日本一極端なロック・フェス、今年は何をなしえたのか!? 『OTODAMA’17~音泉魂~』総論・前編
POLYSICS
『OTODAMA’17~音泉魂~』2017.9.2(SAT).3(SUN) 泉大津フェニックス
2日間で、何度笑っただろう。何度あきれただろう。そして、何度泣いただろう。
というのが、初開催から13回目、僕にとっては2回目の『OTODAMA~音泉魂~』だった。
昨年初めて足を運んだことと、ライター/ラジオ・パーソナリティーの鈴木淳史をはじめとする関西のみなさんがいろいろ教えてくれたことで、どういうフェスであるのか、おおよそのところはこの1年でだいたい把握したつもりだったし、行き帰りのシャトルバス内で流れる主催清水音泉田口氏のカラオケを楽しみにする程度にはその独特すぎるノリにも慣れたつもりだったし、にもかかわらず2日目の朝に乗ったシャトルバスが無音だった日にゃあ「なんで無音なの?」「なんのために俺が泉大津駅からタクシー使わずにシャトルバスに乗ってると思ってんの?」と運転手にクレームを入れようか悩む程度には、そのノリに同化できるようになっているつもりだったので(入れませんでしたが)、今年は新たに何かに驚いたり、興奮したりすることはそんなにないだろうなあ、と思っていたのだが。
そんなことはありませんでした。ありました、いっぱい。
では、どう「ありました、いっぱい」なのかについて、前編・後編に分けて、書いていきます。
『OTODAMA’17~音泉魂~』
まず、冒頭に挙げた「何度笑っただろう」「何度あきれただろう」「何度泣いただろう」を説明していきます。
最初に「何度笑っただろう」から。もちろん、先に書いた「シャトルバス音泉田口カラオケ地獄」のような、公式サイトや事前の案内や会場までの交通手段や会場の中などに大量に盛り込まれた、ボケの数々に対してだ。
一昨年はプロレス、昨年はレキシだったフェス全体のコンセプト、今年はスーパーマーケット。って、なぜフェスが毎年そのようなコンセプトを導入せねばならないのかということ自体、そもそも意味がわからないわけだが、とにかく、であるがゆえにフェスの公式サイトのデザインや、出演アーティストを載せたポスターなどはスーパーの特売チラシ仕様。入場ゲートの看板やステージ幕も、スーパーのそれを模したもの(「清水スーパー お客様大歓迎 プロの音質とプロの規模」とか書いてある)。ステージスタッフと運営スタッフは緑のエプロン着用。4つあるステージのうちのメインの2つは「KOHYOの湯」「ジャパンの湯」と、関西ローカルのスーパーチェーンの名が冠されている。
で、はい、ここです。そもそも清水音泉自体、会社のコンセプトを風呂にしているわけで、そこにスーパーをのっけちゃったもんだから「KOHYOの湯」「ジャパンの湯」というよくわからないことになっているわけですね。「KOHYOステージ」「ジャパンステージ」でいいじゃねえか。コンセプトの二段重ねが招いた混乱。フェスの責任者も「清水番台店長」という謎な肩書になっていたし、そのおかげで。
さらにだ。フェスの公式サイトのトップページ、途中からEDMのイベント風の、ゴージャスでラグジュアリーなデザインに変わりましたよね。で、それが終わって「ENTER」を押すと、特売チラシになるという。
なぜそこでEDMを足す。盛りすぎ。牛丼にカレーをかけるのは許すとしても、そこにウナギまでのっけたらもう何がなんだかわからないでしょ? いいじゃんそれぞれで食えば!
と、それでなくてもすき家状態な上に、1日目はPOLYSICSをトリにして「「夏フェス OR DIE!!!」、2日目は四星球をトリにして「夏フェスというボケ」というコンセプトまで足す始末。
ポリの方は会場内のスタッフがポリのデザインのTシャツを着ている程度だったからまだよかったが、問題は2日目だ。「夏フェスというボケ」、言うまでもなく四星球の『メジャーデビューというボケ』からいただいたものなわけだが、ならば『音泉魂』という実際の夏フェスを使って、その「夏フェスというボケ」を実行しなければ!と思ってしまったようなのだ、どうやら。
はい、ここから「何度あきれただろう」のゾーンに入ります。清水音泉自体、そもそも「ここまでセーフ、ここからアウト」というラインに関して冷静な大人の判断があんまりできない、「おもしろい」を優先するがあまりちょいちょいそこを踏み越えてしまう困った体質の会社なわけだが、その「夏フェスというボケ実行」によって、過去もっともその困った体質が露呈したのが今年だった、と言えるのではないか。
まずグッズ。パロディで作ってました。某サッカチームや、某昔のプロ野球チームのユニフォームのパロディはまだいいが、某日本でいちばんでっかいフェスのグッズの「デザインのパロディ」って、どうなのよ。しかも何種類も。いじりづらくて困ります、私、以前にその「いちばんでっかいフェス」の会社で働いていたので。
パロディであることを知らずに、普通に買って普通に着ているお客さん、いっぱいいたぞ。その場合「パロディ」というより「パクリ」になっちゃうんじゃないか? 受け取る側の解釈によっては。
さらにだ。今年の『音泉魂』、会場内に「FES」という文字のモニュメントが建っていた。このように文字のモニュメントを会場内に作って、みなさんそこで記念撮影してくださいね、っていうのは、その「いちばんでっかいフェス」が始めたことなのだが、いくらスーパーがコンセプトとはいえ、野菜とかが入ってたダンボールで「FES」ってぶっ建てたら、それ、本家への皮肉として機能しちゃうじゃないか。
いや、清水音泉、そこまで好戦的な人たちじゃないのはわかっている。単におもしろいからそうしたんだろうけど、これ、「おもしろい」を追求した結果、本人たちにはそんなつもりないのに「ラウド・ミュージックをバカにしてる」とか「メロコアをネタにしてる」と一部の音楽ファンの怒りを買ってしまった岡崎体育やヤバイTシャツ屋さんと、まるっきり同じ体質じゃないか。
という「セーフ/アウト」のラインの踏み越えっぷりに、大いにあきれたわけなのでした。
そういえば前述の「EDMなトップページ」には、「9/2・3 OSAKA/TOKYO」というクレジットがドーンと入っていた。もちろん嘘です。「TOKYO」なんかありません。バンドとかならまだしも、興行を打っているイベンターの行為としては、どうでしょう。アウトでしょう。おまけになんのフォローも訂正もしないまま、フェスが終わったらスッと消してたし。
というわけで、前編はここまでです。続きは後編。
後編はこちら→https://spice.eplus.jp/articles/146478
音泉魂写真館 9月2日編
〜宴会場テント〜
『OTODAMA’17~音泉魂~』
〜スーパー露天風呂〜
セックスマシーン
チャラン・ポ・ランタン
SAKANAMON
Yogee New Waves
レイザーラモンRG
ピエール中野(凛として時雨)
〜KOHYOの湯〜
岡崎体育
OKAMOTO'S
ORANGE RANGE
GRAPEVINE
ユニコーン
〜ジャパンの湯〜
アルカラ
PAN
筋肉少女帯
フレデリック