タフでキュートでアンニュイなASCAが見せた「夢の始まり」分島花音との対バンイベントレポート

レポート
アニメ/ゲーム
2018.8.31

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2018.8.18(Sat)『ASCA presents “Crossing Night vol.1 in TOKYO”』@渋谷・TAKE OFF 7

デビューから1年も経たない新人が、東京と大阪で初の自主企画対バンイベントを仕掛ける――。ロックバンドでも珍しい、ましてやアニソン/声優系アーティストにおいては、前代未聞と言ってもいいことだが、8月18日、東京・渋谷TAKE OFF 7のチケットは、しっかりとソールドアウトした。主役の名は、ASCA。記念すべき最初のゲストは、分島花音。イベントの名は、“Crossing Night vol.1”。渋谷TAKE OFF 7は、決して大きなハコではないが、世の中から見れば小さな一歩のように見えて、ASCAにとっては大きな飛躍の場だ。足を運び、見届けないわけにはいかない。

イベントの先陣を切ったのは、おそらく世界的にも類を見ない、チェロ・ボーカリストの分島花音。メイド服を思わせる、豊かなふくらみのあるモノトーンのドレス、しなやかな腕で弓を操る仕草と、凛としたチェロの響き、そしてエアリー成分多めの、コケティッシュなボイス。リズミックなミドルチューン「君はソレイユ」から、明るいアップテンポの「さんすくみ」へ、あっという間にこの空間を、花音カラーで染め上げる。

演奏をサポート・キーボードに任せ、ハンドマイクで歌う「REUNION」では、湧き起こる手拍子に応えて「ありがとう!」とにっこり。一転して、「ノットフォーセール・フォッシル」では、ピアノとチェロで作る疾走感あふれるリズムに乗り、気迫のこもった歌声を響かせる。エアリーで、ファルセットが多いのに、力強く響く、不思議な吸引力を持つ声だ。

ASCAちゃんには、2回ぐらい、ご飯行こうって誘ったんだけど、まだ実現してません(笑)。このイベントをきっかけに、もっと仲良くなりたいな。みんな、協力してね」

お姉さんアーティストらしい、愛とユーモアを感じるMCのあと、「Fateつながりで」と言って歌ったのは、PSPゲーム『Fate/EXTRA CCC』主題歌の「サクラメイキュウ」。ASCAのデビュー曲「KOE」が、『Fate/Apocrypha』エンディングテーマだったことを意識した、粋な選曲だ。

「まだ声出るよね。行こうか、もっと!」

清楚なだけじゃない。激しく疾走する、打ち込みのトラックを流しながら、「killy kilyy JOKER」では右手の弦を高く振り上げ、「ツキナミ」では、マイク1本で歌いながら、左手で拳を高く突き上げる。まるで民衆を導くジャンヌダルクのような、なんと絵になる光景だろう。

「私の時間は、残り1曲になりました。(え~っ!) みんな、ASCAちゃんを見に来たんでしょうが!(笑)」

観客を和ませながら、「これからも、誰かの救いになるような曲を、作っていきたいと思います」と、真摯なメッセージを忘れずに。ラストチューンは、ゴスペル風のバラード「自由落下とピノキオ」。8曲40分、短い時間の中で、心揺さぶるシーンをいくつも見せてくれた、分島花音。堂々たるパフォーマンスだ。

一番手が残した余韻が、次への期待と交錯し、再び場内の熱気が上がってきた。15分間のセットチェンジを経て、ステージに上がるのは、本日の主役。スポットライトを使わず、暗いステージに幾何学模様の映像を直接投影する、刺激的な演出。チェロ、バイオリン、キーボード、ギターを従えて登場したASCAが、「RUST」を歌いだした瞬間、ライブハウスの空気がガラリと変わった。なんというパワフルな声。小柄な体のどこから、これほどの声量が飛び出してくるのか。

「みなさん、こんばんは、ASCAです。楽しんでいきましょう!」

挨拶もそこそこに、アッパーなダンスロック・チューン「グラヴィティ」へ。ジャズ・インスト界で絶大な人気を誇るバンド、fox capture planとの共演で作られた、難度の高い複雑な曲を、軽やかに乗りこなす、圧倒的なボーカル力。「最低な朝と名付けたのは」の、静と動とが交錯するドラマチックな構成も、圧巻のシャウトで乗り越える。独特の、ハスキーで、アンニュイな陰りを帯びた強烈な歌声と、キュートな見た目とのキャップに、初めてライブを見る人は、驚くに違いない。

「“Crossing Night vol.1”へご来場いただき、ありがとうございます。最高の時間を、一緒に過ごしましょう」

言葉が固く、フレーズが短いのは、見た目の落ち着きとは裏腹に、緊張しているのかもしれない。だが、ひとたび歌い出せば、戸惑いは何もない。ダークでスリリングな魅力溢れるデビュー・シングル「KOE」から、ピアノとチェロをフィーチャーしたバラード「悠遠」へ。暖かい光、思い出しながら、夢に向かうよ――。恋の終わりと、夢の続きをシンクロさせた、せつない胸の痛み。ASCAの歌には、いつもどこかに、淋しさや痛みのせつないスパイスが、ピリリと効いている。

「初めての自主企画、特別に何かできることがあるんじゃないかと思って、新曲を持ってきました。この曲は、分島花音さんが、書いてくれました。と、いうことは…?」

と、いうことは、つまり夢のコラボレーションが実現するということ。大歓声に迎えられ、再登場した分島花音と、しばしの女子トークに花を咲かせ、いよいよ新曲の初披露へ。できたてほやほや、タイトルもまだ決まっていない新曲は、ほとんどスラッシュメタル的な速さと重さを持った、強烈な1曲だ。一番をASCAが、二番を花音が歌い継ぐ、個性豊かな歌の共演も見事にハマった。リリースされるのが、今から楽しみだ。

「Crossingは、交差点という意味です。今日ここに来てくれた人との出会いは、交差点で偶然すれ違う確率のような、奇跡と言えると思います。これからも、全身全霊で歌っていきます」

ぺこりと、生真面目に頭を下げる姿に、あたたかい拍手が降り注ぐ。「リインカネーション」、そしてセカンド・シングル「PLEDGE」と、緊張感溢れるアップ・チューンを立て続けに歌っても、声に乱れはない。ガーリーなハイトーン全盛の、女性ボーカルのシーンにおいて、これほどタフで、スパイシーなボーカルはとても貴重だ。ひょっとして、マイクなしでも、彼女ならば、易々と聴かせきってしまうかもしれない。

「ラスト1曲、思い切り楽しんで、帰ってください!」

曲は、TVアニメ『グランクレスト戦記』オープニングテーマで、5月にリリースされた最新シングル「凛」。猛烈なスピードで突っ走るロックチューンを、お立ち台に飛び乗り、歌い上げるASCA。新たなヒロイン誕生を祝福する、ファンが突き上げる何十本もの拳が、小柄な彼女を持ち上げているように見える。

「どうもありがとうございました。ASCAでした!」

アンコールを求める拍手は鳴りやまないが、残念ながら、灯がついてしまった。45分、全9曲。3枚のシングルしか出していないことを考えると、これがマックスなのだろうが、彼女ならばきっと、あと2時間は歌い続けられるだろう。いつか、どこかの広いホールで、たっぷりと時間を取って、ASCAのライブを体感できたらと、今日ここに来た、すべての人が思い描いたことだろう。夢はまだ、始まったばかり。とんでもなくパワフルな声を持つ、ASCAという名の新人ボーカリストを、どうか今すぐ、記憶に刻んでほしい。

レポート・文:宮本英夫

セットリスト

2018.8.18(Sat)『ASCA presents “Crossing Night vol.1 in TOKYO”』@渋谷・TAKE OFF 7

分島花音
01.君はソレイユ
02.さんすくみ
03.REUNION
04.ノットフォーセール・フォッシル
05.サクラメイキュウ
06.killy kilyy JOKER
07.ツキナミ
08.自由落下とピノキオ

 

ASCA
09.RUST
10.グラヴィティ
11.最低な朝と名付けたのは
12.KOE
13.悠遠
14.新曲(タイトル未定)with 分島花音
15.リインカネーション
16.PLEDGE
17.凛

 

 

 

 

ライブ情報

ASCA presents“Crossing Night vol.2 in OSAKA”

2018年9月2日(日)
出演:ASCA × Cö shu Nie
時間:17:30 OPEN/18:00 START
会場:club vision
価格:前売4500円/当日5000円

<チケット> 一般チケット販売中

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