中川翔子「説得力のある仕事をしていきたい」~Japanese Musical『戯伝写楽 2018』でヒロイン役に挑戦
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中川翔子 (撮影: 岩間辰徳)
たった約10ヶ月の活動期間の間に、140点以上の作品を残し忽然と消えた浮世絵師・東洲斎写楽。 2010年「写楽は女だった…?!」という大胆な着想で、写楽の謎に迫りながら、等身大の人間模様を描いたミュージカルが、8年の時を経て、2018年春、再演されることになった。今回、Japanese Musical『戯伝写楽 2018』にヒロインのおせい役として出演する中川翔子に、作品への思いや、これからの目標などをインタビューした。
初演とは違う「新生おせい」で演じたい
−−宣伝写真撮影の様子を拝見させて頂きました。実際に衣装を着てみての感想は?
着物を着て長時間演技をすると思うと、ちょっとドキドキする面もあるのですが……でもご覧の通り、レースが付いていたり、髪も茶髪で巻き髪だったり、かっちりとした和装を想像していたので、びっくりしています。こんな感じでいいんだと思ったらすごく気持ちが楽になりました。多分お客さんとしても、江戸の景色や写楽についてほとんど知らない方でも、また、興味がもともとあって「もっと知りたいな」って方でも、同じスタートラインで、ポップな感じで見ていただくことができるんじゃないかなと思います。
−−初演をご覧になった時の感想はいかがでしたか?
DVDで拝見しました。写楽という存在が全くの未知で、謎。だからこそ、「謎=イマジネーションしていい」という魅力にそのままつながりますよね。何百年も残って、愛される、すごく有名な絵。その背景には、ものすごいエナジーと魂と情念とテンションが入っているんじゃないかなと想像します。とりつかれたように絵を描くシーンや、歴史には残っていないけれども力強くそして散っていった人たちの生き様やロマンが印象に残っています。
−−初演ではおせい役を大和悠河さんが演じました。
大和さんは、ミュージカル『セーラームーン』のタキシード仮面の印象がとても強かったので、びっくりしました(笑)。大和さんが演じるおせいはすごく女性らしくもあり、不思議な感じがしました。ずっと見ていたくなるような魅力を持ちながら、それでいて謎を残すおせいだったと思います。
−−タキシード仮面とのギャップは確かにあるかもしれませんね(笑)
はい。先日も『セラミュー』を見て、きゃーと言ってきたばかりなので(笑)。
−−中川さんらしい、こんなおせいにしたいなというヴィジョンがあれば教えてください。
大和さんとはシルエットも全然違うし、もう初演を継ぐということではなくて、「新生おせい」となってしまおうと思っています。
私自身も(おせいと同様に)絵を描くことが好きなんです。私が絵を描く時って、あまりにも素敵なものを描き残したいなと思う時なんです。あとはすごく大好きなことを文字だけじゃ伝えきれない時に絵にしてみようと思った時だったり。あとはコンサートの前の日に、普段はゲームをやったり、漫画読んだり、映画を見たり、好きなことがいっぱいあるんですが、それだと気が散ってしまって集中できないという時に、絵を描くとなんか集中できるんです。精神統一できる。
だから、絵を描くことが楽しい、好きっていうことはすごくわかる。しかも、何かのスイッチが入っちゃうということもなんとなく分かる気がするので、そういう自分の中にもあるピースを手繰り寄せて、おせいの新しい姿にできたらなと思います。
「みんながさとしさん、さとしさんって言うんです」
−−おせいと共通点を見出してらっしゃるんですね。
(おせいを演じるにあたり)さらに思うのは、演出家さんによって作品の色とか景色とか稽古場の雰囲気も変わるということ。たとえば、ミュージカルだと、歌い方も普段の自分の歌い方とは違う。前作の『上を下へのジレッタ』では、稽古場からずっとやってきた歌い方を東京千秋楽でビブラート一切ゼロにするという指令が下ったりして……すごい怖かったですよ、その時は。でもお客さんが舞台をご覧になるのは、時間とお金を使ってくださることだから、今日はイマイチだったというのがあっては絶対いけないと思うので、挑戦します。しかもこの『戯伝写楽 2018』は年明けから。「あ~見てよかった、縁起よかった、面白かった」となっていったらいいと思いますね。
−−いわゆる「歴史モノ」についてはどうですか?
江戸の食文化に前からちょっと興味があって。そういう本をたまに読みます。正直、歴史はすごく苦手で全然わかんないんですけど、食文化や日々の人々の何気ない暮らしには興味あります。江戸時代の人って、自炊ってあんまりしていなかったらしいですよ。あと、マグロとネギのねぎま鍋が好きだったそうですよ。面白くないですか?
今の暮らしが便利すぎて、不便な時の人は何を幸せだと思っていたのかなと思ったのが興味を持ったきっかけです。そういうところから、雰囲気などを想像していくことも、もしかしたら今回の舞台と関係なくはないのかなと思います。
−−役作りにも活かせそうですね。
そうですね。
−−今回の演出家は河原雅彦さんです。どんなことを期待していますか?
まだ、あれこれ言うのは難しいのですが、音楽劇『魔都夜曲』は見せていただいて。すごく難しそうなテーマかと思いつつ、そんなことは全然なかったんです。複雑そうな人間関係もわかりやすく届けてくださいました。あとは、全体的に鮮やかな色彩が印象に残りましたね。今回、私の衣装も髪型もこんな感じでポップなので、その意味でも分かりやすいですよね。あと、ぜひビシバシと(笑)。今回の共演の皆さんに比べて、私は舞台経験が少ないので、ビシバシお願いしたいです。
−−主演の橋本さとしさんについてはいかがですか?
あらゆる場所で、しかもご本人がいない場所で、みんなが「さとしさん、さとしさん」と言うんです!(笑) 俳優さんとしての存在感だけでなく、お人柄なんでしょうね。お酒は飲まれないと聞いて、ますます謎が深まって! なんでみんな「さとしさん、さとしさん」と言うのか(笑)。生きながらにしてここまで語り継がれる人ってなんなんだろうと。
−−その他、共演者の方で楽しみにされている方はいらっしゃいますか?
小西遼生さんは『ブラック メリーポピンズ』でお世話になりました。お兄さんの役だったんですけど、本当にお兄さんみたい。「どうしたらいいんですかね?」と聞いたらなんでも答えてくれるんですよ。でも、今回、「共演ですね!よろしくお願いします」と言ったら、「全く絡まないから」と言われて(笑)。まぁ稽古場ではご一緒できるとは思うんですけどね。
小西さんに「江戸の知識が全くないんですけど、何から始めたらいいですか、どうしたらいいですか」と聞いたら、「あぁ江戸の資料館行った時の写真を送るね」と言って150枚ぐらい写真を送ってくれたんです。そういう手間隙をかけてくださるのもお兄さんという感じですよね。ありがたいです。今回も分からなかったら、とりあえず小西さんに聞こうと思っています(笑)。小西さんのように、共演して、優しい方が一人でもいたっていうのが救いですね。ゼロからじゃないので。
説得力のある仕事をしたい
−−脚本は中島かずきさんです。中川さんオープニング曲を担当されたアニメ『天元突破グレンラガン』のシリーズ構成をされていたのが、中島さんです。
はい。それが何よりも楽しみですね。中島かずきさんとお仕事するのが実は目標でもあったので。『グレンラガン』に出会ったから、それ以降のすべてがあると言っても過言ではないです。本当に『グレンラガン』と『空色デイズ』に出会えたから、ずっと歌い続けることができて、他のお仕事もあると思っています。そこから10年経って、この舞台と出会えるのも意味があるんじゃないかなと感じます。中島さんの作品に出演できるというのはすごく嬉しいことです。
−−近年はミュージカルなどにも挑戦されています。今、中川さんの目標としていることは?
20代の頃はずっと突っ走ってきたんです。本当に好きなことが好き!という感じで。歌やバラエティやいろんなロケや絵を描くことや……好きなことで突っ走ってきたという感じでした。もちろんいっぱい転んだりもしましたが。30代に入ってから、ミュージカルとか舞台とかドラマといったお芝居の要素が入ってきました。知らなかった世界だけど、今までやってきたことがつながっていったような気がしています。例えばライヴで歌ってきたんですが、ミュージカルでまた違う歌い方を知って、それでライブで声量が増えるきっかけになったりとか……。全てが相互作用でつながっています。一本に絞らずに毎日楽しいことに向き合えているというのは変わっていないんですけど、間口が広がりました。今も成長過程なんだろうなと思います。
−−まさにマルチタレントだなぁと思います。
いえいえ。だから「何の人なんだろう?」という謎があるんですよね。舞台を見に行った時にさとしさんが出てるなら大丈夫だと言うように、名前の文字を見ただけで安心感がある、そんな人になりたいです。多分、私が歌を歌っていることを知らない方もまだいっぱいいると思うので。「大丈夫かよ」と思われちゃうかもしれない(笑)。でも、ずっと自信を持って歌を歌っていきたいとすごく思っています。いつか、「中川翔子が出ているなら安心だね」と、ふと思っていただけるように。一つずつの種類が違っても、説得力のある仕事をしていきたいです。
しっかり大人として迎える2018年
−−今回の『戯伝写楽 2018』は2018年最初の舞台かと思います。少し早いですが、2017年の総括と2018年の展望をお聞かせください。
32歳って父が亡くなった年でもあったので、先ほど申し上げた「いつか」という、そのいつかが今年だったんじゃないかなという気がしています。切り替えというか区切りというか。そこまでに何ができるだろうかとずっと昔から思っていました。ありがたい経験を積ませてもらったり、宝物に出会ったり、だけど迷ったり悩んだりもやっぱりあって。だから来年から全く違うスタートになる気がします。気持ちは穏やかです。2018年は、しっかり大人として迎える新年になる気がします。
−−最後に、ファンの方へメッセージを。
『戯伝写楽 2018』はもう、新生写楽だと思っていただいて、「知識がなくても、大丈夫です!」とまず言いたいですね。写楽が残したと言われる浮世絵は誰もが見たことのある絵のはずです。何百年経っても誰もが知っている作品を残す……人としてそして画家として、どうしたらこんなものが残せるのだろうか、という謎があります。本当にワクワクしていただけるんじゃないかなと思います。音楽もとてもポップな感じになりそうなので、難しく考えずに、縁起の良い新年の幕開けにぜひお越しいただけたらと思います!
取材・文=五月女菜穂 撮影= 岩間辰徳
Japanese Musical『戯伝写楽 2018』
■演出:河原雅彦
■出演:
橋本さとし、中川翔子、小西遼生、
壮一帆、東山義久(Wキャスト)、栗山航(Wキャスト)、池下重大、
山崎樹範、吉野圭吾、村井國夫 他
■公演日程・劇場:
[東京公演] 2018年1月12日(金)~1月28日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
[久留米公演] 2018年2月3日(土)~4日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
[名古屋公演] 2018年2月7日(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
[兵庫公演] 2018年2月10日(土)~12日(月・休) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■企画・製作:キューブ
■問い合わせ:キューブ 03-5485-2252(平日12時~18時)
■公式サイト:https://sharaku2018.amebaownd.com/