4歳から70代半までを演じ分ける! 『百年の秘密』の再演に挑む、ナイロン100℃ 犬山イヌコと峯村リエにインタビュー!

インタビュー
舞台
2018.2.28
(左から)峯村リエ、犬山イヌコ  (撮影:福岡諒祠)

(左から)峯村リエ、犬山イヌコ  (撮影:福岡諒祠)

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2018年、結成25周年を迎えるナイロン100℃が、その記念公演の第1弾として『百年の秘密』を再演する。初演は2012年、とある時代、とある場所、とある一族とその周囲の人々の“百年”を描いた、壮大でファンタジックな物語だ。主宰で作・演出を手がけるケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)が自ら「近年の劇団公演の中では抜きんでた一作、どうしても再演したかった」と公言している今作で、物語の軸になるふたりの女性を演じるのは劇団の看板女優でもある犬山イヌコ峯村リエ。巨大な楡の木が見守るベイカー家の屋敷を舞台に、さまざまな時代のさまざまなエピソードが時間を行ったり来たりしながら、切なさや笑いと共にドラマチックに繰り広げられていく。この物語の中でなんと4歳の少女から70代半ばまでの女性を演じ分けることになる犬山と峯村に、チラシやポスター用のヴィジュアル撮影の合間に今作への想いを語ってもらった。


――今回、ナイロン100℃の25周年の記念として、『百年の秘密』を再演すると聞いた時はどう思われましたか。

犬山 25周年っていったら、四半世紀じゃないですか! そりゃあ、大変なことですよ。

峯村 本当にね。この作品をやると聞いて、私は「えーっ!」て思いました。だって、初演はいろいろと大変だったじゃないですか。

犬山 そうね。「本当にあれをやるの?」って、わしも思った。

峯村 上演時間も長いですもんね。

――初演は、3時間25分でした。

犬山 だいぶ大作だったね。

峯村 ヘトヘトになった記憶があります。だからこそ、「あれをまた?」って。

犬山 初演から6年を経て、体力もなくなってきているというのにね。「今の自分にできるのかー?」って。

峯村 思いましたね。

――「もう一度やりたい」という気持ちはなかったですか?

峯村 私は若干、ありました。初演時に、後半部分は、もうすこし稽古場で繰り返し練り上げてみたかった気持ちもありましたので。

――どうしても初演の時はバタバタで始まっちゃったりもしますから。再演することで、リベンジできるということはあるかもしれないですね。

峯村 だけど今のところはもう、ほぼ忘れてる。

犬山 いや、本当に忘れてるよ。

峯村 でもむしろ、それで良かったよね。

犬山 確かにもう少し、試せるんじゃないかっていうシーンもあったので。だから今回やるからにはね……、やりますよ~!(笑)

犬山イヌコ

犬山イヌコ

峯村 私、これの初演の時、「セリフを覚えられない!」と思った記憶はそんなになくて。まあ、KERAさんの作品だから、基本的に慣れてはいるんですけど。

犬山 たとえば前回公演の『ちょっと、まってください』の時のような不条理なセリフではないから。突飛なことが起きるわけでもないし、いわゆる普通の人が喋る言葉ではあるからね。だから、役の気持ちのままできたというのが大きかったんじゃないかな。

峯村 そうそう。

犬山 だからこそ、あんなギリギリの状態でもできたんでしょう。あれがナンセンスものだったらきっと無理、無理(笑)。あと、ふたりのシーンが結構多かったから「大丈夫」って思えたんだと思う。切羽詰まると「やばし!」ってなっちゃうけど、この時は「大丈夫!」って思えた。それは覚えてます。

――それは犬山さんと峯村さん、おふたりだったからこそ。

犬山 そうですね。気持ちでやれば大丈夫って思ってましたね。

峯村 私、ひとつ、どうしても言いにくいセリフがあって。それがどのセリフだったかは忘れちゃったんですけどね。何度も繰り返して稽古しても、なかなか言えなくって。だけどある日、犬山さん演じるティルダのセリフをしっかり聞いてからなら、すんなり言えるんだってことに気が付いたの。ちゃんと、そういう風に書かれているんだなって思って。

――会話としてつながっていた。

峯村 そう。変に自分で必死に暗記して言おうとするよりも、相手の言葉をきちんと聞くということを、改めて気づかされた。

犬山 基本的に、お芝居って本当はそうなんだろうけど。でもKERAさんの場合は、たとえば前回の『ちょっと、まってください』だと、ちゃんと相手役のセリフを聞いていたら言えなくなるセリフがある。

峯村 そうそう!

犬山 人の話を100%聞いていたらダメなので、7割くらいで聞いていないといけないんです。

――それも難しそうですね。

犬山 それが、ある時は3割くらいでなきゃいけない時とか、聞いているようで聞いてちゃいけないとか、いろいろあるので。そういう意味では『百年の秘密』はすごく真っ当なお芝居だというか。見せ方としてはKERAさんならではのものが大きいですけど、セリフのやりとりとしては、異常なやりとりは。

峯村 まったくなかったですね。

犬山 ま、異常な人間もちょっとは出てくるけどもね。(みのすけ演じる)チャドとか(笑)。でも最終的には、それも個性だから。

峯村 4歳の子の役をやる時でさえ、ちゃんと感情の流れがあったよね。

犬山 うんうん。それに、4歳のシーンは楽しかったな。

峯村 うん。私も個人的には楽しかった。でも、あの場面では私が先に舞台上に登場するものだから。

犬山 ザワザワしていたね。

峯村 あちこちから失笑、みたいな(笑)。

峯村リエ

峯村リエ

――その前の場面ではお婆さんだったりするから、余計にギャップがすごかったんですよ。

峯村 ああー。そうか。

犬山 「どうしたの?」って思うんじゃない? 「なんだあ?」って(笑)。

峯村 私としては「ホント、ごめんなさい」って思いながら毎回舞台に出て行っていました。

――演じる年齢も徐々に年をとるのではなく、時間の経過が行ったり来たりするから。

犬山 着替えが大変だったよね。

峯村 そう、でも私は早替わりはなかったんですけど、犬山さんは。

犬山 そうだ、お婆さんへの早替えがあった。

峯村 チャドと二人のシーンがあったあと、またすぐ戻ったりして。

――他の方に比べて、特におふたりが大変そうでした。

犬山 裏でゆっくりしている時間はなかったと思われます(笑)。

峯村 そうだよね。髪型も全部変えていたからね。

犬山 そうだね。早替えじゃなくても、かつらを変えたらすぐ出る!みたいな感じだった。

――特に記憶に残っている、楽しいエピソードって何かありますか。

犬山 これって、地方公演はどこに行けましたかね?

峯村 北九州、小倉に行った気がするな(初演は他に、大阪、神奈川、新潟公演あり)。そういえば地方公演の最後の日、私がかなり疲れてて、犬山さんに「今日で終わって良かったよー」って言ったら、「このあと一週間あるって言われたらおかしくなりそう」って言われたのを覚えてる。ああ、犬山さんも同じなんだな~って思ったの。

――それほど、大変だったと。

犬山 あれ? でも今、楽しかったことを聞かれてたんじゃなかったっけ。

峯村 あっ、ゴメンナサイ!(笑) でも、お芝居自体は本当に楽しかったんですよ。

犬山 そうね、でもおもしろシーンみたいなのはそんなにないから。

犬山イヌコ

犬山イヌコ

峯村 そういえば、オープニングでみんなで、長田(奈麻)さんのナレーションに合わせて、ちょっとした動きをする場面があって。

犬山 ああ~、あった、あった。

峯村 それの練習が、私は面白かったな。

――ちょっとした、振付みたいな。

峯村 そう!

犬山 みんな解釈がバラバラだからね。

峯村 腕を動かすだけでも、人によって少し角度が違ったりするので。それを合わせるのが面白かったんです。みんなで喧々諤々とね。

犬山 ふふふ。私は、廣川(三憲)さんが松永(玲子)を襲うシーンがあって、自分は出番前だったから舞台袖にいたんだけど、それが変に生々しくて。「ふわぁぁっ?」とか言いながら見てた。

峯村 それ、たぶん4歳のシーンの前だと思う。私も舞台袖にいたもの。

犬山 いた?

峯村 買い物袋を持って。

犬山 ああ、あの場面の前か。生々しかったよね(笑)。

峯村 直視できなかった(笑)。

――襲いかかるというより、迫ってくるというか言い寄るというか。

峯村 そうそうそう。

犬山 その迫り具合が異常に生々しかったっていうのを今、思い出しました。

峯村 だけどホント、大変なことだらけだったけど今考えると、それも全部面白かったな~って思えますね。

――この作品は女性が主人公で、おふたりだけの会話のシーンも多くて。よく言われることですけれど、KERAさんが書くセリフって、どうしてこんなに女性の気持ちがわかるんだろうって思うリアルさがあったりしますよね。おふたりもセリフをしゃべっていて、そう思われることもあるんでしょうか。

峯村 この作品に限らず『フローズンビーチ』とか、女性のセリフや感情表現の仕方は本当にうまいこと書くなあっていつも思います。

犬山 うん。しかも、よくある感じじゃないんですよ。もう、これまでに大量のセリフを書いてきているのに、ああやっていろいろな言い回しができるんですからね。

峯村 今回のも、KERAさんは私たちふたりにあて書きしてくださっているじゃないですか。だから私の言い癖みたいなものもしっかりセリフに入っていたりするので、やっぱりそれで言いやすいんだと思います。

峯村リエ

峯村リエ

――ふだんからみなさんのことを観察されているんでしょうか。

峯村 どうなんだろうなあ。でも昔から、KERAさんは「女の人って面白い、面白い」って言っていましたね。いきなり、突飛なことを書いても女の人なら成立するからって。

犬山 そうそう。だから女性は書きやすい、面白いって言ってました。昔はよく、KERAさんはファミレスで原稿を書いていたんだけど、周りのお客さんの会話を聞いていたらしいですよ。みんな、意外ととんでもないことを言ってたりするみたいで。

峯村 耳、いいもんね、KERAさん。

犬山 遠くでKERAさんのことを言ってると「なに、なに?」って寄って来る。

峯村 そうそう!(笑)

犬山 地獄耳なのよね(笑)。

――では読者の皆様へ向けて、おふたりからお誘いメッセージをいただけますか。

峯村 「だまされたぁ!」と思って、ぜひ劇場まで来て下さい。

犬山 演劇は観ようと思わないと観れないものだし、一生のうちで何本観られるかっていうのもあるじゃないですか。そんな中、これは観ておいてほしい作品だなぁって思いますね。

峯村 そうね、なんとかして観てほしいなあ。

犬山 きっと、もう二度とやらないですから。だって、今後このメンバーではできないでしょ。やるとしたらキャスト総とっかえで新しい感じでやらないことには。

峯村 無理だよね。あと、お芝居に興味がある若い人たち、学生さんにもいいんじゃないですか。それでこの作品をいつかやったりしていただければ、うれしいです。

犬山 もし「ナイロン100℃のナンセンス作品はちょっと苦手なんです」ってタイプの人でも、これは一番観やすいというか、間口の広い作品ではあるので。「知り合いとか誘いづらいぜ、ナイロン」みたいな人でも、親とか親戚を誘っても、これなら大丈夫。

峯村 そうそう、私もこれ、すごく誘いやすい。「ちょっと上演時間は長いんだけど」って言えば。

犬山 「長い分、お得だ!」と思っていただければ。毎分、いくらだという計算をしたら。

――より、お得感が出る、と(笑)。

峯村 そうだ、安いよ!

犬山 そうですよ、1時間半で同じチケット代の芝居、いくらでもありますからね。分単位、半額。

峯村 半額芝居!(笑)

犬山 なんか急に安っぽい感じになっちゃった(笑)。でも、本当にかなり濃厚ですから!

峯村 私たちふたりに限らず、周りの人たちも一緒に年をとっていくので、いろいろな人の人生が観られるんですよね。

犬山 そうなの。わしらだけじゃないところが、KERAさんの台本の素晴らしいところで。その人たちのこともきっちり書き込まれているから、長くなるわけなんだけどね。でもその分、分厚い、奥行きのある芝居になっているんです。

峯村 いや、本当にそう! きっと観終わったあとに重厚な本を読み終わったり、映画を観終わったりして「はぁ~っ」てなるのと同じ気持ちになると思います。

犬山 あと、特に東京公演は開演時間が昼は13時だったり14時だったり、夜は18時半だったり19時だったりするので、どうか間違えないように。確認してから来てください。

峯村 そう、オープニングからとてもいい場面なので、絶対に遅刻しないでほしいな。

犬山 いっそ、オープニングが一番の見どころと言ってもいいのでね!(笑)

峯村 どうか、お願いします!!(笑)

(左から)峯村リエ、犬山イヌコ

(左から)峯村リエ、犬山イヌコ

取材・文=田中里津子  撮影=福岡諒祠

公演情報
ナイロン100℃
 
<4月公演>
ナイロン100℃ 45th SESSION 『百年の秘密』
■作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
■出演:
犬山イヌコ 峯村リエ
みのすけ 大倉孝二 松永玲子 村岡希美 長田奈麻 廣川三憲 安澤千草 藤田秀世
猪俣三四郎 菊池明明 小園茉奈 木乃江祐希 伊与勢我無/
萩原聖人 泉澤祐希 伊藤梨沙子 山西 惇
■公演日程:
【東京公演】2018年4月 下北沢 本多劇場
※5月兵庫、豊橋、松本公演
 
<7月公演>
ナイロン100℃ 46th SESSION 『睾丸』(仮題)
■作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
■出演:
三宅弘城 みのすけ
新谷真弓 廣川三憲 長田奈麻 喜安浩平 吉増裕士
眼 鏡太郎 皆戸麻衣 菊池明明 森田甘路 大石将弘/
坂井真紀 根本宗子 安井順平 赤堀雅秋
■公演日程:
【東京公演】2018年7月 池袋 東京芸術劇場 シアターウエスト 他
 
■企画・製作:シリーウォーク キューブ
■問い合わせ:キューブ 03-5485-2252(平日12時~18時)
■詳細 キューブHP ⇒  http://www.cubeinc.co.jp/
 
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