28日から一般公開「BEYOND THE MOTOR」の行く先は? 第45回東京モーターショー2017
モーターショーでは綺麗なコンパニオンがお出迎え、案内してくれるのも楽しみの一つだ
1980年代のパワー戦争、1990年代のハイブリッド(HV)車の登場、2000年前後のミニバンブームを経て、数年前からいくつかのメーカーより電気自動車(EV)が発売されるようになった。そして2010年代も後半となった2017年の今、そしてこれから、モータリゼーションはどう変わって行くのだろうか。
クルマは今も昔もその時代の“写し鏡”。『第45回東京モーターショー2017』のステーツメンツは“世界を、ここから動かそう。”、“BEYOND THE MOTOR”だ。IoTやAI技術の進化で、その情報が直につながる世の中に発展しようとしている。その時代の変革期にいる現在、各メーカーがどんな取り組み、メッセージを発信しているのか、一般公開前に筆者もプレスデーに潜入。各社の本音部分を聞いてきた。もちろん、ついでに?…というわけではないが、綺麗なコンパニオンの皆さんにもご登場いただきました。
時間の関係もあってすべてのメーカーの話を聞くことはできなかったが、筆者の個人的な感想は「やっぱりクルマメーカーは原点である“走り”を一番大切にしているんだな」ということ。もちろん、トヨタのように人口知能を搭載した「TOYOTA CONCEPT-愛i」というコンセプトカーを出展するなど、意欲的なところもある。しかし、これだけデジタル技術、工業技術が上がってきた今でこそ、各社が大切にしているのは“クルマ会社の原点回帰”であると感じた。ある意味、凄く嬉しくなったのだけれども、そのキーワードは大枠で言えば“走り”と“感性”の2つだった。
世界が注目する新エンジン「SKYACTIV-X」を開発したマツダは、今年の8月、技術開発の長期ビジョン「サステイナブル”Zoom-Zoom”宣言2030」を公表。ある意味あとの引けない本気の取り組みを自ら課した形だ。その具現化の一つがこの新エンジンで、何が凄いかと言えば“ガソリンが自己着火する”というところ。自己着火といえばディーゼルエンジンを思い出す人が多いだろう。しかし、多くのメーカーが取り組んでも、なかなかガソリンでこれを実現するのは難しいのが現状。それをマツダが他社に先駆けて成功したというわけだ。
今までのガソリンエンジンは圧縮された混合気にプラグからの火花を着火。そのプラグ接触点からじわじわと火が広がる形だった。しかし、今回の技術だと自己着火のため燃焼ムラがなくなり、燃焼効率も良く、パワーにも環境にも優しくなるという。2019年に実用化を目指しているというから、ユーザーはもちろん、ライバルメーカーもその成熟度に注目しているだろう。
そして、筆者の個人的なイメージ「マツダはイタリアを意識しているのでは?」という質問に、「日本らしさです」というある意味びっくりした答えを返してくれたのは、同社広報本部 平英樹経営グループマネージャーだ。「日本は引き算の美学を持っていますよね。マツダはその“日本らしさ”にこだわったデザインをしているんです」と平英樹氏。このデザインコンセプトを主導したのが、前チーフデザイナーで、現在常務執行役員の前田育夫氏だったという。
今回、その流れで出展されていたのが「魂動(こどう)デザイン」による「VISION COUPE」だ。驚いたことにそのボディデザインには、直線を一切用いていないという。すべて曲線で作られているため、ボディに映り込む景色や街並みでさえ美しく見えるというわけだ。今のマツダの好調ぶりは、この内燃機技術と日本の美を追求したデザインの融合にあるかもしれない。
次に話を聞いてみたのがスバル。筆者は10年以上前に大ヒットしたレガシィツーリングワゴンに乗っていたので、その頃からの変遷も聞いてみた。第一技術本部 技術開発部の佐瀬秀幸部長は「レガシィを大型化して日本で売れなくなってしまった。その時に日本人に合うダウンサイズしたレヴォーグを出し、それが皆さまに受け入れられ、ホッとしました」と当時の決断とチャレンジを話してくれた。
佐瀬さん自身はレガシィの大柄なサイズ感も好きだというが、やはり高年齢の方には少し持て余すサイズになってしまったとのこと。今は北米も意識したモデルも作らなくてはならないため、各メーカーもクルマ作りには苦心しているということだろう。
そんなスバルが意識するのは“安全”と“楽しさ”。「安全については世界をリードしていると思うか」という質問に、佐瀬部長も「それには自信があります」とコメント。「そして、やはりうちはその安心、安全をリーズナブルな価格で提供したい」と話してくれた。好評のアイサイトは曲がり角で危険を察知できるほど、その技術力は上ってきている。しかし、佐瀬さんは「目標は『事故ゼロ』です」と話す。
同社のアイサイト搭載車と非搭載車では、事故率が60%も減少、追突事故は80%も減少したという。現実にはゼロにはならないかもしれないが、そこに目標を置いているというのは、同社の安全への姿勢が伺える話である。しかし、佐瀬さんは「もっともっとレーダー、カメラ技術を高めないと」とその手を緩めない。次世代のアイサイトは2022年を目途に実用化を進めているそうだ。
そして、同社のもう一つのトピックスはSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)だ。佐瀬さんも「コーナーが楽しい。自信のプラットフォームが出来ました」と胸を張る。そのSGPを最初に「インプレッサ」に採用したことに意味があるという。「やっぱり弊社のドライビングの楽しさはこのクルマ。最初に載せるのはこのクルマと決めていました。今までの(弊社の)クルマと比べても、明らかに回頭性が上がっています」と話す顔にその自信が窺えた。
その新型インプレッサにアイサイトを載せたことも大きい。“安全と“楽しさ”を両立させるというのが、先にも紹介したようにスバルのメッセージだからだ。このマインドがしっかりと全社員に伝わっていると分かるのは、佐瀬さんの人柄からも分かる。クルマの話をしている時は子どものように楽しそうなのだ。2021年にはEVも出す予定というから、“安全”と“楽しさ”をEVにどう加味していくのか、4年後が早くも待ち遠しくなる。
さて、紙数も限られているので国外メーカーも紹介したい。話を聞いたのはBMW広報部 前田雅彦製品広報マネージャー。「BEYOND THE MOTORというステーツメンツがあるが、今後のBMWは?」と話を向けると「全方位です(笑)」という返事が返ってきた。
「すでに弊社はi3、i8というクルマも出していますし、これからはプラグインも電気もAIを使った自動運転もすべてお客様のニーズ、声に応えていきたい」とのこと。その中で、やはりBMWも「うちの強みのダイナミクス、走りはそのままに」ということだった。
「TMSでの目玉は?」と聞くと「8シリーズとZ4です」との答え。マーケットが2極化しているとのことで、今までの1~6と7、8をセグメントし、7以上でさらに「プレミアム感を出していきたい」という。ロゴの展開も差別化を図り、シンプルにしていく予定とのことだ。いずれにしてもモータースポーツ界にも積極的に参加している同社の、「BEYOND THE MOTOR」だけでない、走りのこだわりにも注目したい。
最後にトヨタにも聞いてみたが、同社も“全方位”と“感性”という話をしていた。すべてのメーカー担当者には時間もなく話を聞けなかったが、総じて「BEYOND THE MOTOR」には対応しつつ、自社の強みをさらに伸ばし、その中で“感性”と“人との触れ合い”というソフト面を意識してクルマづくりをしていきたい、というのが伝わってきた。
「BEYOND THE MOTOR」というと、どうしてもAIやIoT、環境などに目を向けてしまう。それももちろん押さえながら、クルマと人との調和、会話という最も大切な“感性”と“触れ合い”を忘れていない各メーカーの取り組みに、筆者は嬉しくなって会場を後にした。
一般公開は10月28日から11月5日までの9日間。メーカー各社だけでなく、それを支える部品メーカー、取り巻く団体、会社のブースも多く出展している。もちろんハーレー・ダビッドソンやSUZUKI、YAMAHAなどの2輪メーカーも展開。とても1日では回り切れないが、充実したイベントなので、多くの人にぜひとも楽しいんでほしい。