日本のメタルやラウドの未来ともいえるHER NAME IN BLOODのツアーファイナルは轟音と感動に満ちていた

レポート
音楽
2018.6.1
Photo by Shumpei Kato

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HER NAME IN BLOOD ”FULL POWER TOUR 2018” 2018.05.17(Thu)SHIBUYA CLUB QUATTRO

「俺らはめっちゃいいアルバムだと思ってて、みんなからパワーを貰ったから、俺らがパワーを与えようと・・・」とDAIKI(G)がライヴ中に熱く語りかけていた。

HER NAMA IN BLOODの2ndアルバム『POWER』は過去最高の出来映えであり、メンバー5人の人間味や音楽嗜好を色濃く投影した粒揃いの楽曲がひしめき合っていた。その最新作に伴うレコ発ファイナルは完全ワンマンとなり、バンドと観客がガチンコでぶつかり合う濃密な空気に終始支配されていた。

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オープニングSEに映画『ロッキー』のテーマ曲が流れると、今回のアーティスト写真同様、キャラ分けをはっきりした5人が登場。観るたびに筋肉マシマシになっていくIKEPY(Vo)はエンドースを受けているプロテイン・ブランド「MYPROTEIN」のロゴ入り袖カット黒Tシャツ、バンダナを巻いてニッキー・シックス(B/モトリー・クルー)よろしく目の下に黒ラインを施したLAメタル風のDAIKI、ニューメタル系バンドを意識したモヒカン頭のTJ(G)、緑色の頭髪にNOFXのTシャツを着込んだMAKOTO(B)、両目の周りを黒く塗ったヴィジュアル系ルックスの若き屋台骨・MAKI(Dr)がずらりステージに並ぶだけで壮観だ。

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1曲目はIKEPYが筋トレに励むMVも話題の、最新作の表題曲でスタート! いきなり剛腕サウンドを振りかざして観客を焚き付けた後、「LAST DAY」のイントロからフロアに激しいサークル・モッシュを作り上げる。それから「LET IT DIE」を挟むと、「渋谷、楽しんでるか? 1対1のタイマンだ!一緒にでかい声出そうぜ?」とIKEPYが呼びかけると、「KINGSLAVE」へ突入。ド頭から「Shout At The Devil」(by モトリー・クルー)張りのコーラスで始まるLAメタル風味を仕込んだ曲調だけあり、観客も拳を振り上げて大声を出していた。また、IKEPYはボディビルダーのごとく筋肉アピールを随所に織り込み、ビジュアル面でも観る者を惹き付ける。

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続く「KATANA」はメンバー曰く「パンテラとニッケルバックを混ぜた感じ」と取材時に解説してくれたが、躍動感満載の大振りのギター・リフが実に効果的。それに煽られる形で観客もノリノリでジャンプする光景が広がり、ライヴにおいて特段の威力を発揮していた。今後もこの曲はライヴの重要ナンバーになっていくに違いない。さらにMAKIの激しいドラミングが冴える「SUPER LOUD」、「BAKEMONO」と畳み掛けると、カオティックな熱気は右肩上がりに上昇するばかり。

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そして、男臭いミドル・チューン「ANSWER」をここで投下。DAIKIとTJの哀愁を帯びたツイン・リードも味わい深く、聴く者の琴線に執拗に揺さぶってくる。それからIKEPYが左手で拳銃の形を作って頭に当てると、次は「REVOLVER」を披露。メンバー5人がスクラムを組む全員攻撃ぶりが凄まじく、MAKOTOのハードコア魂を宿した高音コーラスも楽曲の熱量をグッと底上げしていた。さらに「HALO」でウォール・オブ・デスをフロアに勃発させたり、MAKIの切れ味鋭いドラム・ソロでも会場を沸かしたりと、あの手この手で観客の意識を高揚させる。

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中盤過ぎにはヘヴィさとキャッチーな魅力を存分にアピールする「SAVIOR」、疾走感漲る「MASK」も飛び出し、渋谷クアトロを激しく掻き回していく。「FROM THE ASHES」をプレイした後、「(今日は)千秋楽」とIKEPYが言うと、「(千秋楽の意味が)わかんない!」とTJが返したり、また、この日TJはかなり緊張していたらしく、「何度もステージで「KATANA」の練習してた」とDAIKIが暴露する場面もあり、会場は笑いに包まれた。

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「まだまだ成長し続けるバンドなんで、ここから後半戦もお前ら燃え尽きていこうぜ!」とIKEPYが気迫のこもったMCをすると、「GASOLINES」をプレイ。DAIKIのギター・ソロに移ると、オジー・オズボーンの名ライヴ盤『TRIBUTE〜ランディ・ローズに捧ぐ〜』のジャケット写真のごとくIKEPYがDAIKIを担ぎ上げ、さらにTJ、MAKOTO、DAIKIが楽器を裏返して「POWER!」の文字を3人がかりで作り上げたりと、これぞヘヴィ・メタル!と言えるエンタメ性に長けたお約束的演出で会場を沸騰させた。本編を「FORSAKEN」、「CALLING」で締め括ると、アンコールにもきっちり応え、「Decadence」、「We Refuse」と初期ナンバーを畳み掛け、ここに集まった猛者たちの息の根を止める抜群の破壊力を見せつけて終了。 

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贅沢を言えば、最新作から「IDENTICAL」、「SIMPLE THINGS」も聴きたかったが(別日の公演ではやったそうだ)、今のHER NAME IN BLOODはメンバー5人の歯車がガチッと噛み合った上で豪放なパフォーマンスは叩き付けている。メタルコアの頑強さ、ハードロック/ヘヴィ・メタルの古典的要素、メンバー5人の豊かな音楽的バックグラインド、そこに親しみやすいキャラクター性が加わり、ほかとは一線を画した音像を搔き鳴らしている。これほど魅力的なバンドはそういない。今からでも遅くないので、是非HER NAME IN BLOODのライヴを体感してほしい。

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取材・文=荒金良介  Photo by Shumpei Kato

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