福間洸太朗(ピアノ)

2015.10.25
インタビュー
クラシック

CD最新作は名作コンチェルトと“水の旅”

勢いに乗る福間洸太朗が2枚のアルバムを同時リリースした。一枚は初の協奏曲アルバムで、山田和樹率いる横浜シンフォニエッタとのライヴ録音。福間と山田は2014年1月のシューマンに続き、2015年2月にモーツァルトの第9番「ジュノーム」を共演しており、その模様を収録した。
「モーツァルトの第9番『ジュノーム』は私からリクエストしました。天才モーツァルトの斬新なアイディア満載、感情の起伏が幅広い曲なので、山田さんとならきっと面白い演奏になると思ったのです。山田さんと横浜シンフォニエッタとは厚い友情と信頼で結ばれています。山田さんが繊細なバランスを伝え、オーケストラはフレッシュなエネルギーでそれに応え、両者が私の流れを瞬時に察知して下さいました。まるで室内楽をやっているようでしたね。
モーツァルトでは天上世界の澄みきった音色で、自然に歌うことを意識しました。2楽章のテンポに私がリクエストを出すと、山田さんが『じゃ、洸太朗さんちょっと振ってみて』と無茶振りされ、ほんの5小節ですが、指揮台で振らされたことは忘れもしません(笑)」


もう一枚は、自身の名に由来する“水”と“光”をテーマとした“Shimmering Water”プロジェクト第2弾。『モルダウ〜水に寄せて歌う』というタイトルで、「スタイルや性格の異なる作品を集め、川から海へ旅する」ソロ・アルバムだ。スメタナの名曲を福間自身が編曲した「モルダウ」からスタートする。
「編曲の際はオーケストラのスコアとスメタナ自身の4手版を参考にしましたが、非常に音符の数が多く、音域や音価に工夫をしないとピアノでは間延びしてしまう所もありました。いろいろと改善して今の形になりましたが、これからも変化するかもしれません」

“水の旅”といえば「舟歌」。メンデルスゾーン、ショパン、そしてリャードフの作品を並べた。
「3曲とも嬰ヘ音を主音としており共通項が多いです。ひょっとするとショパンはメンデルスゾーンを、リャードフはショパンを参考に『舟歌』を書いたのかもしれません。いつか並べて演奏したいと思っていました」

シャリーノやカスキといった作曲家の知られざる逸品も取り入れながら、最後はゴドフスキ編曲のサン=サーンス「白鳥」で締めくくる。
「原曲より半音低い調性による幻想的な響きがします。内声の呼応が感動的で、ラフマニノフに似た部分もありますね。水上の夢の旅を静かに締めくくるのに相応しい作品です」

今回も福間らしいコンセプト満載のアルバムだ。ゆっくりと“水の旅”を楽しみたい。

取材・文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

CD情報


CD
『モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」 シューマン:ピアノ協奏曲』
日本コロムビア
COCQ-85270
¥3000+税

 


CD
『モルダウ〜水に寄せて歌う』
日本コロムビア
COCQ-85271
¥3000+税