Rhythmic Toy World、熱狂と祝福に包まれたO-EASTから新たなる航海へ
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
転生?なにそれ美味しいの?ツアー 2018.1.26 TSUTAYA O-EAST
2009年、結成。2010年、1stデモ発売、そして現体制に――。
アンコール冒頭、フロア上手/下手側のスクリーンにはバンドの歴史を遡るようなムービー。その最後、大きな画面上には「今春、メジャーデビュー!!!」という文字が映された。フロアから湧き上がる歓声、ステージ上にはスタンバイ済みのメンバーの姿。内田 直孝(Vo/Gt)、須藤 憲太郎(Ba)、岸 明平(Gt)、磯村 貴宏(Dr)の4人が向き合った状態で鳴らし始め、オーディエンスがすぐさま「ワン、ツー!」と声を張り上げる。そうして始まったのは「さなぎ」。デビュー作である1stミニアルバム『軌道上に不備は無し』のラストを飾り、インディーズ時代のデモにも収録されていたこの曲は、彼らにとって始まりの曲だった。
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
既に発表されているように、今春、ビクターエンタテインメント内のレーベル・BLACK SHEEP RECORDSよりメジャーデビューするRhythmic Toy World。そのことを発表したこの日のライブ、『転生?なにそれ美味しいの?ツアー』最終公演は、今考えると、新たなる船出を前に4人がファンに改めて伝えたいこと――“変わらず近くにいるよ”“だからまだまだ一緒にバカやろう”というメッセージ――が形になったようなライブだった。
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
因みにツアータイトルにある“転生?なにそれ美味しいの?”とは、最新アルバム『TALENT』のリード曲「JIGOKU」から引用したもの。この日の1曲目はまさにその「JIGOKU」で、早速、みんなで声を揃えその部分の歌詞を合唱した。ステージに向けた視線をブラすことなく、たくさんの人がうわーっと前へ押し寄せていく光景が眩しい。続く「フラッシュバック」は多種のビートを行き来する展開がスリリングな一曲。虹色の光の下、同期によって華やかさの増したアンサンブルが響いた「未来ワンダー」は、内田が大きく身振り手振りしながら唄う様子も目を引いた。序盤は『TALENT』に収録されている比較的新しい曲が多かったにもかかわらず、手拍子も掛け声もシンガロングもバッチリなのがリズミックファンのすごいところ。この日を迎えるまでの間に音源を聴きながら想像を巡らせてきたんだろうなあ、そうやってライブを楽しみに待っていたんだろうなあ、ということが容易に想像できるから堪らない。
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
「メインアクト」では内田が前方のオーディエンスとハイタッチを交わしたかと思えば、突然の「ウルトラソウル!」「ハイッ!」で締め。アンコールで恒例になっている「ASOBOYA」コールから演奏を始めたい、という須藤のリクエストが実現した「Team B」では、須藤自ら前方に躍り出てのイントロでも大きな歓声が起こった。天を仰ぎながらギターを掻き鳴らす岸。オーディエンスの様子を確認しながら笑顔を見せる磯村。演奏しながら追いかけっこし始めた内田と須藤。それぞれが充実の表情を浮かべるなか、「いろはにほへと」では、“いつも自分のことを心配している母に、こんなたくさんバカできる仲間ができたっていうのを見せたい”ということで「あ、あ、ありがとう/やすえ やすえ~♪」と内田・母の名前をみんなで唄う。こんなコール&レスポンス、前代未聞だ。このようにして、やたらハチャメチャでかなり無茶苦茶、でも楽しいからいっか、みたいな空気に包まれていくO-EAST。そんななか、須藤が「あなたに出会えて」開始前に叫んだ「あなたに出会えて本当によかった! これからもよろしくね!」という言葉、今思えば単なる曲紹介ではなく、メジャーデビューを踏まえたうえでの発言だったのだろう。曲が進むにつれて熱量を増していく内田のボーカルからも気持ちの昂ぶりが感じられてグッときた。
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
「デカいステージも気持ちいいけど、泥臭い、距離の近いライブが好き」と語りながら、内田がフロア真ん中にある柵に腰掛け、“今日だけしかないステージ”の上で唄った「ライブハウス」。さらに、「以前フェスでステージダイブをしたらめちゃくちゃ怒られた」「その時“そっか、俺らのワンマンじゃないから怒られたのか”と解釈した」という話からの「とおりゃんせ」(内田がだけではなく、ちゃっかり岸も客席へダイブ)。「終末のカンヴァセーション」「8535」「エンナ」といった初期曲をじっくり聴かせるゾーンを終えたあと、オーディエンスへ「お前らのためだからな!」と伝えていたこと、そして実際その3曲でもはや悲鳴に近い喜びの声が上がっていたことも印象的だった。
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
全体として、自分たちのやりたいことも、自分たちを慕う人から求められているであろうことも、思いっきりやっていくようなテンションがあったこの日。後のMCでは、昔からこのバンドを支えてくれている大切な人がリズミックのことを“みんなの夢を乗せて旅する宇宙船”と喩えるのだという話もしていたが、まさにそれが体現されたステージだったように思う。奔放な自分たちが描く青写真も、誰かが心の内に描いた願いも、大胆に叶え、輝かせてみせる。持ち前の天真爛漫さをとっておきの燃料に替えながら、ぶっちぎりの勢いで、しかし誰も置いていかずに進んでいく。Rhythmic Toy Worldはそういうバンドなのだ。また、バラードゾーンに関して補足すると、このようなポイントが設けられたのは、昨年夏に行った、バンドの二面性に焦点を当てた東名阪ワンマン(『“超・リズミック祭2017”「ジキルとハイド ~NO RHYTHMIC NO LIFE~」』)で手応えを感じたからだろう。情感溢れる演奏が肝となるこのパートを挟むことによって、セットリストの幅が広がり、ライブ全体の起承転結がより鮮やかになっていた。
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
その後は、3~4月に開催する東名阪ワンマンの告知でオーディエンスを喜ばせてから最新曲「僕の声」を披露し、「輝きだす」、そして「大丈夫」で本編を終了。冒頭に書いたように、アンコールでは例の発表とともに「さなぎ」を届けた。そうしてこの日の最後に演奏したのは「フレフレ」。内田の弾き語りにバンドサウンドが加わり、さらにオーディエンスの歌声も加わり、最終的にはもうみんなで唄っていく。「今日しかできないこと、今日だからやりたいこと!」と内田がメンバー一人ひとりの名前を呼び、改めて紹介したラストシーンも感動的だった。
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
「どうせ旅するんなら行けるところまで思いっきり旅した方が楽しいなと思ったの。だからこれからもお前らを乗せていろいろなところに旅していくよ」「これからまた長い長い、新しい旅に出ます。今日はその、出航記念日!」――それはまるで甲板上で盃を交わすクルー同士のように。終演後のステージ上には、互いに拳を突き合わせるメンバーの姿があった。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=西槇太一
Rhythmic Toy World 撮影=西槇太一
1.JIGOKU
2.フラッシュバック
3.未来ワンダー
4.いつか
5.ドンシンフィー
6.メインアクト
7.Team B
8.波紋シンドローム
9.あなたに出会えて
10.いろはにほへと
11.ミーン宣言
12.ライブハウス
13.とおりゃんせ
14.終末のカンヴァセーション
15.8535
16.エンナ
17.僕の声
18.輝きだす
19.大丈夫
[ENCORE]
20.さなぎ
21.フレフレ
〜『弱虫ペダル GLORY LINE』OPテーマ「僕の声」リリースツアー〜