余韻のスルメ感がたまらない! 笑いと戦慄のエンターテインメント舞台『人間風車』ついに開幕
『人間風車』
9月28日東京・劇術劇場プレイハウスにて作・後藤ひろひと、演出・河原雅彦のタッグによる笑いと戦慄のエンターテインメント『人間風車』の幕が開いた。その初日直前の囲み会見&ゲネプロの模様を(ネタバレ厳禁で!)レポートする。
会見には成河、ミムラ、加藤諒、矢崎広、松田凌、良知真次の6名が登壇。それぞれに本番を控えた心境を語ってくれた。
成河
成河:後藤ひろひとさん含め、みんなで話し合い、粘り強く稽古してきました。今生きてる僕達にとってすべてがリアルに見え、すべてに嘘がないことが、今生きてるお客さんにとっても嘘がないということ。稽古にかけてきた時間と仲間を信じ、本番でもっともっと成長したいと思います。
ミムラ
ミムラ:私は普段テレビを主戦場にしていますが、舞台は同じことを何回もできる楽しさがあります。舞台で複数の役をやるのも初めて。いつかやってみたかったので、すごく楽しいです。稽古を終え、体脂肪が5パーセント落ち、5キロ体重が増えました(笑)。身体を使っています。
加藤諒
加藤:今までは“受け”の芝居が多かったんですが、今回は“攻めて攻めて攻めていくぞ〜”という感じ(笑)。劇中では全部で6役くらいの役をやるのでどう演じ分けるか……そういったところにもやりがいがあります。
矢崎広
矢崎:なるほど、加藤諒くんの稽古着がタイガー柄の超短パンだったのも“攻め”の姿勢だったんですね(笑)。河原さんは僕たち若手に対してもいろいろと細かくご指導してくださいました。素敵な先輩に方にも囲まれ、若手にとってこんなに幸せな現場はないなという毎日でした。
松田凌
松田:河原さんと成河さんやミムラさんが芝居について話しあっているのを見て羨ましくもあり、悔しくもあり……。“いつか僕もああして話ができるようになりたい”というに駆り立てられる、刺激的な現場でした。
良知真次
良知:戯曲的にも役柄的にも自分にとって初挑戦の部分が多く、稽古場では成河さんにいろいろ支えていただきましたが、役柄的には僕が支えていく側。ステージ上で今までのお返しができるように頑張っていきたいです。
お互いの発言に突っ込み合ったり、「いいこと言う!」と感心したり。終始笑顔の絶えないアットホームな会見の空気は、このカンパニーが充実した稽古を積んでここまでたどりついたからこそだろう。「僕たちみんな普段着でどんなストイックな会話劇をやるんだと思われるでしょうが、違います(笑)。リアルな世界から突然、飛び出す絵本のような童話の世界に入ってしまえばもうみんながいろんな国のいろんな服装で出てきますし、笑い転げて楽しめるシーンもたくさんあります。演劇の醍醐味が詰まっている作品ですね」という成河の言葉通り、舞台の魅力を存分に味わえる最新版『人間風車』。その盛りだくさん感に期待が高まった。
『人間風車』
ゲネプロレポート
童話作家の平川(成河)は一冊の本も出版してはいないけれど、公園に集まった近所の子どもたちが自分のお話を聞いて盛り上がってくれればそれで充分楽しかった。友人の童話作家・国尾(良知真次)が「童話は買ってくれる親に向けて書くんだよ」とアドバイスしてもどこ吹く風。いびつでヘンテコで魅力的なお話を(プロレス愛も微妙にまぶしつつ)コツコツと書き溜める毎日は、そう悪いものでもないのだ。そんなある日、国尾の付き添い兼見学でやはり友人である小杉(矢崎広)が勤めるTV局を訪れた平川は、タレントのアキラ(ミムラ)と知り合う。やがて、互いに足りないモノを補い合うかのようにやさしく自然に寄り添っていくふたりの心。しかしそんな幸福な時間をあっけなく切り裂く「事件」が起きた。きっかけは、子どもたちに混じって公園にやってくる奇妙な青年・サム(加藤諒)。登場人物の言動を真似るほど平川の童話に魅了されているサムの秘密とは一体……。
『人間風車』舞台写真
物語は公園、お城のバルコニー、平川の部屋、テレビ局などなど、回転するごとに自在に場を変化させていくセットを駆使し、童話の世界と日常とが交互に描かれていく。シニカルな笑いとなかなかの教訓にぐーっと心を持っていかれたと思ったら、うっすら不穏な日常の描写で現実に引き戻され──という繰り返しの果て、気づけば逃れようのない残酷な事態に吸い込まれていくノンストップの展開! これはまさに悪夢、まさに“ファンタスティックホラー”な肌触りだ。
『人間風車』舞台写真
『人間風車』舞台写真
『人間風車』舞台写真
平川を演じる成河は、普段の不器用で冴えない感じも似合うし、物語を語るときの躍動感も素晴らしく、童話作家の内に燃える感情の豊かさを丸ごと手渡してくれる。あっけらかんとした明るさに少女性を添えたミムラ演じるアキラもとても魅力的。平川のミューズとしての輝きと童話の登場人物との演じ分けも印象に残った。演出の河原雅彦に「生き物としてお前の代わりはいないんだぞ」と称されている加藤諒は、“大人子ども”なサムを無垢と不気味をない交ぜにした存在感で体現。言い様のない恐怖を生み出す原動力のカタマリとして個性を光らせる。
『人間風車』舞台写真
『人間風車』舞台写真
一方、あくまで現実を突きつけて来る存在として利いていたのは、狡猾さの向こうにうっすら見える“なにか”を湛えた、矢崎広演じるTVディレクターの小杉。童話パートでの弾けっぷりも見逃せない。良知演じる国尾も、現実に折り合いをつけて生きている青年。彼の悪意のない悪意も厄介だ。
『人間風車』舞台写真
『人間風車』舞台写真
平川を「作家」と呼び慕う子どもたちのリーダー・則明を演じる松田凌の真っすぐさもいいし、平川をとりまくすべての登場人物にたっぷりと味がある。だからこそ、彼らがよってたかって形づくる“世間”は世知辛く滑稽で、それがなんだか物哀しいのだ。
『人間風車』舞台写真
一度世界に向けて物語ってしまったら、もう取り返しはつかない。が、それでもいい。世界に受け入れられても拒絶されても書かずにはいられない、想像せずにはいられないのだから──恐怖の連鎖が過ぎ去り、客席に明かりがつき、今目撃したラストシーンを反芻せずにはいられなくなる瞬間、売れない童話作家・平川の“作家の業”、イマジネーションの凄まじさがじわじわと思考を浸食し始める。このタイムラグを味わってこそ『人間風車』。大いなる余韻のスルメ感がたまらない、濃厚な幻のごとき一作。
取材・文=横澤由香 撮影=山越 隼
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「人間風車」
■作:後藤ひろひと
■演出:河原雅彦
■出演:
成河、ミムラ、加藤 諒、矢崎 広、松田 凌、
今野浩喜、菊池明明、川村紗也、山本圭祐、
小松利昌、佐藤真弓、堀部圭亮、良知真次
■公演日程:2017年9月28日(木)~10月9日(月・祝)
■会場:東京芸術劇場プレイハウス
■入場料金(全席指定・税込) =S席8,900円、A席7,800円
※未就学児のご入場はお断りいたします。※営利目的の転売禁止。
※車イスでご来場予定のお客様は、ご購入席番号を公演前日までにパルコステージ宛にご連絡ください。
■前売開始:2017年7月15日(土)
■問い合わせ:
パルコステージ 03-3477-5858(月~土11:00~19:00/日・祝11:00~15:00)
キューブ 03—5485-2252(平日12:00〜18:00)
■公演内イベント:
9月30日(土)18:00の回終演後 矢崎広×松田凌×良知真次
10月5日(木)14:00の回終演後 成河×ミムラ×加藤諒
※該当回の公演を持ったお客様が対象です。ご観劇時と同じ座席でご覧ください。
◆10月4日(水)公演の客席内に収録用のカメラが入ります。予めご了承ください。
<各地公演>
お問合せ:高知新聞企業 事業企画部 TEL 088-825-4328
お問合せ:ピクニックセンター TEL 050-3539-8330
お問合せ:キョードーインフォメーション TEL 0570-200-888
お問合せ:サンライズプロモーション北陸 TEL 025-246-3939
お問合せ:サンライズプロモーション北陸 TEL 025-246-3939
お問合せ:仙台放送 事業部 TEL 022-268-2174
パルコステージ 03-3477-5858(月~土11:00~19:00/日・祝11:00~15:00)
http://www.parco-play.com/
キューブ 03—5485-2252(平日12:00〜18:00)
http://www.cubeinc.co.jp/
■公式サイト:http://www.parco-play.com/web/play/ningenfusha/
美術=石原 敬
音楽=和田俊輔
照明=大島祐夫
音響=大木裕介
衣裳=高木阿友子
ヘアメイク=河村陽子
殺陣指導=前田 悟
演出助手=元吉庸泰
舞台監督= 榎 太郎 広瀬泰久