哀川翔主演ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』スタンディングオベーションの東京公演初日レポート

レポート
舞台
2018.3.7
ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

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昨年12月にKAAT神奈川芸術劇場で開幕し、富山、長野、大阪、名古屋と、ツアー公演を回ってきたミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』が、3月2日、赤坂ACTシアターにて東京凱旋公演の初日を迎えた。

『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』は、2015年より2年ぶりの再演となる日本発のオリジナルミュージカル。初演では、原案・作詞・演出を手がけるラサール石井が、第23回 読売演劇大賞 優秀演出家賞を受賞した。脚本は、倉持裕(劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」)。随所に著名ミュージカルのパロディも覗かせる作曲は、玉麻尚一(音楽監督も兼ねる)。振付は川崎悦子。キャストには、哀川翔相葉裕樹橋本じゅん青木さやか池田純矢大空ゆうひ中川晃教らが名を連ねる。スタンディングオベーションに沸いた東京公演の初日の模様をレポートする。上演時間は、2時間30分。途中には、20分の休憩がある。

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

名作ミュージカルの裏を描くミュージカル

物語の舞台は、地方の古い劇場。ある78歳の大御所俳優が、30年以上主演を務めつづけたミュージカル『ドルガンチェの馬』の、1001回目の公演の仕込みからバラシまでの“舞台裏”を軸に描く。ちなみに劇中劇の『ドルガンチェの馬』は、架空のミュージカル。タイトルの看板が下りてきて「あれ?」と思う方もいるかもしれないが、『ラ・マンチャの男』とはあくまで別物!

<あらすじ>
ミュージカル『ドルガンチェの馬』は、大御所俳優の年齢も考慮に、1000回目の公演をきっかけに、華々しく終了するはずだった。しかし、主演俳優の鶴の一声で1001回目を地方の会館で上演することになり、てんやわんや。舞台のセットは廃棄済み、スタッフも足りず、キャストのスケジュールも押さえていない……。さらに、舞台の総指揮を執るのはこの作品が初めて、という新人舞台監督。とんでもない条件の中でもスタッフたちは必死に幕を開けようと奮闘する。幸か不幸か、チケットは完売、つまり観客が待っている。果たして幕は無事に開けられるのか。そして主演俳優が1001回目の上演にこだわった理由とは……?
 

『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』では哀川を筆頭に、ミュージカルや宝塚、テレビやお笑いなど、様々なバックグラウンドをもつ豪華キャストが、それぞれに個性的なキャラクターを演じる。その顔ぶれの豪華さを象徴するように、劇場内の階段には、所せましとスタンド花が並ぶ。

オープニングの時点では、ステージ上にはがらんとした、まだ何も始まっていない素舞台の状態。劇場の雑用係・熊川義男(中川晃教)のリードにより、赤坂ACTシアターの客席は、栃木県のさびれた劇場「黎明会館」の客席に一変。さらに夢のように華やかなミュージカルの世界をみせてくれた。礼儀正しくもお茶目な熊川の、ガンコなくらいの劇場への愛と魂のこもった歌声は、ラストへの伏線となる。

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

新米舞台監督の新藤祐介を演じるのは、相葉裕樹。これが初めての舞台監督作品という設定なので、仕込み前の舞台では、オロオロしっぱなしで、ベテラン勢に振り回され続ける。しかし話がすすむにつれて、その佇まいは少しずつ変わっていく。フレッシュな演技と、劇中のナンバー、そして生バンドが生むグルーブ感もあいまって、新藤の成長がとても自然に受け止められた。

個性的なメンバーを、親しみやすさとカリスマ性で仕切ってきたのが、この公演で引退を決めている先輩舞台監督の加賀美賢治。演じるのは、哀川翔。新米の新藤に贈る言葉のひとつひとつから溢れるアニキっぷりは、唯一無二。本作の振り付けを手掛けるのが、一世風靡セピア「前略、道の上より」で振付家デビューをたした川崎悦子とあり、カーテンコールまで場内は大いに沸いた。

コメディからシリアスまで、どんなタイプの作品でも独自の魅力で輝き続ける大空ゆうひは、本作でもその存在感を存分に発揮。女優であり、加賀美(哀川)の元妻・真昼野ひかる役を、凛と、そしてしなやかに演じる。煌びやかなレイカーテンを背に歌い踊るシーンでは、圧巻のステージングに目を奪われる。

ベテラン大道具・久米長一郎を演じる橋本じゅんは、煽り上手! 隙あらば観客を笑いに巻き込む。さらに、おかしみを消さずに涙も誘う。2人の大道具仲間(芋洗坂係長オレノグラフィティ)をあわせた3人での登場シーンも必見だ。

池田純矢(地元のボランティアスタッフ・佐野慎也役)は、再演となる今回からの参加メンバーだが、共演者たちとの息もぴったりで歌も踊りも伸びやか。佐野もまた新藤とともに、この作品の中で、成長をみせる青年のひとり。

青木さやか(制作・本庄まさこ)のキレ芸は健在。「チケットを売ったということは、お客さんに約束をしたってことです。いい芝居をしますって!」と啖呵を切るシーンにスカっとさせられる。終演後のアナウンスもお聞き逃しなく!

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

今拓哉は、老俳優・小山田丈太郎役を、ひとり別次元の迫真の演技で熱演。自身のミュージカル作品でのキャリアを乱用(?)し、幾度も爆笑をさらった。

クライマックスには、客席の観客をまるごと抱き込むような演出がある。そこにラサール石井の徹底した、サービス精神と舞台愛を感じずにはいられない。しかしラサールは、この舞台に一切登場しない。そこであらためて、今、目の前で展開される舞台の世界にも、やはりバックステージがあることに気づかされた。東京凱旋公演の初日は、全キャストと全スタッフ、そして劇場スタッフから観客である自分たちにも贈りあうような、大きな拍手で締めくくられた。

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』は、2018年3月2日(金)から12日(月)まで、赤坂ACTシアターにて上演。

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

取材・文=塚田史香

公演情報

ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

■日時:2018年3月2日(金)~3月12日(月)
■会場:TBS 赤坂ACTシアター

脚本:倉持 裕
原案・作詞・演出:ラサール石井
作曲・音楽監督:玉麻尚一
振付:川崎悦子
■出演:哀川翔、相葉裕樹、橋本じゅん、青木さやか、池田純矢、大空ゆうひ、中川晃教ほか
■主催:石井光三オフィス/TBSラジオ/KAAT神奈川芸術劇場
■公式サイト:http://www.m-headsup.com/
■公式ツイッター @KAATHEADSUP
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