大阪フィルハーモニー交響楽団の尾高忠明が初登場! 2018年春開幕『大阪4大オーケストラの響演』記者懇談会レポート

レポート
クラシック
2017.12.8
「第56回大阪国際フェスティバル2018『大阪4大オーケストラの響演』記者懇談会にて(撮影/石橋法子)

「第56回大阪国際フェスティバル2018『大阪4大オーケストラの響演』記者懇談会にて(撮影/石橋法子)

大阪の春の風物詩として定着しつつある音楽の祭典、第56回大阪国際フェスティバル2018『大阪4大オーケストラの響演』(通称4オケ)が2018年4月21日(土)、大阪・フェスティバルホールで開催される。大阪を本拠地とするオーケストラ4団体とそれぞれのシェフが一堂に会する1日限りのスペシャル・コンサートだ。2015年から毎年開催され、今回で4回目(当初は4回を目処としたが、現在前向きに継続を検討中)。公演に先駆け11月に開催された記者懇談会の模様をレポートする。

登壇者は出演の4大オーケストラから、大阪フィルハーモニー交響楽団(1947年発足)の新音楽監督・尾高忠明(2018年4月就任予定)、関西フィルハーモニー管弦楽団(1970年発足)の首席指揮者・藤岡幸夫日本センチュリー交響楽団(1989年発足)の首席指揮者・飯森範親大阪交響楽団(1980年創立)のミュージック・アドバイザー・外山雄三。日本を代表するマエストロが、楽団の魅力と選りすぐりの楽曲についてたっぷりと語った。

■4大オケの垣根を超えて、あらたな演奏家や楽団の魅力に出会えるチャンス!

ーー2018年4月、4回目となる『4オケ』の開催が決定しました。

尾高忠明大阪フィルハーモニー交響楽団・新音楽監督>:この話を東京で聞いた時、「すごいことやるな~」と思いましたよね。「楽屋足りるのかな?」って(笑)。まさか自分がここにくるとは夢にも思っていませんでした。オーケストラは自分たちの演奏はよく知っているが、他のオーケストラの演奏はよく知らない。それを聴くというのは、指揮者にとってもこれほど勉強になることはありません。互いに良い影響を受ける可能性が非常にある。お客様も、例えば関西フィルのファンの方が「大阪交響楽団良いな。今度演奏会に行ってみようかな」とか、相互で新たな聴衆が増えていくことを秘めている。新参者の私が入ったことで、今回が「完結」とならないように頑張ります。

尾高忠明

尾高忠明

藤岡幸夫関西フィルハーモニー管弦楽団・首席指揮者>:今回で3回目の出演になります。毎回(会見のたびに)言っていますが、普通のコンサートよりも嫌ですね~。他の方のリハーサルを見るのはすっごく楽しくて勉強になるのですが、いざ自分が見られる側の立場になると、嫌で嫌でしょうがない(笑)。外山先生は、僕がデビューしたての頃にお電話を頂いた思い出があります。先生は覚えてらっしゃらないと思いますが、尊敬する大先輩です。

藤岡幸夫

藤岡幸夫

藤岡:尾高先生は、イギリス時代にとてもお世話になりました。僕の英国デビューの大きなきっかけとなったBBCフィルハーモニックの定期演奏会で、名匠ロジェストヴェンスキーの代役としてリハーサルを務めることになったのですが、マーラーの「復活」なんて、どうやって振ったらいいか分からない。マンチェスターから尾高先生のご自宅があるウェールズまですっ飛んでいって、振り方を教えてもらった大恩人でもあります。(飯森)範親は特に恩人でもなく、うちの家内が彼の子供たちの家庭教師をやっているので、むしろ僕の方が恩人です(笑)。コンサートが開催される2018年は僕にとって19年目のシーズンになります。毎年、30公演から多い年で50公演、関西フィルに全てを掛けてきました。19年間の意地を絶対に見せるような演奏会にしたいです。

左から、尾高忠明、藤岡幸夫

左から、尾高忠明、藤岡幸夫

飯森範親日本センチュリー交響楽団・首席指揮者>:尾高先生は、僕の桐朋学園大学・指揮科時代の恩師です。担当教官として1年の時から相当厳しくご指導いただき、僕の出来の悪いところは全部バレています(笑)。

左から、尾高忠明、藤岡幸夫、飯森範親

左から、尾高忠明、藤岡幸夫、飯森範親

飯森:22歳でデビューして以来、30年以上続けてこられたのは、尾高先生のお陰です。また、外山先生は僕が24歳の時に初めてNHK交響楽団を指揮した時に、練習を全部みていただきました。(外山:「俺そんなことしてねぇだろ~」)。いえいえ(笑)、非常に丁寧にご指導いただきました。(藤岡)サッチーは、息子たちが彼の奥さんにお世話になり、お陰さまで下の子もめでたく幼稚園に入園できました(笑)。そんな皆さんと、互いが関わっているオーケストラの演奏を披露できる機会ですので、自分も日本センチュリー交響楽団の実力、クオリティーというものを最大限に発揮したい。大阪のお客様が、それぞれのコンサートに行きたくなって欲しいとの願いをこめて、満員の聴衆の中で演奏できることを願っております。

飯森範親

飯森範親

外山雄三大阪交響楽団ミュージック・アドバイザー>:大阪交響楽団はご存じのように若いオーケストラですので、ドロドロした部分、重々しい部分があまり表にあらわれない。そこをどう処理するかが指揮者の責任だと常々感じております。今回(の演奏曲)はブラームスの交響曲第1番。私の中で一番強烈な印象はカラヤンがN響を指揮したときのもの。ドイツの指揮者はこんなにも重々しい序奏なのかと思いました。その後、ドイツ人はではなく“カラヤンはそうだった”ということに気づくのですが。いまだに何十年も前の、その時の印象が私の中に残っておりまして、邪魔です(笑)。

外山雄三

外山雄三

外山:今回そういう色々なことを私の中で全く新しいものにします。つまり、しょっちゅうやってるオーケストラに「ブラームスの1番って本当はこういう曲なのか!」と気付いてもらえたとしたら、聴衆の皆様にも「ブラームスもなかなか良いな」と思っていただけるのかなと思います。

左から、飯森範親、外山雄三

左から、飯森範親、外山雄三

■お馴染みのバレエ音楽からヨーロッパ熱狂の作品まで、厳選4作品を堪能!

ーーそれぞれの演奏曲についてお聞かせください。尾高さんのエルガーの序曲「南国にて」は、日本で演奏される機会は少ないかもしれません。

尾高:エルガーはイギリス時代にハマりました。例えば日本に演奏旅行に来てエルガーの1番をやると、聴いて下さった方からうちでもと依頼され、そこでやるとまたうちでもと頼まれることが続いて、自分の中ですごく大きな存在の曲になりました。そこから1番以外にももっと素晴らしい曲がいっぱいあるなと思い、その中のひとつが「南国にて」です。エルガーがイタリア北部を旅して、素晴らしい景色の中に佇んでいるうちに「もう自分の中では曲がかけた」という有名なエピソードで語られる曲です。中でもヴィオラのソロが本当に美しい。一度聴いた人はこの曲を一生忘れないというぐらい素晴らしい作品です。

尾高忠明

尾高忠明

尾高:エルガーは僕が一番長く滞在したイギリスのウェールズに近いウスター近郊に育ち、小高い丘を散歩するのが大好きだった。そこで聴こえてきたのがウェールズの民謡だったんですね。エルガーはそれを色んな曲に取り入れています。僕がウェールズにいて何を一番感じたかといえば、現地の陶器は唐津焼に似ているな、旋律線も「ああ、ノスタルジーを感じるな~」とか、日本との共通点でした。そこからエルガーの色んな作品を演奏するようになりました。実は来月(2017年12月)も英国で私のBBCウェールズ交響楽団在任30周年祝賀演奏会があるのですが、そこでのプログラムのトリにこの「南国にて」を演奏します。

ーー藤岡さんはバレエ音楽「白鳥の湖」を組曲ではなく、独自のセレクション版での演奏です。

藤岡:外山さんが今年4月「くるみ割り人形」をやられたこともあり、なるべく有名な曲でというところから決めました。「白鳥の湖」は組曲以外の曲が、素晴らしいんですよ~(笑)。本当にドラマティックに出来ていて、それを僕が関西フィルにきた頃から自分で、まるで絵本を見るようにお話に沿った形で編集していました。シンフォニックなオリジナルセレクション版として都内やヨーロッパのオケ、関西フィルとも何度も演奏してきた作品です。関西フィルはロシアのバレエ団が大阪で公演をするときに、ロシア人指揮者による演奏をピットで担ってきた伝統があるので、その意味でも関西フィルの個性を出せるのではないかと。我々らしい一体感のある演奏をお届けしたいと思っております。

藤岡幸夫

藤岡幸夫

ーー飯森さんは、リムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」。こちらも日本で演奏されることは珍しいかもしれません。

飯森:ヴァイオリン、クラリネット、フルート、ハープ、また輝かしい金管楽器のファンファーレまで。この作品を演奏することで、日本センチュリー交響楽団の素晴らしいソリスト陣をアピールでき、それぞれに新たなファンが付くのではないかと、狙っての選曲です(笑)。ヨーロッパ、とくにドイツではすごく人気のある曲で、私も相当指揮してきました。スイスのルツェルン音楽祭でプログラムのメインにこの曲を持ってきたことがあったのですが、演奏が終わった時の聴衆の反応がすごくて、びっくりするぐらいスイスの皆さんが興奮されていました。やはり、スペイン独特のリズムとオーケストレーションの妙が、聴く者の心を激しく揺さぶるんだなと、その光景を目の当たりにしました。今回も卓越したソリスト陣ばかりなので自信を持ってお届けできる、満を持しての選曲でございます。

飯森範親

飯森範親

■演奏家も聴衆との出会いを心待ちにしている、スペシャルな夕べに酔いしれよう!

ーー尾高さんは2018年4月に大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督に就任されます。関西音楽会との関わりや大フィルへの思いなどをお聞かせください。

尾高:大フィルを初めて振ったのは40数年前、扇町のプールでの練習でした。録音用にチャイコフスキーの4番を1曲だけでしたが、バックに朝比奈(隆)先生がおられたからか、大変に大人なオーケストラだなという印象でした。曲自体は、桐朋学園大学で仕込まれていたので自信はあったのですが、いざNHKのスタジオで録音となった時は大人たちを前に怖いような気持ちになり、弦楽器と木管楽器を交互に演奏するところで、思いっきり弦楽器に出すサインを管楽器の方に出してしまった。思わず大声で「ごめんなさい!」と録音中に言ってしまった。そうすると、みんなに「しゃべるな!」と返されて。間違えたところでオーケストラはオートマチックで演奏できるんですね。そこで真っ赤になったというのが、最初の思い出です(苦笑)。

尾高忠明

尾高忠明

尾高:その後、大フィルさんは40年間ずっと毎年のように呼んで下さって、すごく楽しかった演奏がいっぱいあります。なかでもエルガーの1番の交響曲は、世界中色んなところで演奏してきましたが、正直、僕は大フィルの演奏が一番心を打つ。大阪で生活し初めて感じるのは、やはり大阪のひとは情が厚いということ。演奏にもお客様からも受ける雰囲気から感じます。ここに長らく自分が居られることがすごく幸せです。大フィルと頑張っていきたい。

ーー外山さん、飯森さんは初回から4年連続でのご出演です。初回での戸惑いや続けることで印象が変わった部分などはありますか。

外山:第1回目は、4つのオーケストラがひとつの会場にいることが初めての経験でしたので、簡単にいえばみんな「どうしたらいいのか分からない」。どっちを向いて、誰と話したらいいのか。例えるなら、コンクールみたいな印象だったと思います。でも実際にやってみたら、久しぶりに会う音楽家がたくさんいて楽しくて、一方で「俺たちは普段からちゃんとやっているんだぞ」というのを見せたい思いもあって、とても不思議な雰囲気でした。通常ではありえない、他では見たことがない環境ですので、みんな口にこそ出しませんけど、毎年楽しみにしているんじゃないかと思います。

外山雄三

外山雄三

飯森:演奏家の皆さんも、オーケストラから離れますとアンサンブルや室内楽など、自主的に演奏会をされている方もたくさんおられますので、本当に舞台袖や楽屋が和気あいあいとしている。オーケストラの枠を超えてフレンドリーな雰囲気であることは大切なことですし、日本のクラシック界、オーケストラもまんざらではないというのはすごく感じました。個人的にはみなさんのリハーサルを見学することで、「だったら僕はこうしてみようかな」とか、モチベーションに火がつきます(笑)。そういった環境が年に1回あるのは、音楽家にとって物凄く貴重なことです。そんな演奏家の気持ちは、必ず聴いてくださるお客様にも伝わると思います。完結なんて話もありますが、これで終わると本当に尾高先生のせいになってしまうので(笑)、絶対に続けていただきたい。大阪のオーケストラにとっては貴重な機会だと申し上げたいです。

飯森範親

飯森範親

ーー藤岡さんは3回目のご出演になります。大阪での活動も20年近くになります。

藤岡:多分、大阪よりも他の地域の方々の方が「大阪って面白いことするよね~」と思っていると思います。いつも凄いと思うのは、楽屋が「男・女」で分かれていること。これ(楽団ごとではないの)は大阪でしかできないことだろうな~と(笑)。男性楽屋も和気あいあいで、心温まる舞台裏の光景も、いつも楽しみにしているところなので、絶対に(主催者は)止めちゃダメだよ。形はどうであれ、僕はこのシリーズが続いていくと信じている。新しい展開も楽しみにしています!

藤岡幸夫

藤岡幸夫

尚、2017年度に好評だった1,000円の学生席を今回も限定100席で販売するほか、開演前と終演後にはクラシック初心者にも楽しいイベントを用意。プレイベントには朝日放送 三代澤康司アナウンサーの司会進行による恒例企画「4指揮者によるトーク・コーナー」を、終演後には各楽団主催コンサートのペアが当たるプレゼント抽選会を行う。その他、朝日カルチャーセンター主催「大阪4大オーケストラの響演」満喫講座も。詳細は公式サイトをチェックしよう。

取材・文・撮影=石橋法子

イベント情報
第56回大阪国際フェスティバル2018「大阪4大オーケストラの響演」
 
2018年4月21日(土)16:00開演(14:45開場)~19:00終演予定
■会場:大阪・フェスティバルホール
 
【スケジュール】
・15:30~ファンファーレ、アンサンブル、4指揮者によるトーク・コーナー
・16:00~開演 ※各楽団演奏後、舞台転換(10分) ※休憩は20分
・18:45予定 プレゼント抽選会
・19:00予定 終演
 
【演奏曲目】:
①エルガー:序曲「南国にて」作品50/大阪フィルハーモニー交響楽団<指揮:尾高忠明>
②チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」ハイライト(藤岡幸夫セレクション版)/関西フィルハーモニー管弦楽団<指揮:藤岡幸夫>
③リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 作品34/日本センチュリー交響楽団<指揮:飯森範親>
④ブラームス:交響曲第1番ハ短調 作品68/大阪交響楽団<指揮:外山雄三>
 
■入場料:S8,500円、A7,000円、BOX14,000円(全席指定、消費税込)
※未就学児の入場不可 ※学生席の取り扱いはフェスティバルホール センターのみ
■一般発売:2017年12月10日(日)午前10時~
■フェスティバルホールhttp://www.festivalhall.jp
 

 

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