ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエが今冬来日 総裁/芸術監督のアンドリアン・ファジェーエフが語る

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2017.11.9
アンドリアン・ファジェーエフ

アンドリアン・ファジェーエフ

かつて、マリインスキー・バレエのプリンシパルとして活躍し、その麗しいスタイルとテクニックで世界を魅了したアンドリアン・ファジェーエフ。華やかな表舞台から惜しまれつつの引退をした彼が、今や歴史あるバレエ劇場のトップとして一団を率いての来日を果たす。劇場の総裁である傍ら芸術監督も務め、クラシックの伝統に忠実でありながら、レオニード・ヤコブソンの前衛的な作品と心意気を守り続けている。見た目も、性格も、バレエに対する思いも、すべてが魅力的なファジェーエフに、この冬の見どころをインタビューした。

――日本では、くるみ割り人形と言えばクリスマス、白鳥の湖と言えば新年を思わせる作品として定評があります。ロシアではこの2作品にはどのような意味がありますか。

ロシアでは、くるみ割り人形は日本と同じようにクリスマス時期にとても強く結びついている公演ですが、新年にもよく上演されています。このファンタジーは、ロシアの子供たち、学生たちのクリスマス休暇の思い出のハイライトなのです。白鳥の湖はというと、どこか特別な時期に連想されるような作品ではありません。特に時期を選ばずいつでもどこでも上演されております。思うに、このバレエ作品はある意味クラシックの祭儀のようなものであり、バレエを国技とするロシアの振付学校を栄光に導くシンボルと言えるものだと思います。​

――芸術監督として、くるみ割り人形/白鳥の湖、それぞれの作品を上演する上で何を一番大切にしていますか?

前述したように、白鳥の湖は世界の芸術において、最も完璧で有名な作品の一つだと思います。昔からその音楽と振付は世界クラスの傑作とみなされ、ロシアの文化歴史上の優れた成功の一つであると言えるでしょう。くるみ割り人形も同じく、ダンスの世界ではシンボル的な作品です。芸術監督として、私が出来ることはひとつ。私の劇場のダンサーたちを、ダンサーとしてはもちろん、物語のキャラクターを演じるアクターとしても、ただひたすら鍛え上げ、この偉大な作品に恥じることのないパフォーマンスを作り上げることです。

――日本への再来日公演についてどのように感じていますか?

私がマリインスキー・バレエのプリンシパルだった時、日本の観客の皆さまの前で踊る素晴らしい機会を得ました。のちに、私がサンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエの総裁という立場に就任してからは、日本のロシア文化フェスティバルにおいてグランド・フィナーレを飾らせてもらえる機会も得ました。私はいつも、日本という素晴らしい国の長い歴史に敬意と感謝の念を持っています。日本の人々の持つ、シンプルなものの中にある美しさを見抜く感性、そしてその感性をエレガントに表現する能力に畏怖の念を抱いています。世界は、この美しさに対する自然な受容力を持つ日本の観客のみなさまを求めているのだと感じています。だからこそ、私はいつも日本のみなさまにお会いすることをとても楽しみにしています。​

――サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエのくるみ割り人形と白鳥の湖のみどころはどこですか?

他の芸術に比べてバレエは、見る人それぞれにとても独特な届き方をするものだと思います。バレエの“言語”は世界共通です。価値観の異なるさまざまな人が、私たちのこの“カルト・ショー”に対する解釈に応じています。私たちの劇場がこの伝説的な舞台を現代に復活させ、クラシックの伝統に敬意を払う中で切望していることは、観客の皆さまが、有名なデザイナーが手掛けた豪華な衣装・舞台セットや努力を惜しまないダンサーの動きに感心するだけでなく、舞台上のダンサーたちの生命力、そして想像力に満ちた若い力に対し、プティパが生きた時代と同じくらい強烈に共鳴してほしいということです。​

――なぜ今回はアレクセイ・ポポフをゲストに招いたのですか?

アレクセイ・ポポフはロシアのバレエ学校のお手本と言えます。彼はワガノワ・バレエ・アカデミーを卒業し、マリインスキー・バレエに入団しました。マリインスキー・バレエで6年間ソリストを務めたのち、今はドイツ・ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場にてプリンシパルとして活躍しています。彼はクラシック・バレエの主要キャラクターを演じる事において感嘆するような才能を見せます。私は今回の彼の特別出演は、日本への来日ツアーをより素晴らしいものにしてくれると確信しています。​

――劇場にとって大切なことはなんですか?どこに注目してもらいたいですか?

様々なバレエ劇場で踊ってきた経験の中で、私は成功する劇場に当てはまる“チェックリスト”を作りました。まず、一人ひとりが自分のまわりのプロフェッショナルチームに対し真摯に誠実に働くこと、そしてダンサー一人ひとりが、日常のリハーサル時間以外において常に向上心を持っていること。また一方で、体の曲線美を維持し、ジョギングやジムで磨き上げる努力を惜しまず、また劇場へ観客として通ったりすることでの人としての成長をすること。鋭い知性と文化に対する興味は一人前のバレエダンサーにとても必要な要素なのです。これらの信条が、我々劇場の基盤を為しています。新しいものを学ぶことに熱心になる傍ら、私の若い力あふれる劇場は、ロシア・バレエ、クラシックの伝統にとても忠実です。これらは、劇場の創設者であり、モダンバレエの鬼才、レオニード・ヤコブソンに与えられた我々のミッションなのです。​

――日本のみなさまへメッセージを。

劇場を率いるものとして、今回ロシアン・シーズンズにも参加しているこのツアー公演が、日本の観客の皆さまをがっかりさせるものには決してならない、とお伝えしたいです。ロシア・バレエの“大使”として、美しい国、日本で公演できることを大変光栄に思い、文化という“言語”が人々をより強く、長くつないでくれる手段なのだということを確信しております。

公演情報
ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエ 2017-18

【くるみ割り人形(P.チャイコフスキー作曲/M.プティパ振付)】
■2017年12月22日
 藤沢市民会館 大ホール (神奈川県)
■2017年12月23日(土・祝)
 調布市グリーンホール 大ホール (東京都)
■2017年12月24日(日)
 昭和女子大学 人見記念講堂 (東京都)

【白鳥の湖(P.チャイコフスキー作曲/M.プティパ、L.イワノフ振付)】
■2017年12月27日(水)~12月28日(木)
 Bunkamura オーチャードホール (東京都)
■2017年12月30日(土)
 大宮ソニックシティ 大ホール (埼玉県)
■2018年1月2日(火)
 ウェスタ川越 大ホール (埼玉県)
■2018年1月4日(木)
 ティアラこうとう 大ホール (東京都)
■2018年1月5日(金)
 相模女子大学グリーンホール 大ホール (神奈川県)
■2018年1月6日(土)
 めぐろパーシモンホール 大ホール (東京都)
■2018年1月7日(日)
 カルッツかわさき(川崎市スポーツ文化総合センター) (神奈川県)
■2018年1月8日(月・祝)
 昭和女子大学 人見記念講堂 (東京都)
■2018年1月11日(木)
 四日市市文化会館 第一ホール (三重県)
■2018年1月12日(金)
 ロームシアター京都 メインホール (京都府)
■2018年1月14日(日)
 グランキューブ大阪(大阪国際会議場)メインホール (大阪府)


 

 

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