男肉 du Soleil『団長の96時間』に向け、男肉団長✕先輩✕Jにインタビュー!

2018.5.1
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(右から)男肉 du Soleilの城之内コゴロー(J)、江坂一平(先輩)、池浦さだ夢(団長) [撮影]吉永美和子(このページすべて)

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男肉だからできるバトルアクション、娯楽スペクタクルを楽しんでほしいです。(団長)

ゲームやアニメを巧みにパロった物語に乗せて、ホットな群舞を連発する京都のダンスカンパニー・男肉(おにく)du Soleil。前回公演『リア王』から約1年という、彼らとしては長いブランクを経て、新作『団長の96時間』を上演する。リーアム・ニーソン扮する元CIA工作員が、誘拐犯を相手に激しいアクションを繰り広げるあの映画が、男肉の手でどのような茶番に変わるのか? 今回は団長・池浦さだ夢と、団員の江坂一平(通称先輩)&城之内コゴロー(通称J)の3人という、非常にレアなインタビューが実現。この2人の目線からも、男肉の世界観やダンスの尋常じゃなさを語ってもらった。最後には恒例の宣伝ラップもあるよ!

■どう観ていいかわからないけど、押し寄せる圧がすごかった。(J)

──まず先輩とJさんの入団の経緯からうかがいましょうか。

J 僕は少数派ですよね、入り方が。自分から「入れてください」って言った方やから。

団長 あー、そうそう。大体僕のスカウトやからね。こいちゃん(小石直輝)は、推理小説を片手で立って読んでる姿を見て「こいつ誘うしかない」ってなって「君、一緒に世界を取らないかい?」って口説いたな(笑)。

J 近大(注:近畿大学。男肉メンバーはほぼ全員、同大学で舞台芸術を学んでいる)に入った1年目の文化祭で、場内整理の手伝いに入ってたんですけど、その舞台を観て泣いて。

先輩 泣かんでええのに(笑)。

団長 シルク・ヌーベルに憧れていた時代の(一同笑)。(団員の)吉田みるくがふんどし姿で、2時間ぐらい天井から吊られっぱなしで、太鼓を叩いて歌ってたんです。その姿に感動して「次出して下さい」って。

J でも結局どう観ていいかは、全然わからなかったんですよ。ただこう、圧(笑)。押し寄せてくる、圧。

団長 おもろいかどうかはさておき、圧力はあったからなあ。あの頃はストーリーとかはなくて、シーンを切り張りしただけのポストドラマ演劇やったし(笑)、もっと荒くれてましたからねえ。今よりもバイオレンス。

先輩 絶対お客さんに嫌われる奴やったなあ。

大長編男肉 du Soleil『リア王』より。

団長 Jが観たのは『シルベスターのハートフル・ステーション』って作品やったんですけど、シルベスターというお姫様が金にものを言わせて男たちをはべらせて、なぜか死んで(一同笑)。

先輩 自分で作っといて、理由を覚えてない(笑)。

団長 で、死んで妖精になったシルベスター様を男たちが探すけど、最終歌ったら何てことなく生き返るという、今のシステム(笑)。もう旗揚げの頃から、ずっとやってる。

J 1回目からやってましたもんね。「おいおい、何やってんだよ。踊れよ」って。

──その「死んで生き返る」というテンプレートの原点は何なんですか?

団長 僕、ビターエンドとか「あとはお客様が考えて」みたいな終わり方が、すごい嫌いで。絶対に幸せで、圧倒的なハッピーエンドで終わらせたいんです。

──その前になぜ死なせなければならないのかと。

団長 やっぱねえ、多幸感。死んで生き返ることで生まれる多幸感が。

先輩 (大学で)ギリシャ悲劇を習ってるから(笑)、カタルシスがいるわけやね、やっぱり。

団長 そうなんです。いったんストレスがかかるから、より大きなカタルシスが生まれるっていう。後はやっぱりゲーム世代なんで、人はお祈りするだけで生き返るもんやと(笑)。歌って踊って生き返る。これだけはもう、10何年やってもブレないです。

──先輩は男肉の旗揚げから参加してたんですよね。

先輩 ただ僕は先に大学を卒業したんで、そうなったら在校生の舞台には出なくなるじゃないですか? それで何回か客として観たんですけど[アートコンプレックス1928](※京都の劇場)でやった公演が、僕の目から見たら身体性がひどすぎて(笑)。何やってんのかわからんなあというのが、すごくあった。

──お話じゃなくて、身体性がひどかった。

J その公演は、(男肉に)入ったばかりであまり何も考えてない1回生2回生がほとんどやったし……僕も考えてなかったですね、やっぱり。

団長 大体春先は(新入生が)20人近く集まるんよね。

先輩 で、そのほとんどが、彼女を作って辞めていく(一同笑)。

池浦さだ夢(団長)

──彼女ができたら男肉を辞めるというシステムが。

先輩 で、そいつらが「男肉あまり面白くなかった」みたいなことを言ってるっていうのを聞いて、腹が立って(笑)。それで「身体で困ってるなら、使ってくれ」って僕が言いに言ったのと、さだ夢から「手伝ってくれ」って頼まれたのが、ほぼ一緒ぐらいやったかな?

団長 そうですね。だから最初は、助っ人外国人みたいな感じやったんですよ、ダンスと振付の。僕らがヒットでチマチマつないどいて、ホームランを打つ人みたいな。

先輩 そうそう。「とりあえずダンスだけ手伝うから、台詞はなしで」ってお願いしてたけど、何回かやってるうちに「それじゃいかんな」と、僕も思い始めて(笑)。

団長 吉田みるくも、最初はそんな感じでしたよ。本番1週間ぐらい前から合流して、後ろで踊って歌うだけの人、みたいな変な存在でした。それもどんどん、一族として。

先輩 2年目ぐらいからFA権取って、日本人扱いって感じに(一同笑)。

団長 最初は公演ごとに人を集めるプロデュースだったんですけど、例のアートコンプレックスの公演から、それじゃ戦えないなってなって。それでカンパニーとして、今のメンバーでやろうってことになったんです。

──そういえばJさんは最初から、衣裳がベロアのジャンプスーツだったんですか?

J いや、京都でダンスのイベントがあった時に「何か衣裳をそろえて着ようぜ」って話になったんです。それで大学の衣裳室で何個か見つくろって、その時初めて着たんですよね、ベロアを。

団長 そしたら「お前、異常に似合ってるやん!」って笑いが起きて。それ以来、自分より似合ってる奴がいるのに、俺らが着るんは忍びないってなったんです。確かそのイベントって、最初は出る予定なかったよね?

J ですね。当日になって「人が足りない」って話になって……。

団長 そしたらこいつ、何も言ってなかったのに、なぜか泊まりのセットを持って来てたんです(笑)。それでイベントに連れて行ったんですけど、あの時「今日着替えがないから、帰ります」って話になってたら……。

先輩 ベロア着てなかったね(笑)。

団長 というか、今(男肉に)おらんかもしれん。だから劇団を作るっていうのは、これだけ縁のあることやねんなあと。だってアートコンプレックスの作品がそこそこ面白かったら、先輩も来てなかったですからね。

大長編男肉 du Soleil『リア王』より。中央がベロアのジャンプスーツ姿のJ。

■男肉の振付は、飛ばしたりサボったりしても正解なんです。(先輩)

──先輩は正統派の振付家&ダンサーとしても活躍してるし、Jさんも俳優としていろんな作品に出ていますが、男肉だから面白いとか、よそでは味わえないことってありますか?

先輩 あまりみんなに理解されないけど(笑)、僕の中では真面目にダンス作品作るのと、男肉に出てることは、そんなにズレがないんですよ。僕はダンスを作る上で「この人はこう動くだろう」っていうことを、常にくつがえしたいということをすごく考えていて、その点では男肉はドンピシャなんです。「お芝居だったら普通こうだろう」という所も、常にひっくり返してくれるし。

──男肉でも一部の振付を担当していますが、特に心がけてることとかはあるんですか?

先輩 僕が踊れても、絶対みんなには踊れない動きにしてるんです。誰にも真似できない自分の癖や技術をわざと入れて、それをみんながどう踊ってくれるのか? という。僕は単純に「ちゃんと踊る」というやり方で見せるけど、みんなはそれ以外の方法で突破するという状態が、一番いいなあって思うんです。ただやみくもに、全力でやるだけでは踊れない振りを、その(ダンスの)時間内でどう見せてくれるのかと。それがすごく面白いです。

──じゃああの踊りは、先輩以外の人がやろうとしたら意外と難しい。

先輩 でも他の人が踊っても、その人なりの動きが正解ってことなんですよ。たとえば(団員の)すみだとか、振りを飛ばしたりサボったりする(笑)。でも、それはそれで正しいんです。あいつの身体で届かなかったから、この時間はサボるっていうのは、全然それは彼なりの正解だと思ってます。

団長 究極の個性ではありますよね。でも、ただただあぐらをかいてサボるのは嫌やけど(一同笑)。

──でもSNSで「#すみだくんがダンスをサボってました」ってハッシュタグを付けて盛り上げるとか、踊れないことをエンターテインメントにするっていうのも、ある意味常識をひっくり返してますよね。

先輩 それが男肉のいい所だと思います。僕個人は「ダンスは全員がそろってなきゃいけない」って考える方が、ちょっと間違ってるんじゃないか? って思うので。

江坂一平(先輩)

団長 だから「全員バラバラで下手」って言われるからねえ、切ないけど。難しいことしてるんだけど、でもパッと見て「自分でもできそう」と思われるのは、最高のことですからね。

先輩 だからわざと、身体を鍛え過ぎないようにしてるんですよ。腹筋バキバキの奴が踊ってても当たり前(笑)。そこそこにしておいて「自分もできそうだな」って、ある程度お客さんに思ってほしいなあと。でもまあ、本当にやってみたらできないことをしてますけど……っていう、自信だけは持ってます。

──Jさんは、演技面の方ではいかがですか?

J 他の舞台とは、やっぱりギャップがありますね。すごい邪心ですけど、僕は舞台に立ってる時のカタルシスというか、気持ち良さが好きで舞台をやってるんですよ。でも他のお芝居に出てる時は、どっちかって言うとグーッと……何かギュッギュッギュッて、めっちゃ押し固めて役を作る感じが……。

団長 すげえ観念的なこと言ってるな(笑)。

J まあまあ、集中して役に没頭するという。じゃあ男肉は集中してないのか? っていうとそうじゃなくて、気持ちよさのベクトルが全然違うんです。男肉はもう、とにかくハイ(笑)。アゲてアゲてっていう、そっちの方面のカタルシスですね。だから他の舞台も出たいけど、男肉もずうっとやっていきたいのは、方向性の全然違う気持ちよさが得られるからっていうのが、やっぱりデカいと思います。

団長 ある種うちは唯一無二なんやなあ、じゃあ。

J うん。男肉以上にアッパー系の気持ちよさが得られる舞台は、今の所ないですね、他には。僕は普段はもう、家で一人でジーッとしてる感じなんですけど(笑)、男肉では破天荒に暴れられますよね。それは団長が、僕が自分でも意識してない所を、上手くむいてくるというか。

先輩 引き出して来るねんな。

団長 変な所ばっかやけどな(笑)。

城之内コゴロー(J)

──団長はそうやって、団員の隠された性格みたいなのを引き出すことを考えながら作ってるんですか?

団長 僕は脚本を書かんと、稽古中に口立てで話を作ってるんですよね。そうすると「こいつはこのシーン合わんなあ」「この台詞は合うなあ」って、ライブで探っていけるし、それとは逆に、ミスマッチの……「大福にイチゴぶち込んでイチゴ大福にしたろかい!」みたいな感じのこともやれるんです。初めてのゲストだと、まず絶対本番では使わないようなシーンをいっぱい作って、そこから「この人はどんなしゃべり方がいいんだろう?」みたいな、合う/合わないを探っていきます。

──以前男肉に出た人が、その稽古の中で「このシーン面白いから、本番ではカットしよう」と言ってたのが衝撃的だった、という話をされていたのですが。

団長 そんなこと言った?(笑)でも「これは普通にウケてまうから止めよう」みたいなのはあります。

先輩 あー、それはあるな。しょうもない笑いになるって。

団長 単純に「振り・ボケ・ツッコミ」がしっかりしてワ~ッてなるような、楽しそうなシーンは止めて、よりアバンギャルドな方を選ぶ(笑)。同じように、ダンスのフォーメーションでも「並びがキレイ過ぎるから崩そう」って時があります。何でそこだけ、みんな(舞台の)左に寄ってるねん! っていうのは、わざとやってたりするんですよね。バッチく(汚く)した方がいいなあって。

男肉 du Soleil『団長の96時間』稽古風景。

■完全なアンサンブルじゃないからこそ、ビュッフェ感覚で楽しめる。(団長)

──今回、映画『96時間』をベースにしようと思ったのは?

団長 何個か候補を出して、みんなで「どれする会」みたいなのをするんですよ、毎回。

先輩 で、これが一番支持が多かった。今までで一番多かったかも。

──どこに面白さを感じましたか?

団長 いや、わかんないですね。俺がみんなをいっぱい救うっていうだけの話やのに(笑)。

J 一人があっちこっち行って、てんやわんやしてっていう所に昔っぽさというか、スペクタクル感があるっていうのを、僕はちょっと感じたのかな?

団長 あー、ストロングスタイル感はあるかな、確かに。

先輩 僕は「96時間以内に救わないといけない」という、タイムリミットがあることでしたね。そういう第三の流れがあるっていうのが、面白くなるかなあと。

──内容的にはまあ、チラシに書いてあるように「元CIA工作員の団長が、世界各地で誘拐された団員たちを次々に救う」ってのでOKですよね。

稽古中の男肉 du Soleil

団長 もう「探索・潜入・勝利」っていうんが、ズーッと続く。だからストーリー観に来たらヤバいですよ。本当にそれしかないから(笑)。

先輩 ストーリーは誰も見に来てないと思う(一同笑)。

団長 でも今回は、✕✕(某団員)が僕を裏切るっていう、今までなかったパターンを入れ込みましたから。っていうのも、アメリカのアクションって、だいたい味方と思ってた人が裏切るんですよ。まあ、それ(笑)。でもいろいろ深読みしてきますからね、人間は。「これはまさか……日本とアメリカの関係を表してるのか?!」みたいなん、勝手に思ってもらえるから大丈夫です。

──踊りの見どころとしては。

団長 踊りというか、男肉だからできるバトルアクションですね。剣でカンカーン! ってするような殺陣は、僕らでけへんから。その分身体シーンを盛りだくさんにした、男肉アクションをお見せします。

先輩 確かに動きの種類は多いかもしれん。

団長 アトラクションを見に来るぐらいのね。見世物小屋の復権(笑)。そういうオモシロ切った張ったを楽しめると思います。

先輩 あとは、最初バラバラだったメンバーがちょっとずつ集まって、最後に全員そろったら何かができる、みたいな話もしています。

団長 そうそう、みんなが一つの振りを持ってて。「ここがつながらないなあ」と思ってたら、別のメンバーが持っていて、全員集まったら一曲のダンスができる、みたいな。それは『MOTHER2』ってゲームのパクリ(一同笑)。

先輩 ただ最終、やるかどうかはわからないですけど。

団長 でもまあ、そういう2時間の娯楽スペクタクルを味わってください、ということで。

稽古中の男肉 du Soleil。

──団長が締めるような言葉を言ってしまいましたが、先輩とJさんもこの機会に言っておきたいこととかありますか?

J いや……ない(一同笑)。

団長 「俺やったら男肉のここを観る」とかないの?

J だったらね、何かこう、圧を感じて(笑)。ウーハーの前にいるような。

先輩 体感してくれたら、一番いい。

J 何かを浴びに来るという気持ちで来てほしいですよね、ウーハーだから。

──ダンスに関して、ここがポイントみたいなことは?

団長 それで言うと、先輩を軸に観たら楽しいと思うんです。「あ、これがフォーマルなんや」というのがあったら、他との差違が見えやすいという。一個のダンスでも、一個の振りでもこんだけバラエティがあって、そのゴーストが先輩だという。

先輩 でも物差しになる気はないんですよね。全体の動きはもちろん、誰かだけをピンポイントで観ても面白いダンスにはなってると思いますんで。誰を観ても多分面白いし、もし自分に合わんかったら、別の人を観たらいい(一同笑)。

団長 「こいつのダンスあかんわー」と思っても……。

先輩 別の人なら、意外と好きになる可能性がある。「こいつがヤバいから全体がヤバい」じゃなくて、面白い所を能動的に探してくれたらいいなと思います。

団長 まあそういう、ビュッフェ感が出たらいいですよね、一個のダンスでも。誰を見てもあまり変わらない、完全なアンサンブルじゃないからこそ「Jを観てて楽しい」とか「先輩を観てて楽しい」ということができるから。それで最終「全部観てても、何か楽しい」ってなるのが一番いいなあと思います。

大長編男肉 du Soleil『団長の96時間』PRラップ動画

取材・文=吉永美和子

公演情報

大長編 男肉 du Soleil『団長の96時間』
 
■団長:池浦さだ夢
■出演:江坂一平、小石直輝、高阪勝之、城之内コゴロー、すみだ、チェン、ヤマモトエリコ、吉田みるく/新井聖美、稲森明日香(夕暮れ社 弱男ユニット)
 
《大阪公演》
■日時:2018年5月11日(金)~13日(日) 11日=19:00~、12日=13:00~/18:00~、13日=13:00~
※11日&12日夜公演は、終演後に「おまけトークショー」あり。
■会場:インディペンデントシアター 1st
 
《東京公演》
■日時:2018年5月21日(月)・22日(火) 19:30~ 
※21日は終演後に「おまけトークショー」あり。
■会場:駅前劇場
 
■料金(2都市共通):一般=前売2,900円 当日3,300円、学生&男肉飛び散る席(最前列)=前売2,500円 当日2,800円、絶対安全席(最後列・このエリアには出演者は立ち入りません)=3,500円(前売・当日共)
■特設サイト:http://oniku-du-soleil.boy.jp/project/96/