桜咲くブリッツでthe peggies、鮮やかな開花宣言 過去最大規模のツアーファイナルをレポート

レポート
音楽
2018.3.29
the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

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the peggies super boy ! super girl !! tour 2018 ~SUPERMARKET TRIP !!!~
2018.3.25  マイナビBLITZ赤坂

メジャーデビューからもうすぐ1年が経とうという春の日。咲き誇るしだれ桜の下、マイナビBLITZ赤坂で、the peggiesがツアーファイナルを迎えた。約1ヶ月にわたり10公演というツアー規模は過去最長、この日の会場のキャパも過去最大。筆者に“化けた”と感じさせてくれた最新ミニアルバム『super boy! super girl!!』の楽曲たちが、ライブにおいてはどのように作用するのか。同作を経た彼女たちは一体どんなライブをするようになったのか。春の訪れとそこに待つ新生活への期待やドキドキ――そういった類の感情にもどこか通じる心持ちで開演を待つ。

the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

開演時刻になると、いきなり頭上のミラーボールが光の粒を撒き散らし、「LOVE in the TOKYO[ぺぺぺぺ remix]」のダンスビートに合わせて登場した3人が位置についたところで、一瞬の暗転。照明が再点灯すると、バッチリ決めポーズでスタンバイ――という、遊び心ある出だしに場内がまず沸く。真っ向勝負の8ビートにみずみずしい歌声が弾んでライブの開幕を告げた「ドリーミージャーニー」、淡い照明のもと、恋する女子の心情を北澤ゆうほ(Vo/Gt)がちょっと台詞っぽく歌い回す「カウンター!」、さらには前述の最新作でも冒頭を飾る、勇ましいビートと強力なメロディを持った「GLORY」、変則的でエモーショナルな曲調にポップなサビが映え、ペギーズの世界がより深度を増す「JAM」と、簡単なあいさつを挟んだだけで次々と楽曲を繰り出していった。

the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

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序盤の構成から見えてきたのは、最新ミニアルバムの収録曲を全て演奏しつつ、現時点でのペギーズの魅力を最大限、しかも多角的に伝えきろうという姿勢だ。言葉を変えれば、これまで出会ってきたリスナーと、彼女たちが“のびしろ”と表現する初見のファン、そのどちらにも最大限楽しんでもらうにはどうすればいいか?ということを念頭に置いていたということ。その目論見は、オーディエンスの反応がどんどん増していく様子から見ても、成功したといっていいだろう。
スリーピースならではのソリッドなバンド感で攻めながらも、随所に発信者が女子だからこそ描けるキラキラした情景、成し得る表現を巧みに織り込むあたり、自らがガールズバンドであるという事実とその強みを自覚し、これまで以上にしっかりと打ち出せている様子。大貫みく(Dr)が表情や仕草でも盛り上げながらキビキビとたくましいプレイで弾き出すビートに、クールな佇まいから石渡マキコ(Ba)が放つやたらと迫力ある重低音が絡みあう。その上で北澤のときに溌剌としたり小悪魔的だったり、ときには儚げでもある歌声と、軽やかなギターの音色が踊る。

the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

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「わたしたちペギーズが、いかに“super girl”であるかを証明したいと思います」(北澤)とアルバム/ツアータイトルに掛けて宣言した後のブロックは、まず、地球上すべての恋するボーイズ&ガールズ(“元”も含むとのこと)に捧げる――と「ボーイミーツガール」から。キャッチーかつダンサブルな「恋の呪い」の高速リフを、北澤が見事に弾きこなして大きな歓声を呼んだかと思えば、一転してセンチメンタルな心象が描かれる「ずっと」は、しっとりじっくり聴かせてみせた。で、気づけばこの3曲で恋の始まりから最中、終わりまでのストーリーが完成していたという、なかなかニクい演出である。また、中盤に設けられたリズム隊の2人によるだいぶコミカルなMCコーナーも良いアクセントになっていた。なお、そこで語られたツアーのトピックスは、仙台のはらこ飯が大変美味しかったが、帰京後に車から降りたら北澤の洋服がご飯粒まみれだった(石渡)、大学を卒業して音楽社会人としてペギーズに永久就職したタイミングで“マイナビ”BLITZに立ててよかった(大貫)、今日はドライヤーを忘れて困ったが、とっさにトイレに備えられたタオルジェットで前髪を作った(北澤)、というもの。

the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

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すっかりライブアレンジも板について不動のエース感がある「グライダー」で折り返しを迎えると、曲中で<僕らを見つけてくれたあの人>と北澤が指し示した客席からは、一層大きなリアクションがステージ上に送られるようになった。ドラムソロから突入し、イントロのリフをベースが担ったミニアルバムのリード曲「ネバーランド」、厚みのある演奏と表情豊かなボーカルが見事だったのは「遠距離恋愛」。冬に始まって春を迎えたこのツアーで、季節をもう一個超えて夏の気分に、と始まった「ちゅるりらサマフィッシュ」では、ハンドマイクで最前列まで歩み出た北澤が、コール&レスポンスとメンバー紹介をごちゃ混ぜにしたフリーダムかつ愉しい演出で、ラストスパートに拍車をかける。

the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

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モータウン風のリズムがチアフルな空気を生み出した「I 御中~文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。~」で本編は終了。アンコールに応えて再登場すると、最新作からの「ハートビート」、そして今の彼女たちを形作る上でターニングポイントであったという楽曲「BABY!」を披露した。2曲ともに巻き起こった場内からのシンガロングに、ステージ上の3人は終始晴れやかな表情で応え、最後は一本締めでフィニッシュ。全16曲の中に様々な表情やアプローチ、チャレンジングな姿勢がいっぱいに詰まった、見応えたっぷりの2時間であった。

the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

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自分が考えることは、リスナーの一人ひとりとそんなに違わなくて、弱かったりもする。たまたまステージに立って演奏して歌を歌うことができている以外は、みんなと一緒なんだ。だから自分の書いた曲がみんなの曲になればいいなと思って曲を書いているし、これからも書いていく。そのために、もっと人間的にも成長をしていきたいと感じたツアーだった――この日、北澤はそう語っていた。

the peggies 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

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「みんなの曲を書きたい」という意識は、かねてより普遍的であろうとしているペギーズの音楽性とイコールに違いない。それをまっすぐで等身大の言葉として口にした彼女の心境の変化はきっと、バンドそのものにもステージ全体にも波及していた。ライブ全体のテンポ感も向上していたし、メンバー同士、バンドとオーディエンスのボルテージの上がり方が、これまでよりずっと一体感のあるものに感じられたのだ。加えて、この方向で精度を高めていけば、もっともっとすごい景色が見られるんじゃないか?とも予感させてくれた。

メジャーデビューからもうすぐ1年。次なるツアーと自主企画もこの日発表されたし、まだ見ぬ新曲にも期待したい。そう、ペギーズ自身もまた、まだまだ“のびしろ”いっぱいだ。


取材・文=風間大洋 撮影=Wataru Nishida(WATAROCK) 、Amiri Kawabe(WATAROCK)

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