少女VS人形!おとぎ話のような最恐の攻防戦 『アナベル 死霊人形の誕生』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第三十七回

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2017.10.16
 (c) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
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『ソウ』シリーズのジェームズ・ワン監督が生み出したホラー映画『死霊館』(13)は、実在の心霊研究家・ウォーレン夫妻を主人公に、彼らが実際に遭遇した心霊体験を映像化した作品だ。ウォーレン夫妻が「あまりにも邪悪」として封印してきた事件を基にしたことで話題を呼んだ作品だが、そこには実在する“邪悪なもの”も映像として収められていた。それが“アナベル人形”だ。2014年には、『死霊館』の前日譚であり、アナベル人形にまつわる事件を描いた『アナベル 死霊館の人形』が製作されている。そして、アナベル人形がどうして生まれてしまったのか、そのオリジン(起源)に迫る映画『アナベル 死霊人形の誕生』が公開中だ。

舞台は1957年。孤児院が閉鎖されて行き場をなくした6人の少女たちとシスターが、人形師夫妻が暮らす館にやって来る。12年前に幼い娘を亡くして悲嘆に暮れていた夫妻は、少女たちを喜んで迎え入れた。少女たちも新生活に胸を膨らませるが、館には不穏な空気が漂っていた。6人の一人、足が不自由な少女・ジャニスは、ある夜鍵がかかっているはずのドアが開いていることに気づく。部屋の中には、人形師がつくった“アナベル”が座っていた。
アナベルの封印を解いてしまったことで、少女たちはさらなる恐怖に見舞われることになってゆく。
 

新監督を迎えてパワーアップする恐怖

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『死霊館』から関連作をすべて観てきた私が思うに、本作はシリーズ最恐の作品に仕上がっていると思う。その理由の1つに、デイビッド・F・サンドバーグ監督の力がある、と私は感じている。サンドバーグ監督は、昨年日本でも公開されたホラー映画『ライト/オフ』で、電気が消えた後の闇に潜む異形の者を描き出し、観る者を恐怖のどん底に叩き落した。その『ライト/オフ』でも見せてくれた照明の使い方の上手さが、本作でもしっかりとスパイスの役目を果たしている。

たとえば、就寝時間に少女たちがシーツをかぶり、おばけの噂話に花を咲かせるシーンでは、持っていた懐中電灯の明かりが突然消え、シーツの向こう側に人影が浮かび上がる。まさに監督お得意の照明を使ったこの演出は、“人形対少女たち”という構図の本作とマッチし、観客を少女たちの視点から怖がらせてくるのだ。

そして、サンドバーグ監督は“音”においてもこだわりを見せている。本作では、爆音上映かと思う迫力の効果音が恐怖を煽ってくるのである。ホラー耐性が高いはずの私でも、思わずビクッとさせられるほどだ。さらに、日本でも有名なアメリカのポピュラーソング「You are My Sunshine」が本編中何度となく流れるのだが、明るく軽快なそのメロディーが、逆におぞましい雰囲気に拍車をかけてくる。

自由の利かない“受け身”ゆえの恐怖

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『死霊館』シリーズは、主人公が心霊研究家の夫妻で、霊に対抗する術を持っているため、観ている側もまだ安心できるのだが、今回の主人公は幼い少女たちだ。中でもアナベルに狙いを定められたジャニスは、病気で足の自由が利かないというハンディキャップを持っている。

一方のアナベル人形も、走って追いかけてくるようなことは一切ない。それなのに、ただそこにいるだけでも感じる、ただものではない恐ろしさを醸し出しているのである。これは、アナベルの姿が滑稽に見えないよう、易々と動かすのを避けた結果なのだという。

アナベルは、元々は人形師が娘のためにつくった人形。だが人形というのは、ヒトガタ、つまり人の形をしているのに中身のない空っぽな存在であるため、実体を持たぬ霊が乗り移りやすいいい器になる、と耳にしたことがある。アナベル人形に入りこんでしまった霊は、動かず、しかし少女たちを追い詰める。 ジャニスが階段昇降機を使って必死に逃げようとするシーンでは、アナベルはじわじわと彼女との距離を詰め痛めつけてくるのだ。ジャニスー!昇降機を降りて逃げなよ!と思うも、彼女は足の自由が利かない。そのモヤモヤ感も含め、自分を投影する登場人物の動きが制限されることで、観る側の緊張感をより高める手腕はさすがと言わざるを得ない。


そして本作のスゴイところは、きちんと前作『アナベル 死霊館の人形』からの伏線を回収したところ。特に、昨年私が『死霊館 エンフィールド事件』のコラムで「凶悪な顔」と称した、“あいつ”を登場させたところだ。

本作から観て興味を持った方には、前作『アナベル 死霊館の人形』も『死霊館』シリーズもオススメしておく。どうやら“あいつ”のスピンオフの製作も予定されているそうなので、まだまだ広がるアナベルワールドに期待してほしい。

ちなみにコネチカット州にあるオカルト博物館には、モデルとなった本物のアナベル人形がいまだ封印されているという。私が試写室にお邪魔した際、“撮影で使われたほうの”アナベル人形とツーショットを撮ったのだが、翌日、何も知らないマネージャーが鼻歌で「You are My Sunshine」を歌い始めた時は心底ゾッとしたのは言うまでもない。このまま何も起こらないことを祈るばかりだ……。

『アナベル 死霊人形の誕生』は公開中。

作品情報
映画『アナベル 死霊人形の誕生』​
 
(c) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

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製作:ジェームズ・ワン(『死霊館』『ソウ』『ワイルド・スピード SKY MISSION』)/ピーター・サフラン(『死霊館』)
監督:デイビッド・F・サンドバーグ(『ライト/オフ』)
脚本:ゲイリー・ドーベルマン(『アナベル 死霊館の人形』)
出演:ステファニー・シグマン タリタ・ベイトマン ルル・ウィルソン
アンソニー・ラパリア ミランダ・オットー
配給:ワーナー・ブラザース映画
映倫:PG12
公式サイト:http://annabelle-creation.jp
(c) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
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