摘された「我が家だけの普通」って何かありますか。
悲しかったんですけど、うちの家族すごく仲いいんですよ。従兄弟で頻繁に集まったりするんですね。総勢20人ぐらいなんですけど、家族全員、親戚も含め仲がいいんです。高校生の時に、「親と一週間、口聞いてない」と言っている友達がいて、「え、そうなの!?」とカルチャーショックを受けたことはあります。あぁこの幸せは普通じゃないんだなって思いました。家庭によって事情は違いますよね。これだけノーテンキなのは幸せなことなんだなって思いました(笑)。
――最後に一言お願いします!
家族もしくはカップルで見に来て欲しいなと思いますね。『アダムス・ファミリー』の登場人物の人たちは、ぶっ飛んでいる人が多いので見ていてスッキリすると思いますが、見る人によって見どころは違うと思うんです。誰かと一緒に見に来ていただいて、感想や意見を話しあってほしい作品だなと思います。ディズニーランドのホーンテッドマンションみたいな感じで終わる舞台じゃないんで! もちろん、そういう面白さもあるけど、少し考えさせられる、メッセージを残してくれる舞台なので、是非足を運んで欲しいですね。
村井良大
スタイリスト=吉田ナオキ
インタビュー・文=五月女菜穂 撮影=荒川潤
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ブロードウェイミュージカル『アダムス・ファミリー』
台本:マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
作詞・作曲:アンドリュー・リッパ
原案:チャールズ・アダムス
翻訳:目黒条 / 白井晃
訳詞:森雪之丞
演出:白井晃
出演:橋本さとし、真琴つばさ/壮一帆、昆夏美、村井良大、樹里咲穂、戸井勝海、澤魁士、庄司ゆらの、梅沢昌代、今井清隆ほか
【神奈川公演】KAAT神奈川芸術劇場
・2017年10月28日〜11月12日
【大阪公演】豊中市立文化芸術センター・大ホール
・2017年11月18日、19日
【富山公演】オーバード・ホール
・2017年11月24日、25日
日時:2017年10月1日(日)13:00開始
会場:MARK IS みなとみらい1 階 グランドガレリア
登壇者:
白井晃(演出) 橋本さとし 真琴つばさ/壮一帆(ダブルキャスト) 昆夏美 村井良大
樹里咲穂 戸井勝海 澤魁士 庄司ゆらの 梅沢昌代 今井清隆
<内容>
登壇者挨拶、楽曲披露、フォトセッション、キャンディープレゼント
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