杉本哲太、風間俊介が戦争の狂気を描く「バグダッド動物園のベンガルタイガー」
「バグダッド動物園のベンガルタイガー」
実際に起きた事件をもとに生まれた問題作!
米兵の指を噛み切ったトラが射殺された―2003年、バグダッド動物園で実際に起きた事件をもとに劇作家ラジヴ・ジョセフが描いた作品「バグダッド動物園のベンガルタイガー」が、12月8日(火)より新国立劇場にて日本初上演される。本作の初演は2009年。上演後話題となり、その年のピュリッツァー賞にノミネートされた。その後、2011年にはロビン・ウィリアムズが主演し、ブロードウェイで初演され、これも話題となった。
舞台は、イラク戦争の空爆によって破壊されたバグダッド動物園。ベンガルタイガーの檻の前で、ふざけあっていた警護の米兵が、腹をすかせたトラに手を噛みちぎられる。トラは別の兵士に即座に撃ち殺されたが、幽霊となって撃った兵士に取り憑く。取り憑かれた兵士はやがて精神に異常をきたし、自殺。これまた幽霊となり、義手をつけた元相棒に取り憑く。トラの幽霊、アメリカ兵の幽霊、さらにはサダム・フセインの二人の息子の幽霊、殺された女の子の幽霊……幽霊と現実を生きる人間とが絡み合うなか、バグダッドに渦巻く欲望と残虐さがあらわとなっていく。
射殺されたトラが幽霊となり、自分を殺した兵士に取り憑くというユニークかつ荒唐無稽な展開でありながら、その根底に流れるのは、戦争によって引き起こされた人々の狂気、憎しみ、欲望だ。これらをシュールに描いた本作は、実際のできごととフィクションの世界とを大胆に行き来し、そこから現実を照らし出す。
今回、本作の演出を手掛けたのは、TRASHMASTERSで作・演出をつとめる中津留章仁。2011年には「背水の孤島」で東日本大震災と原発事故を真正面から扱うなど、現代社会が抱える問題などを取り入れ、骨太な物語を多数世に送り出してきた中津留。アメリカ人でも戦争へのメッセージが籠められた作品は重いと感じられる風潮の中、日本であえてこの作品をどう扱うか。
出演は、映画、TV、CM、ナレーションなど、幅広く活躍する杉本哲太がベンガルタイガー役を、そして「蒲田行進曲」「ビリーバー」「クザリアーナの翼」「ベター・ハーフ」と、積極的に舞台に出演している風間俊介がトラを撃ち殺す米兵ケヴ役を演じる。二人とも、新国立劇場は初登場となる。このほか、お笑いコンビからピン芸人に、そして劇団イキウメに2012年から所属する安井順平、「ショーシャンクの空に」「アドルフに告ぐ」などに出演した谷田歩、文学座所属で「ガラスの動物園」「第17捕虜収容所」などに出演した粟野史浩らが物語を紡いでいく。
■日時:2015年12月8日(火)~27日(日)
■会場:新国立劇場小劇場
■出演:杉本哲太、風間俊介、安井順平、谷田歩、粟野史浩、クリスタル真希、田嶋真弓、野坂弘
■公式サイト:http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/150109_006140.html