『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』記者発表会レポート 荒木飛呂彦「漫画界に感謝を」、大型原画の新作披露も!
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荒木飛呂彦氏
1987年から「週刊少年ジャンプ」にて連載がスタートした『ジョジョの奇妙な冒険』。シリーズの累計発行部数は1億部を突破し、2017年に誕生30周年を迎えた作品の大原画展『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』(2018年8月24日〜10月1日)が、この夏、国立新美術館で開催される。本展は、主人公である歴代ジョースター家の壮大な歴史を振り返る「ジョジョクロニクル」、印象的なポージングや鮮やかな色使い、独特のファッションを紹介する「JOJO’s Design」、ジョースター家と因縁のある強敵との戦闘シーンを間近に堪能できる「ハイ・ヴォルテージ」など、8つのテーマに合わせて、豊富な原画の魅力を紹介するもの。その中には、本展覧会でしか見られない、描き下ろしの大型原画12枚も含まれている。
集英社常務取締役の廣野眞一氏は、「荒木先生のこれまでの執筆活動の軌跡と共に、『ジョジョの奇妙な冒険』の歴史と魅力を詰め込んだ、ジョジョ史上最高の祭典となります。また、これまで熱い声援を送っていただきました読者の皆さまへの、感謝の気持ちを込めた展覧会でもあります」と、コメント。
漫画家・荒木飛呂彦氏も登壇した記者発表会から、荒木氏によるキービジュアルの解説を交えつつ、本展の見どころをお届けしよう。
左:国立新美術館館長 青木保氏 右:漫画家 荒木飛呂彦氏
荒木飛呂彦氏「若い人たちの考え方に、お役に立てたら」
記者発表会の壇上に上がった荒木飛呂彦氏は、ファンの間で不老不死説が噂されるほど、若々しいオーラを放っていた。冒頭の挨拶では、「この国立新美術館という場所で展覧会が開催できることを、本当に光栄に思います。国の文化として何かお役に立てるなら、ものすごく嬉しいです。年齢が中学生以下の皆さまは無料ということで、ぜひ見ていただきたいのですが」と前置きしつつ、「(原画には)印刷とは違った部分が必ずありますので、絵としての発想だとか、絵を描く時の考え方、そういうものを若い人たちの勉強や将来の仕事に、考え方としてお役に立てていただきたいなと、これは密かな野望です」と、秘めた願望を暴露し、「……喋っちゃいましたけども」と自らツッコミを入れる一場面も。
荒木飛呂彦氏
初の大阪展示も決定!「風神雷神」から発想を得たキービジュアル
司会者より、初の大阪巡回(2018年11月25日〜2019年1月14日 ※原画の一部入れ替えあり)が決定したことが発表されると、続いて、展覧会告知のために描き下ろされたキービジュアルが披露された。
展覧会キービジュアル 東京会場 (c)荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
展覧会キービジュアル 大阪会場 (c)荒木飛呂彦&LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
東京会場には、荒木氏が「自分の中では最強のキャラクター」と位置付ける第3部『スターダストクルセイダーズ』の主人公・空条承太郎が描かれた。一方、大阪会場には、シリーズを通して度々登場する強敵・DIOが描かれている。荒木氏は、「悪役が大阪というのは特に関係ないんですけど」と会場の笑いを誘い、「とにかく最強の2人です。DIOも本当に大好きで、2人とも神格化されているので、この2人を象徴させるのが良いのかなと思いました」と、キャラクターに対する思い入れを語った。また、絵画的な構図については、三角の富士山と丸い月、配色は承太郎側が「昼」、DIO側が「夜」といったイメージを対比させていることにも注目してもらいたいとのこと。「自分でもかなり力を入れて、思いを込めた作品だと思っております」と、自信をのぞかせた。
キービジュアルを2枚1組にした理由については、以下のように解説した。
「日本の絵画だと、『風神雷神』のような2枚組もありますので、それから発想を得たというのもあるし、(描いた2人を)風神雷神って捉えても良いし。対照的な善悪ではありますが、僕はそれぞれ、ひとりの神格化されているキャラクターとして描きました」
司会者から「承太郎には動、DIOには静のイメージも感じられますが」と話を振られると、「DIOは一応敗北していますので、考えに耽っているというか、(オーギュスト・ロダンによる)《考える人》のような感じです。石仮面の上に肘をつくという構図も、こだわらせています」と話した。承太郎については、ハリウッド俳優のクリント・イーストウッドがマグナム拳銃を構えているポーズを参考にしているそうだ。
新作は等身大キャラクターを描いた大型原画12枚!
本展の見どころのひとつとして、完全新作の大型原画が展示されることが明らかになった。
荒木氏によると、「2mくらいの大型原画です。実物大のキャラクターを描こうという目的で、身長が170cmのキャラクターなら、170cmで描かれています。それが全部で12枚あります。12というのは、普遍性がある、自然界の数字かなって思って決めました。キャラクターが実物大なんで、同じ場所に存在しているように、という目的もあります」とのことだ。こちらは会場でしか見ることのできない作品なので、貴重な機会を逃さないようにしよう。
荒木の解説付き音声ガイドも!
音声ガイドの一部に漫画家自らが参加したことが発表されると、すかさず「すいません」と謝罪する荒木氏。「自分の作品についてちょっと喋っちゃって……出しゃばってなければ良いんだけど」と頭を下げつつ、収録の感想を聞かれると、「ええもう大変ですそれは。そういうの仕事じゃないので」と、苦労した様子をうかがわせた。
第5部『黄金の風』アニメ化発表!ますます広がるジョジョの世界
国立美術館で開催される漫画家の個展は、手塚治虫氏以来、28年ぶり2人目となる。国立新美術館 主任研究員・教育普及室長の真住貴子氏は、「国立で(個展を)やる、となると国のお墨付きがついた! と思われたりすると思いますが、この分野においては、もはやそれを超えているのでは、というのが担当する者としての考えです。上から目線で国がこれを見なさいという時代ではなくて、多くの皆さまに支持されているからこそ、国立で皆さまにお見せする義務があるかなと。言わば、ファンの皆さまが開いてくださった展覧会でもあると思います」と、本展の開催意義について語った。最後に、荒木氏より本展開催に向けての感謝の気持ちが伝えられた。
「今回のジョジョの原画展については、漫画界に感謝をしたいと思います。手塚先生をはじめ、先輩の助言や作品がなければ、『ジョジョの奇妙な冒険』は影も形もなかったと思いますし、私より年齢が下の漫画家の皆さまが盛り上げていただいているので、国立新美術館での開催があると思います。それと、誠に勝手なんですけども、ジョジョのアニメの第5部『黄金の風』というのが、この秋からスタートします。その辺もよろしくお願いします」
さらりと告げられたアニメ化発表に、報道陣の期待も一層高まった記者発表会。
なお、展覧会期間中は、会場からほど近い「メルセデス ミー東京」のウインドウや施設内がジョジョ仕様に装飾される。施設内のカフェやレストランでは、コラボメニューも楽しめるとのこと。さらに、会場で販売されるグッズについては、続々追加される予定だ。こちらも併せてチェックしたい。
『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』は、2018年8月24日より開幕。ジョジョの世界観を心ゆくまで満喫できる機会を、ぜひ逃さないでほしい。