藤山直美の感謝の言葉に正司花江が思わず涙 舞台『おもろい女』製作発表
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『おもろい女』満を持しての再演です!
2018年10月8日(月・祝)から東京・シアタークリエにて舞台『おもろい女』が上演される。本作の製作発表が8月7日(火)に都内で行われ、主演の藤山直美、渡辺いっけい、山本陽子、田山涼成、正司花江、天宮良、佐藤正宏、黒川芽以、篠田光亮、そして本作の潤色・演出を務めるONEOR8の田村孝裕が登壇した。
本作は、昭和初期に大活躍した天才漫才師「ミス・ワカナ」が主人公。各地の方言を自在に駆使する「しゃべくり漫才」や、ラジオの生放送でのアドリブから生まれた「泣かせ漫才」を武器に、15歳で出会った相方・玉松一郎と、結婚・別離そして戦争を経て漫才で頂点を極めていく様をドラマティックに描いた物語。
藤山直美さんに渡辺いっけいさんから花束が贈られました
主演の藤山は、2017年2月、初期の乳がんが見つかった事を受け、その治療のために、予定されていた本作の上演中止を発表、以降治療に専念していた。体力が回復したということでこの秋、本作にて舞台復帰を果たす。他キャストが見守る中、最後に会見場に姿を現した藤山は、相方の渡辺いっけいから復帰祝いの花束を贈られると、思わず目を潤ませていた。
藤山直美
開口一番、藤山は昨年の公演を中止した件について、上演を楽しみにしていた観客や関係者に向けて改めて詫び、深々と頭を下げていた。そして今回の出演を「大変嬉しく思っています。体力がどこまで戻っているのか、役者としての勘やインスピレーション、スピードがどこまで戻っているのかは、お稽古で田村先生や皆さんの力を借りないと分からない状態ですが、無理せずに少しずつゆっくり、初日に間に合うようにやっていきたいと思います。こつこつとうるさくなく努力していきたいと思います」藤山が語り終わり、深々と頭を下げると会場中から大きな拍手が沸き起こった。
想いを込めて深々と頭を下げる藤山さん
渡辺いっけい
ワカナの相方・玉松一郎役の渡辺は「個人的に再演と呼ばれる作品に出るのが初めてです。今までは役者として最初にやったものをなぞったり、初演より越えなければならないという気持ちが働き、気遅れしていました。でも今回再演に出演するのがこの『おもろい女』で幸せだと思っています。というのも初演の時『ああすればよかった』など反省する事が多かったんです。今回はいろいろな意味で藤山さんとお芝居をより成功させるために頑張りたいと思います」とコメント。
黒川芽以
ワカナが中国・青島で出会う桜井晴美役の黒川は「前回やった時は20代で、再演で30代となりました。晴美ちゃんは、はつらつとしたエネルギッシュな役なので、元気がまだあるんだぞ、という感じで頑張りたいです。映画やドラマでは同じ役を演じることがあっても舞台で同役を演じるのは初めてなので自分にどのような変化が生まれるのか、どうやったら新しいお客様も前回観ていただいたお客様も楽しんでいただけるのか、考えながらやっていきたいと思います。最近は自分よりも若い人たちと仕事をする機会が増えてきましたが、この舞台では先輩方のエネルギーをいただいて、自分も周りに元気を与えられるような芝居をしていきたいです」と語った。
篠田光亮
晴美の恋人であり、共にワカナの後輩となる江藤和夫役の篠田は「数年ぶりの『おもろい女』をどのような形でやればもっとおもしろくなるのかな、と今考えています。直美さんが帰ってきて、また新しい出演者さんも増えました。一から作品を作っていけたらと思います」と気合いを見せる。
天宮 良
ワカナの人生を狂わせる新劇俳優の浅原月雄役・天宮は本作初出演。「私の役はワカナにある事ない事を言ってお金を散財させ、ヒロポン中毒にしてしまう悪~い男なんですが、私自身はそういう悪いところは一切なく、顔は黒いですが腹は真っ白なので(笑)、田村さんと相談しながらお客様に『我らがワカナにひどい事をしやがって!なにしてけつかんねん!』と怒っていただけるような浅原を演じたいと思います」と笑顔で挨拶。
佐藤正宏
天宮と共に本作初出演となる佐藤は、ワカナの師匠・河内家芳春と新興演芸部の専務・谷の2役を務める。「今、本当に晴れがましくて嬉しくてここにいます。初演を作られた皆さんの想いを引き継いで、楽しい舞台にできたらと思います」と語った。
正司花江
大阪演芸会を牛耳る女興行師・菱本せつ役の正司は、藤山が復帰した事について「直美さんがものすごく小さい頃から知っているので(病の事を)気にしていたんですが、こんなにお元気になられて、また一緒にお芝居が出来るのが本当に嬉しいです。頑張りましょうね」とあたたかい言葉をかけていた。
田山涼成
漫才作家・秋田實役の田山も藤山の復帰に満面の笑みを浮かべつつ「数年前に藤山さんの病気の事を知って『え?亡くなっちゃうの!?』と思ってしまったくらい、がんの事について無学だったのですが、このように帰って来られて、嬉しい想いが倍以上に膨らんでいます」と我が事のように喜んでいた。
山本陽子
九州の演芸会の顔役・山路たま役の山本は「3年ぶりに直美さんにお目にかかる事が出来て、お変わりなくまたご一緒できることが嬉しいです。舞台の上で丁々発止とやり取りができる事を楽しみにしています」と笑顔を浮かべた。
田村孝裕
最後に田村は「多くのお客様が楽しみになさっているのは藤山さんの変わらぬお元気な姿だと思います。僕らは全力でサポートさせていただき、共演者の皆さんの力を借りながら、初演とどうしても比べられてしまうかと思いますが、それより面白い作品作りを稽古場で必死こいてやっていきたいと思います」とさらなる『おもろい女』完成に向け意気込みを見せていた。
藤山さんの言葉に花江師匠が思わず…
記者からの質疑応答では、藤山が病気発覚から闘病期間、現在の体調、心の支えになった事など細かく質問が寄せられたが「私も今年還暦となりますので、質問がよう覚えられません」と藤山が笑いを取ると「えっ!!」と正司が驚きの声を上げ、会場の空気がさらに和らぐ。「治療は先生の言う通りにフルコースでさせていただきました。日常生活には困らないけど、これからはそれにお芝居が加わることになると違うエンジンがかかりますからね。皆さんに本当に心配をおかけして、よくしていただいて。特に(正司)花江師匠には私が5つ、6つの頃から、かしまし娘の三師匠とお仕事をさせていただいたので、すごく心配していただき、その存在に心強く思わせていただきました」と改めて感謝の想いを伝えると、正司が思わず涙し、ハンカチを目に何度も当てていた。
会見冒頭からいくぶん緊張した面持ちだった藤山だったが後半は徐々に本来の直美節が復活。「自宅で療養している時は永ちゃん(矢沢永吉)のDVDに合わせて一緒に歌っていました。リモコンをマイク代わりにしてね。歌い終わった後で『アホちゃうか』と自分に突っ込み、翌日また同じ事をしていました」「野球は…今弱いです…(※藤山は福岡ソフトバンクホークスの大ファン)。今は高校野球を観ています。大阪桐蔭が頑張ってくれました」「私が好きなのは歌舞伎、野球、矢沢永吉。この3つは外さないように生きてきました。ご清聴ありがとうございました」と締めると会場は大笑い。常に目の前にいる人を笑顔にさせる、喜劇役者・藤山直美の復活を感じさせる会見となった。
取材・文・撮影=こむらさき
公演情報
■作:小野田勇
■潤色・演出:田村孝裕
■監修:小野田正
■日時・会場
【東京公演】2018年10月8日(月・祝)~29日(月) シアタークリエ
【広島公演】2018年11月3日(土・祝)・4日(日) 呉市文化ホール
【兵庫公演】2018年11月7日(水)~11月18日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【群馬公演】2018年11月29日(木) ベイシア文化ホール(群馬県民会館)大ホール