『DIVE!! 』The STAGE!! 主演の納谷健にインタビュー。「舞台はチャレンジしなければ意味がない」
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納谷健
小説、映画、アニメで人気を博す森絵都原作の『DIVE!!』が2018年9月20日(木)~30日(日)東京・シアター1010、2018年10月6日(土)~7日(日)大坂・森ノ宮ピロティホールで『DIVE!! 』The STAGE!! として舞台化される。本公演で主人公・坂井知季を演じる納谷健。身体ひとつで戦う飛び込みの世界を描く本作で、自身も“身体ひとつ”で新たな舞台表現に立ち向かう!
ーー飛び込み競技を題材とした作品を舞台で描くという発想は、それだけでもうわくわくしますね。
今日は2度目のビジュアル撮影なんですけど、初回はそれこそ撮るほうも撮られるほうも「何をどうしたらいんだろう?」「正解はどこにあるのか」という感じでしたね。今もまだ試行錯誤の連続。とにかくみんなで手探りでひとつひとつに新鮮な気持ちで立ち向かっているところです。
納谷健
ーー飛び込み競技に賭ける少年達の姿が描かれたスポーツ青春小説が原作で、幅広い層に響く瑞々しい物語です。
僕も共感する部分がいっぱいありましたし、“絶賛中学生・高校生中!”の若い人たちにも共感してもらえるお話なので、この作品をきっかけに何か自分のことを頑張る糧にしてもらえたら……という思いも強いですね。もちろん、そういう時間を過ごしてきた大人世代にも届くものは大きいと思います。
ーー納谷さんが演じるのは主人公の坂井知季。飛び込みが好きな平凡な中学生ながら、やがてオリンピック代表を目指して奮闘していく少年です。納谷さんがこういう等身大の男の子を演じるのは、少し新鮮な印象が。
そうですね。舞台『刀剣乱舞』の小夜左文字、ミュージカル『薄桜鬼』の斎藤一、『煉獄に笑う』の百地一波……今まではみんなの中にいても特別孤独だったり、孤独だけど務めて明るくしていたりといったタイプの役柄を演じることが多かったので。知季のように周りと一緒に頑張りつつ、ちゃんと悩んで、明るくっていう健全な男の子を演じられるのは僕も楽しみです。
ーーキャラクターとして大事にしたい部分などは?
周りとの関係性でしょうか。ひとつのことを頑張ることによって何か犠牲にしなきゃいけないことがあって、それに対してうじうじ考えてしまうこととかは誰にでもあると思います。でもそういうときでも何事も全部ポジティブに捉えられることもあるし、全部マイナスに考えてしまうこともあるけど……どちらにしてもそこで「頑張っていくしかない」と前に進めるのは、きっと自分だけじゃなく周りとの繫がりがあるからこそ。知季も最後はポジティブに捉えていける男の子だと思うので、そういう全体の中での気持ちの流れをしっかり捉えながら、知季というキャラクターを構築できれば。
ーー納谷さんもスポーツ少年でしたよね。
ずっとテコンドーをやっていました。「優勝できなかったら坊主」と言われて勝てなくて坊主にしたこともありますし、悔しい思いも苦しい思いも経験しています。でも自分はとにかく「習う」という感覚が苦手なんですよね。ダンスもやってたんですけど、発表会の為に練習するっていうのはイヤで(笑)、自分は踊ること自体、身体を動かすこと自体が好きだから、なんかそこに目標を見出せずについついレッスン休んじゃったり。河川敷で自由に踊ってるほうが楽しいな、と思っていました。テコンドーも今となってはもちろん基礎はスゴく大事だってわかるけど、強くなるのも点の取り方を知るのも実践しかないのに、なんでずーっと練習? むしろ何を練習してるんだろう?って、道場に行っても自問自答することが多かったです。
納谷健
──いくら好きでも疑問を持ったら流されるのではなく、一度立ち止まってでも気持ちを解消してから進む。何事も言われるままではなく、自発的に動く人。実は……頑固モノ?
そうですね(笑)。
ーーでもそこの一線を自分で超えられてこそ、真の力がつくということでもありますからね。
それはスポーツで学んだことですけど、俳優もホントに同じだなぁ、わかるなぁって思うことが多くて。だから本当に今自分はこのお仕事を選んでよかったと思っています。
ーーでは本作のストーリーとして魅力に感じている部分を教えてください。
やっぱり心理描写かな。小説では言葉でとても上手に選手たちの心情の動き、そして彼らを取り巻く風景が描写されていて、自分の想像力の中でもありありとその光景が浮かんできました。また、アニメではアニメとしてそこが表現されていましたけど、それぞれに同じシーンでも見え方が変わってくるのって面白いな、スゴいなって思いましたね。そして今度は僕たちがそれを舞台で表現していく。お客様は舞台上で役者が発するセリフを聞きながら、実際に人が動いているのを見ながら、作品の光景を見出していく。照明やいろんな演出ももちろん生かされていくでしょうけど、さらにお客様自身の想像力をプラスして色を添えてくれることで見えるモノがどんどん広がっていくんだろうな……と考えるとわくわくします。板の上でプールサイドを魅せる。僕らがしっかりみなさんを引き込めるお芝居をすることで、そこにサァッと一面の青空が広がったりしたらいいな、素敵だなって思いますね。
ーー稽古に先駆け、実際に飛び込みのレッスンも行なったそうですね。
まだ一度しか出来てないんですけど、下のほうから少しずつ高さを上げて、実際の距離感で飛び込みました。もう間髪入れずどんどん飛ばされるんで(笑)、恐怖心ああだこうだというよりもとりあえず飛ぶことに慣れて、飛んで身体で分かっていかないと何が駄目なのかもわかんないんですよね。「今身体が傾いているからもうちょっと立てて」と言われても、空中でどこを使えばそうできるんだろうとか、飛んでからの距離もあるのでその間体勢をキープしておかなきゃとか……考えるのは簡単なんですけど、水に着く瞬間に勝手に身体が緩んじゃったりもして。やっぱりもうそろそろ着水だと思うと無意識に集中がぶれていろいろ緩んじゃうだなとか、本当にやってみなきゃわからないし、再現もできない。
ーーすべてはほぼ一瞬で判断されていく。
はい。何も考えてる暇はないですね。その中でしっかり水を捉えられた時とか、上手くいくとやっぱりクセになります。飛んでから着水、そして着水後もずっと目を開けてるんで、水中でもうだいぶ深いところまで行っても「あれ、まだかな」って思ったり、いろいろと新鮮でした。
納谷健
ーー水泳の経験は?
泳ぐのは嫌いでした(笑)。子どもの頃から足に筋肉がついていたので、水中だと足が沈んじゃって、もう、重くて浮かないんです。だから「人間なんだから陸上でいいじゃん。泳ぐ必要あるか」ってずっと思っていて(笑)、泳ぎに関しては家族にも心配されてたくらい。なので、これが実写じゃなく舞台でよかったですよ(笑)。でも実際に水の中に入ったことによって、アニメの見方も変わりました。「そこでそういうことする?」とか「なるほどだからこのやり方なのか」と。身を以て体験することで飛び込みのスポーツとしての理屈が逐一理解できるようになったので、身体と気持ちの両方からより役柄を理解していける気がします。
ーー稽古はまだ少し先になりますが、今回の座組での目標はありますか?
若い役者が多いので、最後にキラキラできたものを届けれたらいいな、と。やっぱり中盤はスポーツマンの苦悩、気持ちが落ち込むようなシーンも続いたりもするんですけど、だからこそ意味のあるキラキラを魅せられると思うんです。ここにあるのは、ただの熱血や頑張ればなんとかなるみたいなことではないもっとシビアなモノ。そうやって一回どん底に落ちてからその先に見えてくる景色というのがまたきれいだったりするので、そういう本当のキラキラにたどりつきたいです。それに、知季たちが頑張るからこそ味わう意味の分からない脱力感とか、頑張りたくても頑張れない倦怠感とかというのは、いろんな境遇で生きているみなさんとも共感できる部分があると思うので……お客様の気持ちにも寄り添って創っていけたらいいなと思います。
ーー“体も表情のひとつ”という緊張感も、ほかの作品とは違うポイントですね。
見た目的にはね、やっぱりちょっと緩んだらお腹が出ちゃう、みたいなのとかあるじゃないですか(笑)。周りからそう見えていなくても自分で気になるし……だから、稽古からそこも気を使いまくるんだろうなと思いますね。個人的にはこの夏、断食の準備食だったり回復食だったりみたいなことも一度体験しようかなと思っています。根本からしっかり身体作りにもトライしたいので。
納谷健
ーー舞台『DIVE!!』はその前の舞台『七つの大罪』に続く主演作品になります。デビュー以来出演作を重ね、一作ごとに納谷さん自身を取り巻く環境、置かれる状況も刻々と変化している中、“今の自分”を見つめたときにどんなことを思うのでしょう。
断食とかもやりますが、でもそんなにストイックになりすぎなくていいとは思ってます。お客様に楽しんでいただけるよう舞台上では輝ける存在でありたいですけど、役者としては親近感を持っていただけるような、人間味ある在り方でいたいので。そのためにもなんというか……いい人でいようというか、ちゃんと周りに感謝して、いろんな人の動いてる姿を見て、感じて、ちゃんと生きたいなって思ってます。たぶんこういう話をすると僕、永遠にしゃべっちゃうんですけど(笑)、人間って、見えないことや知らないことに対してつい平気で文句を言ったりしちゃうけど、相手のことをちょっと知ってから考えると、そういうことを言ったりしたりしなくなると思うし、世界はもっとよくなるのになって思うんです。それは、こうして名前と顔を出してお仕事するようになってからすごく実感していることでもあります。
ーー自身のお仕事の結果がすぐ聞こえてきますからね。
はい。いろんな感想があっていいし、それを見聞きするのは自分も楽しみです。だからこそ、どうしたらもっと伝えたいことが伝わるかな、どうしたら相手を理解できるかなって考えますよね。で、思ったのは、やっぱりまずは自分がちゃんと愛情と優しさを持つこと。やりたいことに熱意を持って一生懸命取り組むということをしていれば、少しずつでも伝わっていくんだよな、と。そうやって何事もひとつひとつ向き合えるようには意識しています。それでも例えば自分に対する悪い意見を見て傷ついたりすることもあるけど、そういう時はひとりで思い悩んだりせず、ノートに書き出してみたり、誰かと喋ったりして、まず自分の言葉にしてみる。これはすごく効果があって、それで立ち直れるし、相手のことも推し量れるし、自分自身反省することもできます。とにかくわからないことはその都度理解。溜め込まない。まだまだ今は自分がもっと変わっていかなきゃいけないし、そういう時期なので……いろいろチャレンジして、失敗もいっぱいして。成長するためにも真っすぐに悩み続けていこうと思います。
ーーまさにこの舞台『DIVE!!』も挑戦づくしで、みなさんからのいろんな感想が聞けそうですね。
舞台の上に水中を立ち上げるなんて、まさに舞台でしか出来ない挑戦です。僕はそもそも舞台ってチャレンジしないと意味がないと思うので……。普通のことをするのなら「映像でいいじゃん」ってことも多いですからね。僕らの力とアイデアで……アナログの表現で何ができるかというのが舞台にする意味だと思うし、他にはない魅力。2.5次元に求められることは“再現”だけじゃない。その先にある表現をお届けし、楽しんでもらうために力を注ぎたいです。
ーー最後に、改めて本番に向けての意気込みをお願いします。
原作を知っている方はもちろん興味を持ってくださると思いますし、知らない方にも楽しんでもらえる舞台になることは確かです。2.5次元の表現をまだ観たことのない方にも、ひとつのエンターテインメントとして“飛び込み”を表現するというところに注目していただき、そして実際に観ていただけたらもう絶対にそこから何か新しい世界が広がるはず。楽しいですよ〜。僕らはその楽しさのためにお稽古を積み、本番へと熱量を集中させ……たぶんみなさんは毎日お仕事に行っているのと、僕らが稽古に励むのって同じことなのかもしれない。その両者が劇場で出会ってお互いに影響を与え合えることができるのが舞台、演劇の醍醐味なんじゃないでしょうか。ここで起きることがそれぞれの人生の何かのきっかけになったなら嬉しいです。“生”のお芝居の素晴らしさを共に分かち合いましょう。
納谷健
取材・文=横澤 由香 撮影=山本れお
公演情報
公演日時・会場:
2018年9月20日(木)~30日(日)東京公演 シアター1010
2018年10月6日(土)・7日(日)大阪公演 森ノ宮ピロティホール
協力:アニメ「DIVE!!」製作委員会
脚本・演出:伊勢直弘
出演:納谷健 牧島輝 財木琢磨/杉江大志 高橋健介/名塚佳織 唐橋充
安達勇人 宮城紘大 瀬戸祐介 西野太盛/廣野凌大 大島涼花 藤岡沙也香 光宣
プレミアムシート 9,800円(前方エリア/非売品グッズ付き)
一般席 7,800円
公式サイト:http://officeendless.com/sp/dive/
公式Twitter:@DIVE_TheSTAGE
ハッシュタグ:#ダイ舞
ビジュアル撮影風景CM公開中! https://www.youtube.com/watch?v=-S3QX9XjDa4
主催:「DIVE!!」The STAGE!!製作委員会
Office ENDLESS/DMM pictures/サンライズプロモーション大阪