古川雄大がミュージカル「黒執事」を振り返る――副音声解説付き『ミュージカル「黒執事」～NOAH'S ARK CIRCUS～』の聞きどころとは

11月23日（木・祝）21：00よりWOWOWライブにて、『ミュージカル「黒執事」～NOAH'S ARK CIRCUS～』が放送される。『ミュージカル「黒執事」』は、全世界でのコミック累計発行部数2,400万部を誇る枢やなの漫画『黒執事』を原作としたミュージカルシリーズだ。初演以降“生執事”の愛称で親しまれ、今や2.5次元を代表する作品の一つとなっている。23日に放送されるのは原作の「ノアの方舟サーカス編」をミュージカル化した2016年の上演作品だ。悪魔で執事のセバスチャン・ミカエリス役を演じた古川雄大、スネーク役を演じた玉城裕規、ダガー役の三津谷亮、ウィリアム・T・スピアーズ役の輝馬の４名は、今回の放送における副音声解説を担当。副音声収録直後の古川がインタビューに応じ、作品の見どころや副音声解説の聴きどころを語った。

 

初めて前から観る「サーカス編」

――今回の放送は、原作のファンだけれど『ミュージカル「黒執事」』を観たことがない方や、古川さんのことをご存じだけれど2.5次元舞台は未体験という方にも、ご覧いただくきっかけになりますね。

２次元である漫画の世界観や魅力を生身の人間で再現しようというのが２.５次元ですよね。原作の漫画『黒執事』を読んだ時、シリアスとコミカルのバランスやテンポ感がおもしろいと感じました。『ミュージカル「黒執事」』は原作の世界観だけでなく、そのバランスやテンポ感まで忠実に再現しています。本作は2.5次元舞台を代表する作品のひとつだと思っています。

――座談会形式の副音声解説はいかがでしたか？

深い話からウラ話まで３時間くらい、喋りっぱなしで話は尽きませんでした。でも作品が第2幕に入ってからは、4人ともが作品に引き込まれ黙ってしまう瞬間が何度もありました。今回の放送をご覧くださる方も、同じように見入ってしまう瞬間があると思います。

――改めて『ミュージカル「黒執事」～NOAH'S ARK CIRCUS～』をご覧になった感想をお聞かせください。

4人ともDVDは頂いていましたが、全部を通して観るのは、全員今日が初めてでした。この作品を客席側から観るのもこれが初めてだったんです。登場人物や世界観まで『ミュージカル「黒執事」』の魅力をあらためて感じることができました。まずストーリーが面白いですよね。玉ちゃん（玉城裕規）も言っていたのですが、“感情が揺さぶられる”物語。特に第2幕からはサーカス団を舞台に、人間の愚かさを浮き彫りにして「人間とは？」を問いかけるように展開していきます。報われない悲しいお話ですが、報われないからこそ心に残るものや感じていただけることがあると思います。

――印象的なシーンはありましたか？

サーカス団の登場シーンですね。彼らが登場するまでと登場してからでは音楽の曲調も変わりますし、単純に格好良い。彼らが抱えているもの、つまりストーリーの軸になる部分にも魅力を感じます。チーム・サーカス団、ずるいですよね？（笑）

愛のあるカメラワークでふとした表情も

――副音声解説は約１年ぶりでしたね。※前回分も同日に放送予定あり。詳細は後述。

前回の経験を生かして、裏エピソードや演じていた本人たちだからこその話を多く盛り込んで解説しようと意識しました。4人で掘り下げた話をしていたら、「あ、俺はそこをよく分かっていなかったかも」と気づくところもあって。もっと深く勉強しないといけないなと思いました。

――前回と今回で、収録中の雰囲気も違いましたか？

前回の座談会メンバーは、わりと落ち着きのあるタイプの4人でした。その中でも植原卓也くんがリーダーシップをとって、話を進めたり引き出してくれたりした記憶があります。今回はわちゃわちゃした人がいたり、冷静っぽく見えてやっぱりわちゃわちゃした人もいたりしまして（笑）、自然に盛り上がった気がします。

――わちゃわちゃ……というと？

わちゃわちゃしていたのが三津谷亮くんで、冷静っぽくみえてわちゃわちゃというのが輝馬くん（笑）。これは個人的な想像ですが、輝馬くんって家ではきっと静かなタイプだと思うんです。なので今日は、すごく気をつかって“見せかけわちゃわちゃ”をしてくれていたんじゃないかな（笑）。

あ。でも、それは僕のせいだったのかも。座談会は、輝馬、僕、玉ちゃん、三津谷くんという並び順だったんです。僕が玉ちゃんや三津谷くんに話しかけようとすると、少しこう（身を乗りだすように）なりますよね。僕のこの帽子、つばが広いせいで壁になって、輝馬くんを入りづらくしてしまったのかな……。

――輝馬さんが少し外側になってしまうんですね（笑）。

だとしたら、本っ当にごめんなさい！（一同笑）。でも輝馬は的確にいいことを言っていますよ！　おいしいところを持っていく解説をしています！（笑）

――座談会では、「愛のあるカメラワーク」という言葉が出たそうですね。

はい。例えば僕の演じるセバスって、ふとした瞬間に意味深な表情をすることがあるんです。物語の流れに大きな関係はなくても、僕はそこに僕なりの意味を持たせて演技をします。そうしたふとした表情をカメラはとらえてくれていて、映像にも入っているんです。よく観てくれている、愛のあるカメラワークに「ありがとう」って思いました。

――その表情にも注目して楽しませていただきます。

11月23日の放送では、原作『黒執事』をご存知の方は、生身の人間が２次元を再現し、その世界が画面の中にできていることを楽しんでほしいです。原作を知らない方でもこの作品の世界観は面白いと感じていただけると思います。

「豪華客船編」は大晦日開幕！

――大晦日には最新作『ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-』がTBS赤坂ACTシアターで開幕しますね。ダブル主演のシエル・ファントムハイヴ役は、ひき続き内川蓮生さんです。

前作では約３か月間、内川くんと一緒にお仕事をさせていただきました。彼は小学六年生ですが学ばせていただくことが多かったんです。あれから1年、お互いにそれぞれの経験を重ねてまた共演できることになるので、どんな刺激を受けられるのか今から楽しみです。

――ストーリーは原作『黒執事』の12巻から14巻にあたる「豪華客船編」です。

『黒執事』という物語が先へ進む喜びもあり、楽しみもあります。待ち望んでくださっているお客さんたちのご期待に応えたいという思いもあります。自分の中でも、すごく盛り上がっているのを感じます。

新作の舞台にお越しくださる方も、今回の放送で副音声を聞いてからお越しいただけると、人物の関係性や前回からの伏線などをより深く楽しんでいただけるのではないでしょうか。お時間の許す方は、ぜひ劇場まで足をお運びください。

『ミュージカル「黒執事」～NOAH'S ARK CIRCUS～』は、11月23日（木・祝）夜9:00よりWOWOWにて放送。同日夜6:00からは『ミュージカル「黒執事」-地に燃えるリコリス2015-』（副音声解説付き。古川雄大、植原卓也、荒木宏文、佐々木喜秀）も再放送される。さらに最新作の『ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-』は2017年12月31日に開幕、その後、全国を巡演。

WOWOWでの放送は、“生執事”ファンの方だけでなく、原作ファンの方にとっても一度2.5次元の世界をのぞいてみる絶好のチャンスだ。忠実に再現された世界観を楽しんでほしい。
 

取材・文・撮影＝塚田史香