相葉裕樹にインタビュー「どストレートの王道ラブコメでキュンとさせたい」ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』
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相葉裕樹
元宝塚歌劇団雪組トップスターの早霧せいなが、退団後初めて挑む作品・ミュージカル『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』が2018年5月から大阪で、6月には東京で上演される。1981年にブロードウェイで上演されトニー賞4冠に輝いた本作は、才気と美貌を兼ね備え、その年最も輝いた女性=ウーマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれた女性ニュースキャスターのテス(早霧)が突然恋に落ち、仕事や家庭の問題に直面するなかで、女性の本当の幸せを考えるラブコメディだ。
本作でテスが恋に落ちる相手・風刺漫画作家のサムを演じるのは相葉裕樹。2004年に映画デビューし俳優活動をスタート、着々とキャリアを重ねて、今は『レ・ミゼラブル』などの大作ミュージカルのメインキャストに名を連ねる若手実力派俳優だ。相葉に本作の魅力をたっぷり語ってもらった。
ーー稽古は順調ですか?
率直に言うと、難しいです。昔のアメリカの楽曲なので横揺れのスウィングが多く、歌い慣れていない曲が多いんです。あと、音域の調整もまだ完璧とは言えないレベルなので「立ち稽古になってから決めていこう。今はとりあえずメロディだけ覚えておいて!」と言われています。全部の歌のキーが僕にとって低く、また、優しく流れるように歌うことが本当に難しいものだなと実感しています。
相葉裕樹
ーー歌の大変さが伝わってきます。脚本を読んでみての感想は?
「ザ・ラブコメディ」ですね。「好き」「愛している」といった言葉が随所にでてきます。歌の中にもあります。王道をどストレートで投げ込んでくる、そんな感じの作品だと思います。僕にとってはすごく新鮮です。あまりこういう作品に触れてこなかったので、まだちょっと照れくさいですが、照れくさくなくできるようにしないと。
ーー今回相葉さんが演じるサムは新聞に風刺漫画を描く人物ですが……。この作品そのものがまるで漫画のように楽しいですね。
確かに漫画チックなところがたくさんありますね。一曲の中で「あなた、最低!」から「好きかも!」って気持ちが急激に変わったり、話の展開も「それ、嘘でしょ!?」と突っ込みたくなるようなこともあります。王道のラブコメだからこそ許される「待ってました!」と言いたくなるようなことを気持ちよくやってくれるミュージカル。まるで歌舞伎の見得を切るような王道のラブコメです。「ここはキュンとしていいところだよ」って分かりやすく教えてくれる感じもします。
相葉裕樹
ーーラブコメって感情をオープンにしやすい外国人にとっては何の違和感もなさそうですが、日本人がそれをやるということに何かハードルを感じてしまうんです。その辺りはどう思われますか?
観る側も最初は「やだ、照れる」って思うかもしれませんが……。あれ?それは僕だけか(笑)。僕はニヤニヤしちゃいますね。本番では心が固まっているので大丈夫ですが、稽古場の段階がいちばん照れてしまいます。お互いを探り合っている時間、いろいろ固まっていない頃の稽古、この空気に慣れるまでが大変だと思います。
一方で演じる僕らがやりすぎてしまうと、どんどん話がクサくなるタイプの作品だと思うので、演じながら生まれてくる自然な感情を自分がキャッチし、そして演者同士お互いにキャッチボールしていきながら役を深めていきたいですね。
相葉裕樹
ーーテス役の早霧さんとは初共演となりますが、相葉さんからみた早霧さんの印象は?
以前、早霧さんのコンサートを見せていただいたんですが、ものすごいスターオーラを放っていて「これがトップスターの貫禄なのか」と思いました。初めてきちんとお話しさせていただいた時、写真ではキリッとして、綺麗でカッコイイという印象でしたが、「物腰の柔らかい方なんだ」とギャップに驚きました。綺麗な人ってどこか強さや怖さを感じることが多いと思うのですが、早霧さんは女性らしい柔らかさをお持ちで「仲良くしていただきたいな」と思いました。
ーー早霧さんは宝塚退団後初のミュージカル。周りを男性に囲まれるという新鮮な環境となりますので、ここは相葉さんがリードしてあげないと(笑)! 夫婦役でもありますし。
もうとんでもないです(照笑)。でも、二人の役がいちばん大変なことになる作品ですので、お互いを支え合いながらやっていきたいです。そういうところから生まれてくる何かが夫婦役にも活かされていくのかもしれません。
相葉裕樹
ーーところで、相葉さんが思う「ニュースキャスター」ってどのようなイメージですか?
やはりきっちりしているイメージがありますよね。朝早く起きて、寝るのも早くて、いつも時間通りに動いていて、もし帯番組を持っていたらそれが毎日じゃないですか。自分のルーティーンを崩されるのが嫌で仕事が第一。それをやり続ける精神力ってすごいと思います。
ーーどこか舞台上演中の役者さんに近いものを感じますね。
そうですね。でも舞台って終わりがあるじゃないですか。スケジュールを見れば「ここが千秋楽で、次の舞台稽古はこの日からスタートだから、ここからここまでは休めるな」って予測ができる。でもニュース番組って最終回と降板がない限り永久に続くと思うんです。それが当たり前となっているからそういう意味では役者に近いのかもしれませんが、プライベートの時間ってあまりないかもしれないですね。
まつ毛が長いですねー羨ましい!
ーー早霧さんが演じる「テス」もそんなキャラクターなんですか?
はい。仕事はバリバリやっていますが、お手伝いさんが家事全般をしてくれるので自分自身は料理の一つもできない。とにかく仕事優先でサムとの時間も合わない。そんな女性がサムと結婚するんですからそりゃもう大変ですよ。僕はサムに心から共感します。一目惚れは仕方がないとしても、僕なら結婚しないと思います。生活スタイル云々ではなく、二人の時間が合わないのが致命的です。
ーーテスに一目惚れしたサムですが、彼女のどこに惚れてしまったと思いますか?
顔とかビジュアルならそもそも番組に出ている段階で惚れていますよね(笑)。それなのに、あることがきっかけで彼女を尋ねていってそのときに「はっ……」となる。そこの演じ方が心情的に難しいです。台詞で「実際に思っていたのよりずっと素敵な人だ」とサムは言いますが、じゃあ以前はどう思っていたんだと(笑)。
たぶん映像を観ているときから気にはなっていたと思います。それでないと辻褄が合わないから。見た目は好きだけどなんだかムカつく、とか。きっと何かが心にひっかかっていたんでしょうね。
相葉裕樹
ーーそんなサムというキャラクターをどのように演じたいと思っていますか?
ニュートラルな立場でありたいと思っています。サムというキャラクターはごく一般的な感覚を持っている男。ただ恋愛に臆病になっていた時期があったけど、テスに一目惚れして恋に落ちる。そこから始まる結婚生活から見えてくる彼の結婚観やサムの気持ちに共感できました。周りのキャラクターが皆個性豊かなんですが、サムは唯一「普通の人」として俯瞰で物事を見ている。周りの人に振り回されることにはなりそうですけど、基本的な立ち位置はニュートラルでいたいと思います。
ーー今回共演するキャストの中で特に気になる方はいらっしゃいますか?
宮尾俊太郎さん! ミュージカルで歌うのは初めてだそうで、歌稽古のときに「あー緊張する!緊張する!」と何度もおっしゃっていて(笑)。宮尾さんの歌のソロナンバーもあるので、これは楽しみですよ。ダンスに関して宮尾さんに身体の動かし方を教わりたいなと思っています。
相葉裕樹
ーーちなみに相葉さんは一目惚れタイプ? じっくりタイプ?
この年齢になるとさすがに一目惚れはないと思いますが(笑)、学生時代はありました。だからこそサムの気持ちはわかります。劇中で僕がサムを演じるときは自分の中でプロセスを踏んで「こうでこうだから好きになった」と道筋を作っていくと思います。
ーーこの舞台を楽しみにしている方々にこの作品をどのように観ていただきたいですか?
この作品は椅子に腰を深く沈めて観る作品ではないと思います。皆が前のめりで、作品の「動き」に合わせて心も動く、そんな作品。王道のラブコメで観ているお客様の心を「キュン♪」とさせたいですね。きっと楽しいものが共有できるんじゃないかなと感じています。
相葉裕樹
取材・文・撮影=こむらさき
公演情報
■脚本:ピーター・ストーン
■作曲:ジョン・カンダ―
■作詞:フレッド・エッブ
■上演台本・演出・訳詞:板垣恭一
■音楽監督:玉麻尚一
■出演:早霧せいな、相葉裕樹、今井朋彦、春風ひとみ、原田優一、樹里咲穂、宮尾俊太郎(Kバレエカンパニー)ほか
【大阪公演】2018年5月19日(土)~27日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
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【東京公演】2018年6月1日(金)~10日(日)TBS赤坂ACTシアター
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