「縄文アートプロジェクト2017」~“5000年前の首都”長野県茅野市で縄文がテーマのフェス開催、茅野市民館/茅野市美術館がアートの拠点に

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2017.9.9


 長野県茅野市では、“生きるはもっと素直でいい”をキャッチフレーズに「八ヶ岳JOMONライフフェスティバル」を9月9日よりスタートした(10月22日まで)。同フェスは、3年に1度のトリエンナーレとして開催される予定で、今回は“第0回”とナンバーリングされている。茅野市は長野県の中部やや東より、 富士山に次ぐ広大な裾野を誇る八ヶ岳の西側に広がる。新宿から特急あずさに乗ると約2時間強で着ける、自然豊かな高原リゾートだ。

縄文文化を築いた人々の心の有り様を未来に引き継ぐために

 かつて……かつてといっても今から5000年前の話だが、この地域は日本の首都とも言えるほどの人口密集地だったと言われている。八ヶ岳西南麓を中心とする縄文中期の遺跡数は3000を超え、東日本で花開いた縄文文化の中でももっとも繁栄を極めたそう。国宝にも認定された「縄文のビーナス」「仮面の女神」と名付けられた土偶も、この地から発掘されたものだ。

 自然にめぐまれた茅野市はこれまでも縄文をまちづくりの柱の一つとしてきたが、縄文を日本全国へ、また近い将来、世界に本格アピールする布石として「八ヶ岳JOMONライフフェスティバル」が位置付けられる。

 そのコンセプトは、縄文の人びとの暮らしからヒントを得たものだ。例えば、燃え上がる炎を象ったかのような形状の「火焔型土器」にはなぜ大胆で華やかな装飾がなされたのか。器としてはむしろ邪魔になりそうな装飾は、当時の人びとの心の豊かさ、生きることこそがクリエイティブであることの象徴かもしれない。便利、効率が優先される現代において、そうした流れに抗うように立ち止まり、どこかに置き忘れた価値観を改めて取り戻そうとする若い人々も増えているこのごろ。その一つの答えとして、これからの暮らしを考える原点は縄文時代にあるとし、縄文文化を築いた人々の心の有り様を見直し、その想いを未来に引き継ぎ、世界と手をつなごうという趣旨が「八ヶ岳JOMONライフフェスティバル」には込められている。

 「八ヶ岳JOMONライフフェスティバル」では、アーティスト・後藤映則による記念オブジェのお披露目を兼ねたオープニングセレモニー、原田マハ講演会「生きるぼくら 茅野に暮らすしあわせ」(9/9、終了)を皮切りに、考古学研究に挑む大島直行による縄文を識る・特別講演会「縄文人の心 生命と再生をめぐる精神性と世界観」(9/18)などの講座やワークショップ、尖石縄文の里 夜の火祭り(10/7)、尖石縄文まつり(10/8)などのイベント、ライター・譽田亜紀子と茅野市尖石縄文考古館・守矢昌文館長による土偶の日記念対談「“土偶のリアル”を語る」(10/9)、縄文人と共に生きてきた物や食材を現代風によみがえらせた「縄文支え合い広場」、縄文関連商品を集めた「縄文市場」など多種多様さまざまな企画が実施される。

縄文を題材に、市民力による表現・創造を発信する縄文アートプロジェクト

 フェスティバルにおいて芸術部分の主軸を担っているのが、ホールと美術館を併設する茅野市民館/茅野市美術館だ。茅野市民館は開館10周年を迎えた2015年に、縄文、八ヶ岳をテーマに、市民力による表現・創造を発信する「縄文アートプロジェクト」をいち早く仕掛けた。市民発信型の創作劇、公募アーティストに加えて市内全小中学校から生徒・児童が手がけた作品の展示、八ヶ岳山麓の農産物・クラフトや縄文にちなんだ食・デザイングッズを紹介するマルシェなどなど。

 茅野市民館/茅野市美術館のユニークさは、館の自主事業の何割かを、市民のアイデアから汲み上げて、ブラッシュアップして実現させているところだ。アイデアと言っても、それは決して、有名アーティストを呼んでほしいという類のものではない。開館からずっと市民が参加するワークショップを重視し、また市民が単なるボランティアではなく館の運営に積極的にかかわり、ワークショップなどを企画・実施していくという取り組みを重ね、時間をかけて熟成させてきた結果生まれた、茅野市など地域に暮らす人々にとって実感のある芸術創造活動なのだ。これは全国を見回しても珍しい。そして第2弾となる「縄文アートプロジェクト2017」でも、さまざまな催しが行われる。

JOMONファッション「縄文の衣」~喜びを伝える風と時間の祝祭~
縄文から現在、未来をつなぐ、茅野の風土と人々の想い。衣装デザイナー・時広真吾と市民が「衣」をテーマに表現するパフォーマンス。
▽日時|9月16日(土)16:30開演
▽会場|茅野市立永明小学校体育館

竪穴式茶室「低過庵(ひくすぎあん)」
茅野市出身で、日本を代表する建築史家、建築家である藤森照信の新作茶室、竪穴式茶室「低過庵」が誕生。同じく藤森による茶室「高過庵」のある敷地(茅野市宮川高部)に、「低過庵」がワークショップ形式で制作された。藤森が参加する見学イベントは受付終了しているが、イベント日以外に茶室を外から眺めることは可能。

低過庵制作ワークショップ

低過庵制作ワークショップ

「低過庵オープン&フジモリ建築見学会」 
▽日時|9月17日(日)※受付終了
▽会場|茅野市宮川高部

「フジモリ建築見学会」
▽日時|10月7日(土)・10月21日(土)※受付終了
▽会場|茅野市宮川高部

「トークイベント」
▽日時|10月20日(金)18:30開始
▽会場|茅野市民館マルチホール
▽出演|藤森照信ほか

藤森照信《高過庵》(撮影:増田彰久)2004年竣工

藤森照信《高過庵》(撮影:増田彰久)2004年竣工

収蔵作品展「人・物・自然のあいだに」
藤森照信の収蔵作品などを展示。「人」「物」「自然」に関わる収蔵作品を「ライフ」(生命、人生、生活)をキーワードに見つめる。
▽日時|9月22日(金)~11月5日(日)
▽会場|茅野市美術館常設展示室

「道しるべ土器ランプ」
縄文ファンの手による“土器ランプ”が大集合。道案内の土器ランプが皆さんを茅野駅から街中へ誘う。
▽日時|9月9日(土)~10月22日(日)
▽会場|茅野市内各所

土器ランプ

土器ランプ

「ギャラリー・バードハウス」
小さな巣箱の中には無限のアートの世界が広がっているかも。並木のギャラリーストリートでお気に入りのアートを見つけよう!
▽日時|10月1日(日)~10月22日(日)
▽会場|茅野市民館中庭~市役所通り

「まちの展vol.4」
茅野駅周辺の意外な場所がギャラリーに変身。
▽日時|10月1日(日)~10月22日(日)
▽会場|茅野駅周辺

「ギャラリー・ビオラハウス」
茅野市民館東広場に、花で覆われた小さなおうちが出現。
▽日時|10月1日(日)~10月22日(日)
▽会場|茅野市民館東広場

「こどもたちとみんなのJOMONアートワーク」
土器、オブジェ、竪穴式住居…。子供たちが想像のつばさを広げたJOMONアートの世界やいかに。
▽日時|10月1日(日)~10月22日(日)
▽会場|茅野市民館中庭

JOMONフードスケープ「縄文のうつわ展」
縄文の湧き上がる想像力に想いを馳せた「うつわ」の公募展。美術館での展示とともに、入選作品を“縄文のうつわ”として「現代的縄文食風景」を作り上げる。
▽日時|9月22日(金)~10月2日(月)
▽会場|茅野市美術館常設展示室

JOMONフードスケープ「現代的縄文食風景」
地域の古民家を会場に、命の源《食》をテーマにした「フードスケープ(食風景)」。めぐる四季の中で豊穣を祝い、自然の力に想いを馳せ、命をつなげていく特別な縄文食を提供。
▽日時|10月8日(日)・10月9日(月・祝)・10月15日(日)・10月22日(日)
▽会場|茅野市玉川荒神の古民家
※申込制

「平原綾香ライブwith平原まこと」
八ヶ岳JOMONライフフェスティバルを締めくくる、実力派シンガー・平原綾香と、父で日本を代表するサックス奏者・平原まことのスペシャルライブ。2015年の縄文アートプロジェクトの際に公募した“縄文のうた”から誕生した「つないで」「まあるい星の まあるいムラで」を、市民合唱団と平原綾香が一緒に歌う企画もある。
▽日時|10月22日(日)17:30開演
▽会場|茅野市民館マルチホール
▽料金|全席指定・税込6,800円 ※チケット完売

 茅野市を中心とした諏訪地方に暮らす人々は、小さいころから何気に畑から土器の破片が出てきたり、当時の刃物として使われていた黒曜石を探したり、社会科見学で縦穴住居を作ったり、図工で土器の野焼きをしたりと、日常から縄文に親しんでいる。もちろんそれを意識なんかしていないけど。そんな話をしたら驚かれたりもするが、これからの時代を生きるヒントを探しに遊びにきてはいかがだろうか。

文=いまいこういち

イベント情報
縄文アートプロジェクト2017

■日程:2017年9月9日(土)~10月22日(日)
会場:茅野市民館、茅野市美術館、茅野市駅周辺ほか
問合せ:茅野市民館/茅野市美術館 Tel.0266-82-8222
■公式サイト:
縄文アートプロジェクト2017 http://www.chinoshiminkan.jp/jomon/
八ヶ岳縄文ライフフェスティバル http://www.city.chino.lg.jp/www/jomon/index.html
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