ついに始動! 舞台「青の祓魔師」島根イルミナティ篇、ホットで濃密なプレ稽古の模様をレポート
2016年の『京都紅蓮篇』に続き、10月より新作の『島根イルミナティ篇』が上演される舞台「青の祓魔師」が、本格的な稽古を前に公開プレ稽古を実施。稽古後に行なわれた囲み取材のコメントと共に、その現場をレポートしたい。
この日都内のレッスンルームに集まったのは、奥村燐役の北村諒、奥村雪男役の宮崎秋人、志摩廉造役の才川コージ、宝ねむ役の樋口裕太、神木出雲役の大久保聡美、そして脚本・演出の西田大輔。「『島根イルミナティ篇』は舞台化への難易度が高いエピソード。始まりから終わりまで、活気のある世界にしたいと思っています」という西田の短い挨拶ののち、さっそくアクションシーンの練習が始まった。
演技指導に入る西田
迷いなくサポートの殺陣衆5人の中に入った西田は、燐が動くことを想定したアクションの手をサクサクとつけ始める。その様子を傍で凝視する宮崎。そして、刀を振りながら西田の動きを追い、自身に入れていく北村。数分で十三手ほどの流れがまとまったところで西田と北村がチェンジ。ゆっくり目だが、北村はすでに今初めて目にした殺陣の流れを覚えている! 徐々にスピードをあげつつ2度3度。グッと場のテンションがヒートアップすれば、そこにいるのはもう元気に刀を振るう燐でしかない。西田はさらに全体の動きを見ながら微調整を加え、「ちょっと焦って」「そこから一個ギア上げて!」と芝居の演出も乗せつつシーンを整える。お世辞抜きにここまででほぼ完璧な北村の動きに、「殺陣、また上手くなったんじゃない?」と嬉しい声をかける西田。「成長が止まらないです」との北村の返しにわっと笑いが湧く。心地のよい集中と緩和。これが“西田組”のファミリー感だ。
奥村 燐:北村諒
奥村雪男:宮崎秋人
北村と入れ替わりに宮崎のパートへ移行。二丁拳銃使いの雪男ならではのクールなアクションは、弾丸の行方にも注意を払いつつ、スタイリッシュな流れが組み立てられていく。「ここで両手の銃をクルクルッと回して……出来る?」という西田の指示には思わず「回したことないけど、やります!」と宮崎。こちらもグッと集中、ギアを上げ3度ほど流す頃にはすべての手が入っていた。さらに、先ほどの北村のパートと宮崎のパートをドッキングする。気づけば全員が動きっぱなしの1分弱のアクション、北村のソロ〜宮崎のソロ〜ふたりの共闘〜フィニッシュという流れの鮮やかなバトルシーンが仕上がっていた。ちなみに最後の決めポーズは「これは撮りどころだよね。カッコイイ」と、西田のサービス精神も盛り込まれた“特別版”に。熱と迫力あふれる場面を構成するのに、取り掛かりから仕上げまで約30分。このスピード感は恐らく他の現場に比べても速いはず。さすが。
宮崎と北村
メンバーをチェンジし、アクション稽古の間に傍で台詞を合わせていた才川・樋口・大久保3人が中央へ。まずは手元の台本に沿って、スタンディングでの読み合わせが始まる。西田の前で役として声を発するのはほぼ初めての樋口と大久保が第一声から感情を乗せて掛け合う様子は、もうねむと出雲のそれだ。才川の廉造も自然と台詞に熱が帯びていく。早くも立ち上がる青エク世界のイメージに、「期待しかないって書いておいてください(笑)」と笑顔の西田。
宝 ねむ:樋口裕太
神木出雲:大久保聡美
そのままスタートダッシュでアンサンブルを交えての立ち稽古へ。樋口と大久保へは「いいカンジだよ、ふたりとも」と、主に心情を引き出しながらの動きをプラス、そして才川にはバチバチ状態のふたりの間に割って入る登場シーンについて、「なんかすごい出方あるだろ? やってみて」と愛ある無茶ぶりを要求する。ちょっと考え、サラリとバク宙しつつ殺陣衆を蹴散らすアクロバットを繰り出す才川。芝居もアクションも伸び伸びと表現する才川の空気が樋口と大久保の緊張感をほぐす役割も果たし、やはりこちらも数回の返しで見事にシーンが固められていった。新メンバーを交えても瞬時に阿吽のスピードでシーンが立体化していくライブ感を目撃し、見学席も熱くなっていくばかりだ。
志摩廉造:才川コージ
大久保と才川
短い休憩を挟み、最初のアクションシーン、そして続く芝居シーンを通して演じ、1時間半ほどのプレ稽古が無事終了。作品全体から見ればほんの一部分ではあるが、演出家と役者が向き合って芝居を創りあげていく過程をありのままに披露した参加メンバー。そのプロ意識に、さらに本番への期待が高まった。カンパニーはこれからこの数十倍、数百倍の作業を経て、最高の本番を目指すのだ。
囲み会見
ーー今日の感想は?
北村:秋人、コージ、そして初参加のおふたりが揃った賑やかなプレ稽古、とても楽しかったです。
宮崎:まずは西田さんに久しぶりにお会いできて嬉しかったです。銃二丁持ってのアクション、前回を経ているのでそれなりのモノをお見せしなくては……というプレッシャーを感じてやりにくかったです(笑)。
才川:自分が去年やったアクションをプレ稽古の段階でもう超えてるなって思って(笑)、新作がさらに楽しみです。
大久保:初参加ということで緊張して来たんですが、みなさんやわらかく対応くださって気持ちがほぐれましたし、「自分らしい出雲ちゃんを創ろう」って喝が入りました。
樋口:プレ稽古をやってみて課題がいろいろ見えたし、改めていろんなねむを見せられるよう頑張りたいと思いました。
西田:久しぶりに秋人と諒に会って、間違いなくふたりとも成長していることが短い時間でも確認できたし、ホントにわくわくしてます。聡美ちゃんや裕太くんもすでに役を掴んでいるので、ふたりが新しい息吹を吹き込んでくれるのも楽しみですね。あとはムードメーカーのコージがどれだけ羽ばたけるか(笑)。いい座組になるんじゃないかな。
雪男の銃で遊ぶ才川
ーーキャスト同士の印象は?
宮崎:僕は「お前ら一回やってるんだろ」って目で見られてるんだろうなと思ったので(笑)、ちゃんとやらなきゃいけないなっていうプレッシャーがありました。お客さんはきっと樋口くんや聡美ちゃん、新しいキャストを楽しみにしてると思うので、僕らが賞味期限切れと思われないように(笑)、あらたな雪男ちゃんを見せてみせていかないとですね。
北村:今日僕たちはまだアクションしかやってないんですけど、短い時間ですでに世界を創っていた3人のお芝居を見て、自分も芝居部分でも負けられないな、置いていかれないように頑張ろうって思いました。
才川:実は樋口雄太とは高校の同級生なので、お芝居で絡んでいる時間は自分にとって新鮮でした。聡美ちゃんともフランクにおしゃべりできてよかったです。楽しい現場になると思います。
樋口:諒くんとは何度かご一緒してるんですが、秋人くんは以前からオンラインゲーム仲間で……。
宮崎:やっと会えた!
樋口:そう、やっと会えたし(笑)、共演できてすごく嬉しいです。僕はもうとにかく諒くんと秋人くん、ふたりの背中についていこうと思っています。
大久保:私も! おふたりの殺陣を見て「ホントに奥村兄弟そのまんまだ!」って感動しました。頼もしいおふたりに着いていきつつ、しっかり責任持って自分のことをやっていこうって思いました。
取材中の様子
ーー本番に向けての意気込みをお願いします
大久保:『島根イルミナティ篇』は出雲ちゃんがすごく重要なお話だと思うので、彼女の人生や細かい感情の動きをコツコツと……歯磨きするように(笑)、稽古を重ねていきたい。みんなが大好き、わたしも大好きな出雲ちゃんをしっかり愛して、歴代のキャストさんの思いや責任もしっかり受け継いでいきます。
樋口:新キャストだからといって甘えず、西田さんにもしっかりついていけるように頑張りたいですし、諒くんと秋人くんに食い込んでいきたいなと思ってます。僕はもともと原作が好きで、宝ねむは「このキャラ不思議だな〜」と思っていたら、まさか自分が演じることになるとは! これからどんどん稽古を積んでいって、原作ののねむファンの方々をがっかりさせないよう、自分なりの宝ねむを創っていきたいです。
才川:僕は「練習は歯磨きと一緒だ」って思ってるんですけど、今回、今まで見せてなかった廉造のバックボーンとか新たな一面とかも出て来るので、役づくりもそれくらい日常のモノとして役を身体に入れていきたいと考えていますし、しっかりと磨いていきたいですね。みなさんと一緒に最高のモノをつくりたい。『島根イルミナティ篇』は僕も好きなエピソードなので、観にきてもらった方々に「よかった〜」って思っていただけたら、それだけでうれしいです。
宮崎:西田さんの用意するハードルは高いけれど、一発目からそれを出せるように稽古場で磨き合い、文句のつけどころのない奥村雪男を演じたいです。正直雪男に関してはけっこう自信あるんで、原作ファンの方にも舞台ファンの方にもすべてのお客様に認めてもらいたいし、そうなれる奥村雪男を創ります! ぜひ劇場にいらしてください。
北村:僕の大好きな出雲ちゃんが活躍する『島根イルミナティ篇』、みなさん楽しみにしていてください。燐のキャラクターを深めるのはもちろん、今回はサポート役的な部分も大きいので、いいお芝居に繋がる現場の空気づくりも意識したいと思っています。みなさんにはこの作品を観に来たことは絶対後悔させないし……逆に観に来れなかったことを後悔させるくらいのものを、このカンパニーで創り上げたい。待っててください!
西田:『京都紅蓮篇』では諒と秋人と製作陣と、「ほかにはないものを創ろう」とやってきて、詰めるだけ詰め込みました。だからこそ前回と同じことはやりません。『島根イルミナティ篇』は自分が原作を読んで一番ワクワクし、涙したエピソード。舞台化が実現して嬉しいですね。「前回以上のなにかをやるんだ」ってことで僕らはもうすでに動き出していますし、諒と秋人とお芝居を創るってことはもうかけがえのない時間です。また、今回こうして新たな仲間も加わってくれて……やっぱりね、「青エクだけは特別だな」って思われる舞台にしたいんです。最終目標は観客にとってホントに忘れられないような時間を創ること。あえて風呂敷を広げると、史上最高の舞台にしたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
舞台「青の祓魔師」
取材・文=横澤由香
【東京公演】
日時:2017年10月20日(金)~10月29日(日)
会場:Zeppブルーシアター六本木
【神戸公演】
日時:2017年11月2日(木)~11月5日(日)
会場:新神戸オリエンタル劇場
原作・脚本協力:加藤和恵(集英社「ジャンプスクエア」連載)
脚本・演出:西田大輔
奥村 燐:北村諒、奥村雪男:宮崎秋人
勝呂竜士:山本一慶、志摩廉造:才川コージ、三輪子猫丸:土井裕斗
杜山しえみ:松岡里英、宝 ねむ:樋口裕太、朴 朔子:小槙まこ
神木出雲:大久保聡美
ルシフェル:横田龍儀、親衛隊上官:稲村 梓、外道院ミハエル:原勇弥
メフィスト・フェレス:和泉宗兵、神木玉雲:田中良子、ほか
9月13日(水)12:00~ 9月14日(木)18:00 先着先行
公式Webサイト:http://www.ao-ex.com/stage/