SILVANA、表現することへの尽きない欲求と旺盛な挑戦心を見せた初のワンマンをレポート
SILVANA
Minstrel Garden-ミンストレルガーデン-
2018.5.19 下北沢GARDEN
ニコニコ動画の“歌ってみた”カテゴリで人気を博し、2018年2月21日に待望の1stソロアルバム『Minstrel code』をリリースしたSILVANAが、5月19日に1stソロライブ『Minstrel Garden-ミンストレルガーデン-』を下北沢GARDENにて開催。歌唱だけでなく作詞や作曲、動画編集や描画に朗読など、多岐に渡って才能を開花させているSILVANAの初ワンマンのは、当然のことながらソールドアウト。オーディエンスの期待感と熱気に包まれながら、表現することへの尽きない欲求、旺盛な挑戦心を見せつけてとことん楽しませてくれた一夜は、特別なものとなった。
SILVANA
定刻通りに場内が暗転、ステージの幕が閉まったまま“ミンストレル=吟遊詩人”というフレーズに相応しく朗読が導いて、「スレイプニル-sleipnir-」へ。歌い出しと同時に幕が開くと、そこにはSILVANAの姿が。よく伸びる澄んだ歌声といい、ジプシーを思わせるボヘミアンテイストの衣装といい、なんて素敵なんだ! 間奏で「ミンストレルガーデンへようこそ!」とSILVANAが笑顔で挨拶をすれば、大歓声が上がる。
続くジャジーな「クイーンオブハート」の冒頭で「下北沢いくぞ!」と叫ぶと、ケープの裾をひるがえしながら躍動したり、腕を振りながらステージを右に左に移動したり。オーディエンスはといえば、SILVANAに合わせて彼のイメージカラーである白のペンライトを左右に振って、初ワンマンとは思えないほど、両者の息はぴったりだ。
「2月に1stソロアルバム『Minstrel code』をリリースして、そこから3か月、夢にまで見たソロワンマンライブを開催することができました! 伝えたい想いを詰め込んだアルバムから、主役になれない盗賊の歌をお届けします」
そんな言葉から、「Thief“Liam”」へ。愁い色をたたえた前半から、エモーショナルなサビへのドラマティックな展開に映える歌声、“生きる意味をくれる”というフレーズに込めた想いにしても、SILVANAの渾身の表現にどうしたって心が動く。
SILVANA
一転、ギターリフとダンスビートが軽快な「メルティランドナイトメア」では、くるくると異なる表情を見せて曲の持つ中毒性をますます高めたり。「アリスの夢の中で」では、浮遊感に身をゆだねながら空間を不可思議な世界観で染め上げていったり。日常と非日常を行き来するような彼の歌声は、儚くもあり、美しくもある。
ステージドリンクを飲んで、「これ水じゃないんですよ。数滴タバスコを入れるとノドにいいんです」なんてかわいい嘘をついて、「テヘペロ(笑)」とお茶目な笑顔を浮かべるSILVANA。その歌声でさんざん魅了しておいて、コントラストが余計に愛おしい。
さらに、夢だったというアコースティックコーナーではアコースティックギターの穏やかな奏でをバックに、3曲を披露。活動初期から歌っていて思い入れの強い曲だという「ワールドランプシェード」はじめ、温かく透明感あふれる歌声、繊細なファルセットやビブラート、曇りのないロングトーンには、驚くほどの浄化作用がある。
SILVANA
再びの朗読をはさみ、SILVANAが「みんな一緒に歌って!」とフロアに向かって呼びかけたのは、センチポップな「君が生きてなくてよかった」。オーディエンスの歌声だけでなく、想いも重なっていく。
真赤なライトに照らされる中、やさぐれモードにシフトした「フィクサー」では、バンドメンバーを紹介しつつ、昂るままに何度も華麗にターン。背中を向けた「フィクサー」のラストポーズからくるっと振り返り、「おまえらの本気を見せてくれ!」とオーディエンスをけしかけ、低音ボイスでドキっとさせたのは「運命≠Information」。当然、オーディエンスはたくましく拳を振り上げながら勢いよくコールし、「太陽系デスコ」では一体感が増し増しに。
「ここに立って、これだけの人が集まってくれて、本当にうれしいです。CDリリースもライブも、正直言って怖かったけど……みなさまのおかげです、感謝しかありません」
万感胸に迫ったのだろう、涙をこらえながらそう言ったSILVANA。本編最後を飾るのは、「待ちぼうけの彼方」。後半のハイトーン&ロングトーンは、なにしろ圧巻だった。
アンコールでは、サプライズゲストの“高音出したい系男子”ウォルピスカーターが、とんでもなく高いテンションで颯爽と登場。オーディエンスをぐいぐい巻き込んでいくそのトークスキルに、SILVANAも「本当にあなたはおしゃべり上手ね!」と思わず感嘆。しまいには、ウォルピスカーターの無茶ブリに応えてSILVANAが全力でコマネチポーズをする場面も。昨夏、ウォルピスカーターのワンマンライブにSILVANAがゲスト出演したり、『Minstrel code』の特典CDでは「ライオン」で初めてコラボしたりと、なにかと仲よしな2人のわちゃわちゃトーク、聴いているだけで楽しい!
SILVANA
その上で、この日限りのコラボで「ライオン」を披露した2人。すれ違いざまにさりげなく手をタッチしたり、向き合って目線を交わしながら歌声をかけあったり、背中合わせに歌ったり。おまけに、お互いのハイトーンが重なったときの無双感といったら、鳥肌ものだった。
そして、静かに語り始めたSILVANA。
「たとえば、ほかの命をいただく食事の前にちゃんと「いただきます」と言うこと、電車でお年寄りや体の不自由な方に席を譲ること……僕は、できていない時期がありました。でも、踏み込んだことのない世界に、ためらいがちでもほんの少しの勇気ややさしさを持って踏み出せたら、この世界は変わっていくはず。そういう想いで、アルバム『Minstrel code』を作りました。僕はこれからも、ファンタジーの世界でいろんな想いを語り紡いでいきたいと思っています」
しっかりと決意して最後に届けてくれたのは、『Minstrel code』の最後を飾る曲でもあり、自身で作詞・作曲をした「鏡映しのアムネシア」。また新たな一歩踏み出した表現者・SILVANAの歌や言葉、強い気持ちは、きっとこの世界を鮮やかに染め上げていってくれるはずだ。
文=杉江優花 撮影=小松陽介(ODD JOB)
セットリスト
2018.5.19 下北沢GARDEN
2. クイーンオブハート
3. Thief“Liam”
4. メルティランドナイトメア
5. アリスの夢の中で
6. 星の唄(アコースティックver)
7. ラプンツェル(アコースティックver)
8. ワールドランプシェード(アコースティックver)
9. 君が生きてなくてよかった
10. フィクサー
11. 運命≠Information
12. 太陽系デスコ
13. 待ちぼうけの彼方
[ENCORE]
14. ライオン(シークレットゲスト:ウォルピスカーター)
15. 鏡映しのアムネシア