エンタメ要素満載の青春群像劇『夕陽伝』瀬戸康史・宮崎秋人・遠藤雄弥 座談会

インタビュー
舞台
2015.10.6

俳優集団D-BOYSのメンバーを中心に、シェイクスピアからミュージカルまで次々に意欲的な舞台を上演しているDステ。その17作目は「古事記」をベースに、生きる尊さを描いたファンタジックな青春群像劇『夕陽伝』。作は末満健一、演出は岡村俊一が手がけるオリジナル新作舞台で、10月22日~11月1日は東京、11月21日、22日は大阪で公演する。 

 

 

物語の背景は大和朝廷。皇子の海里が、あらがえない運命の中でこの国を考え、次の時代に継いでいこうと生き抜いていく姿と、彼を取り巻く人々を描くスケール大きな青春群像劇だ。
海里に扮するのは3年半ぶりにDステに登場する瀬戸康史。その兄に複雑な思いを抱く海里の弟・都月には、10月4日にD-BOYS新加入が発表になった宮崎秋人。そして兄弟を見守る摂政の猿美弥にはD-BOYS初代リーダーだった遠藤雄弥。この作品で共演する3人に、それぞれの取り組みを聞いた演劇ぶっく10月号の記事を、別バージョンの写真とともにご紹介。(この座談会は8月時点での取材です。※宮崎さんの崎のツクリは大ではなく立になります。) 

 

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遠藤雄弥、瀬戸康史、宮崎秋人

「古事記」がベースでもわかりやすい世界になっている

 

 

──今回の台本を読んで、まずどんなことを感じましたか?

 

瀬戸 ベースになっている「古事記」は、なんとなくは知っていましたけど、難しい話が書かれていると思い込んでいましたので、台本の世界が、僕らにも通じるわかりやすいお話なので驚きました。
宮崎 自分にとっては直球ど真ん中にきたなと(笑)。ストーリーもなじみやすくて、知っている世界という気がしました。大好きな時代物の殺陣も出てくるし、早く稽古に入りたいなと。そのくらいワクワクしました。
遠藤 僕も、すごく入りやすくて人間活劇というかそういう世界で、末満さんの書く脚本はDステに合ってるなと。エンタメ要素がいろいろ盛り込まれているし、これを岡村さんがどう演出するかとても楽しみです。

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──役柄と自分に共通するところはありますか?
瀬戸 海里は長男というところが僕との共通点です。長男って小さい頃は我慢しなくてはいけないことが多いので、思春期になるにつれ反発するところがあって、海里は自由奔放と言われますけど、彼にもそうなる理由があるんです(笑)。
宮崎 僕も次男の都月の気持ちはわかりますね。姉がいるので(笑)。兄には兄の悩みや葛藤があるのはわかるけれど、弟にもあるんだぞと(笑)。王にはなれないけれど、次男という立場をわきまえて、兄を支えようとしているのに、勝手なことばかりするから(笑)。
遠藤 僕はこの2人が思いを寄せる、小芝風花さん扮する陽向の父で、大和の大王に仕える摂政です。大きな娘がいる役なので、僕でいいのかなと(笑)。
瀬戸 遠藤さんと僕は4歳しか違わないんですけどね(笑)。
遠藤 ちょっと腕白な長男と冷静な弟がいて、そこに自分の娘も混じって仲良くしているのを温かく見守っている役どころ。その反面、政治や国のこともちゃんと考えなくてはいけない。そこで生まれる葛藤もあるのだろうなと思っています。

 

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俳優集団が作っているDステの舞台

 

 

──Dステも17作目で、毎回進化してきたと思うのですが。

 

瀬戸 始まってから8年目で、17作というのはすごいなと思います。ジャンルも幅広いし。
遠藤 これから18作目、19作目とどういうふうに進むのか、なにをやるのか、見えないからこその面白さがありますね。それにD-BOYSのメンバーがいろいろなジャンルで活躍していて、舞台上でその技術を出し合っている中で、この人は今こんな演技をするんだというのを見る楽しみもあります。
瀬戸 Dステは秋人も初めてですけど、小芝風花さんは初舞台で、Dステを選んでくれたのは嬉しいし、これで舞台を好きになってもらえるようにいい作品にしたいです。
 
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──初参加の宮崎さんは、Dステは観る立場だったわけですが、
宮崎 作品の幅の広さを感じます。それに本当に俳優集団だなと。キラキラしてる部分もありながら舞台で芯が通っているんですよね。作品としっかり向き合っているなと。今回の作品を作る過程で、今後どういうものを作りたいかまで一緒に考えて作っているのを見て、そこに参加させていただけることが光栄だなと思いました。それに初出演ですが、1回限りではなくまた出演できるように頑張ります。
──メンバーもそれぞれ個性が出てきましたね。
瀬戸 遠藤さんも言ったように、いろいろなところで経験をしてきて、昔より芝居の技術も上がっているし、集団での自分たちの立ち位置もわかってきて、だからこそ個々の存在感が増しているんだと思います。
遠藤 確かにD-BOYSの若手たちのスキルって、年々レベルがあがってるよね。僕なんかこんなふうに最初からできなかったと感心する(笑)。僕がD-BOYSのリーダーだった時代は模範にならなきゃというプレッシャーがあって、その頃の僕は映像作品が多くて板の上で初めてちゃんと表現したのはDステで、演技に関してすごく注意されたんです。それがずっと尾を引いてたんですが、D-BOYSを卒業してDステからも離れたら逆に気になりはじめて(笑)。久しぶりに出たのが去年の『駈けぬける風のように』で、キャラメルボックスさんという老舗の劇団との現場が、すごく楽しかったんです。そこからDステをもっと盛り上げていきたいと思うようになったんです。正直、秋人とかすごく羨ましい。僕らの時代は背中を見て付いていく先輩がいなかったけど、秋人は瀬戸のああいうところがいいなとか、遠藤のこういうところがダメだなとか、選び放題だから(笑)。

 

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ずっと役者であり続けるために

 

 

──瀬戸さんもメンバーが増えてラクになった部分もあるのでは?

 

瀬戸 いや、今のほうがプレッシャーですね。遠藤さんや加治(将樹)さんがいた頃は若手だったので甘えられましたけど、だんだん大人の立場になってきて、今回も座長ですから。でも今回は遠藤さんやズッキー(鈴木裕樹)さんがいますので。秋人に関しては『検察側の証人』の公演を手伝いに来ていたので、初めてという感覚がなくて。
宮崎 演出部の手伝いで、舞台組んだり転換したり、そういう仕事をやってました。当時、瀬戸くんとはゲームの話が多かったから、今回はちゃんと芝居の話を(笑)。
瀬戸 僕は秋人の声が好きで、オールマイティになんでも出来る役者だと思うので、そこは先輩として負けていられないなと。そういう気持ちがいい意味でDステの相乗効果になると思うし。舞台を踏んでる数は秋人のほうがすごいよね。去年は何本?
宮崎 11本出ました。
瀬戸・遠藤 すごい! 
瀬戸 舞台の経験値はケタ違いなので、教えてもらうことも沢山ありそうだね。

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──この公演を踏まえてそれぞれ目指すところは?
瀬戸 言葉にすると簡単ですが、「ずっと役者であり続ける」ということです。僕は27歳なんですが、このくらいの年齢って、役者を続けるか他の道にいくかという時期で、周りでやめていく人もいるなかで、今こうしていられるって奇跡的なことなんだと。これからも舞台だからとか映像だからとかってへんに固執せずに、役者を続けていきたいです。今年は舞台は『マーキュリー・ファー』に続き2本目ですが、また新たな経験が出来ると思うととても楽しみです。
──遠藤さんはその年齢を通り越しましたが、役者への覚悟は?
遠藤 覚悟入ってます(笑)。役者業は本当に面白いですね。僕も悩んだ時期はあって、それは今もですが、でもそれより何でもやってみようと。経験が少ない舞台の表現は自分には課題がすごく残って、いつも不完全燃焼で満足感がないんです。ただ今年5月に城山羊の会でやらせてもらって、ああいう表現も面白いなと。改めて演劇の幅の広さを感じたので、いろいろな舞台に出会いたいですね。
宮崎 僕は周りの方たちに「板の上にいるときが一番生き生きしてる」と言ってもらうので、今は少しでも舞台上にいたいです。去年はとにかく目まぐるしかったのですが、今年はちょっとゆっくり取り組めるようになったので、まずは目の前の作品を一生懸命にやるしかないです。今回、瀬戸さんと兄弟役と聞いて、「よーし」と思ったんですけど、『マーキュリー・ファー』の瀬戸さんを観て、ちょっとへこみました。でも頑張ります!
 

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_MG_9707遠藤・瀬戸・宮崎

 


せとこうじ○福岡県出身。主な出演作は、大河『江』(NHK)『眠れる森の熟女』(NHK)『ロストデイズ』『マザーゲーム~彼女たちの階級~』(TBS)大河ドラマ『花燃ゆ』(NHK)『玉音放送を作った男たち』(NHK)、映画は『わたしのハワイの歩きかた』、舞台は『八犬伝』『マーキュリー・ファー~MERCURY FUR~』など。Dステは『検察側の証人 ~麻布広尾町殺人事件~』『淋しいマグネット』などに出演。現在、『エイジハラスメント』(テレビ朝日)にレギュラー出演中。主演映画『合葬』が公開中。

 

 
みやざきしゅうと○東京都出身。舞台や映像で活躍中。出演作品は、朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』朗読劇『俺とおまえの夏の陣』、舞台は『東京喰種』、「弱虫ペダル」シリーズ、ミュージカル「薄桜鬼」シリーズ、「あの頃僕らはペニーレインで」、映画は今夏、『キリング・カリキュラム~人狼処刑ゲーム序章~』が公開された。

 

えんどうゆうや○神奈川県出身。00年に映画『ジュブナイル』で俳優デビュー。D-BOYSの初代リーダー。映画、ドラマ、舞台で活躍中。最近の出演作は、ドラマ『カサネ』(TMX)『テミスの求刑』(WOWOW)、映画は『永遠の0』『クローズEXPLODE』『ホットロード』『幻肢』『龍三と七人の子分達』、舞台は『SOLID』城山羊の会『仲直りするために果物を』など。Dステは『鴉~KARASU~10』から『駈けぬける風のように』まで6本に出演。映画『全開の唄』が10月3日より公開、『TRASH/トラッシュ』『ボクは坊さん。』の2本が10月24日に公開される。

 

 

 

〈公演情報〉
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Dステ17th『夕陽伝』

 

 

脚本◇末満健一 演出◇岡村俊一
出演◇瀬戸康史 宮崎秋人 小芝風花/鈴木裕樹
荒井敦史 池岡亮介 前山剛久 髙橋龍輝
中山義紘 三好大貴/遠藤雄弥 山本亨
●10月22日(木)~11月1日(日)東京・サンシャイン劇場
●11月21日(土)~11月22日(日)大阪・森ノ宮ピロティホール
〈料金〉¥7,800(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉ワタナベエンターテインメント 03-5410-1885(平日11:00~18:00)
 http://yuhiden.dstage.jp/

【取材・文/宮田華子 撮影/岩村美佳】
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