『イグ・ノーベル賞の世界展』にユーモア爆発の“笑撃”研究が大集合! 浮気判定スプレーやオナラの臭いを消すパンツって何 ?

2018.10.3
レポート
アート

左/公衆衛生賞(2009年)「非常時にガスマスクへと早変わりするブラジャー『エマージェンシー・ブラ』の発明」より 右/化学賞(1999年)「浮気男もついに観念! 自宅で出来る浮気チェック」より

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2018年9月22日に、東京・文京区の東京ドームシティ・Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)で『イグ・ノーベル賞の世界展』が開幕した。11月4日まで開催される本展は、「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に毎年贈られるイグ・ノーベル賞の世界初となる公式展覧会だ。開幕前日の9月21日には関係者を招いたオープニングセレモニーが開かれ、イグ・ノーベル賞創設者のマーク・エイブラハムズ、先日、医学教育賞の受賞が発表されたばかりの堀内 朗らとともに、本展オフィシャルアンバサダーのテリー伊藤が登場。過去の9名の日本人受賞者も登壇して本展の開幕を祝った。ここでは、セレモニーの様子とともに本展の見どころを紹介していこう。

パロディ版ノーベル賞の世界初となる公式展覧会

会場エントランス

「イグ・ノーベル賞」とは、「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に毎年贈られるノーベル賞のパロディ版で、ノーベル賞より少し早い毎年9月に受賞者が発表されている。世界的権威のノーベル賞に対してイロモノ的な存在と思われがちだが、授賞式が行われるのはなんとあのハーバード大学。そこには本家のノーベル賞学者も訪れるなど、研究者たちの祭典として世界的な知名度を誇る。1991年の創設以来、日本でも24組の研究者が受賞し、その中にはイノベーティブなおもちゃとして世間に広く知られた「たまごっち」や「バウリンガル」なども。近年も12年連続で受賞者を輩出し、今年も昭和伊南総合病院の堀内 朗が医学教育賞を受賞して話題になったばかりだ。

テリー伊藤「イグ・ノーベル賞の話は20年経っても飲み屋でウケる!」

イグ・ノーベル賞創設者のマーク・エイブラハムズ

この『イグ・ノーベル賞の世界展』では、イグ・ノーベル賞の成り立ちや歴史、これまでの受賞研究をパネル展示や実物展示を通じて知ることができる。世界初の公式展覧会とあって、オープニングセレモニーには本賞の創設者であるマーク・エイブラハムズもアメリカから来日。冒頭の挨拶で開幕の喜びを述べたマークは、日本とイグ・ノーベル賞のつながりについて、「日本人の授賞は12年連続ですが、これは偶然ではありません。人口一人当たりの授賞数は世界一の国だと思います」と語り、「唯一のライバルはイギリスですが、イギリスはEU離脱に揺れている今こそ日本がリードするチャンスです!」と会場の観衆に呼びかけた。

本展オフィシャルアンバサダーのテリー伊藤

続いて、本展のオフィシャルアンバサダーを務めるテリー伊藤が登壇。これまで伝説のお笑い番組に数多く携わってきたテリーは、「新橋の飲み屋だとノーベル賞の話は3日と続きません。レベルが高すぎてなかなか話が続かないんです。でも、このイグ・ノーベル賞の話は10年続きます。20年飲み屋で受けます」と持論を展開して会場を笑わせた。

受賞研究の紹介に添えられたテリー伊藤のコメントの一例

その一方で、本展で受賞研究の展示の一件一件にコメントを寄せているテリーは、「例えば、僕はヘソにゴマがあると本当に信じていたけど一体ヘソのゴマとは何なのか。それを研究している人って凄いですよね」などと、イグ・ノーベル賞の研究をリスペクト。「実は、イグ・ノーベル賞というのは少年少女から高齢者まで人々の素朴な疑問を検証してくれる、世界中が幸せになる研究だと思います」と語り、同賞のさらなる発展にエールを送った。

ユーモアたっぷりのマークは、コメント中のテリーに自分のハットをさりげなくかぶせるという“いたずら”も

ステージ上ではマークとテリーの掛け合いも見られ、テリーが「日本人受賞者が多いのはうれしいんですが、これって“やらせ”じゃないの?」と、マークに鋭い疑問を投げる場面も。これに対してマークは奇人・変人とも呼ばれるような人々に向けられる世界の国々の国民性を説いた上で、「日本人はクレイジーに見えるけど素晴らしいといえるものを殺さずに生かしてきた。そして、それを重宝してきたからだと思います」と説明し、訝しげなテリーや会場のゲストたちを納得させていた。

自分のお尻に内視鏡を入れるような姿を見せる堀内 朗

なお、この日は今年「大腸の内視鏡検査の苦痛を和らげるため、座った姿勢で自らの大腸に内視鏡スコープを挿入した研究」で医学教育賞を受賞したばかりの堀内 朗(昭和伊南総合病院)のほか、過去の9名の日本人受賞者も列席。内視鏡を持って現れた堀内はハーバード大学で行われた授賞スピーチの思い出を語りながら、自分のお尻に内視鏡を入れる姿を再現して会場を沸かせた。

ドクター中松ら過去の日本人受賞者も登壇し、紙飛行機を投げるパフォーマンス

その他、2005年に栄養学賞を受賞したドクター中松ら過去の日本人受賞者も登壇し、それぞれがユーモアあふれるスピーチを披露。最後は、実際の授賞式の慣習と同じ紙飛行機を投げるというパフォーマンスを行ってセレモニーを締めくくった。

見る側の感性を刺激するシュールな展示のオンパレード

会場の展示風景

展示は「イグ・ノーベル賞とは何か?」を知ることから始まるが、初めから場内には「衝撃的」ならぬ「笑撃的」なものが溢れている。例えば、冒頭に展示されている年表では歴代の受賞トロフィーが紹介されているのだが、毎年形の違うそれらは脳みその模型だったり口の模型だったり、おおよそトロフィーといえないものばかり。

口の模型をモデルにした2002年のトロフィー

一方で、授賞式の様子を伝える写真展示には先ほどの紙飛行機の件のほか、そこに登場する個性的なキャラクターなどについても紹介されている。しかし、それらが何のためにあるのかという説明は添えられておらず、受け取る側の感性が試されるような展示が続いていく。

授賞式の様子の写真展示

そして、歴代の日本人受賞者の紹介などの後は、過去の受賞研究のパネル展示へ。ここでは各研究の詳しい説明が紹介され、なかには研究実績の実物が展示されているところもある。

2005年に栄養学賞を受賞したドクター中松さんによる研究のパネル展示

それぞれの研究の中には、「ヘソのゴマについての謎」や「なぜキツツキは頭痛にならない?」といったシンプルなテーマもあれば、「犬は排泄する際に、地球の南北に合わせて用を足す?」や「マウスもオペラを聴けばハッピーになる」など、ちょっと考えてみると深い研究もあったりして興味がそそられる。

2002年のイグ・ノーベル賞受賞で一躍世界的に有名になった、犬と会話できるおもちゃ「バウリンガル」

1997年に経済学賞を受賞した「たまごっち」も実物が展示されていて、初代のたまごっちを知る世代としては当時の熱狂がリフレイン……。

ガスマスクになるブラジャーや、パンツで夫の浮気を判定するスプレーも 

左/公衆衛生賞(2009年)「非常時にガスマスクへと早変わりするブラジャー『エマージェンシー・ブラ』の発明」より 右/化学賞(1999年)「浮気男もついに観念! 自宅で出来る浮気チェック」より

ところで、「うんち」が世代を超えた笑いの鉄板ネタであるように、下ネタというのも立派な笑いのひとつである。それゆえ、イグ・ノーベル賞にも本家のノーベル賞では絶対に見向きもされないような下ネタ的な研究が多い。

2001年に生物学書を受賞した「おならの臭いを消すパンツ『アンダー・イーズ』」

例えば、1998年に統計学賞を受賞した「身長、ペニスの長さ、足のサイズの相関関係」の研究は、世の男性たちに都市伝説的に伝わってきた永遠のテーマといえるし、1999年に化学賞を受賞した「パンツにふりかけて男の浮気がチェックできるスプレー」は、世の奥様方の関心を大いに誘う研究といえる。ほかにも、「おならの臭いを消すパンツ」や「キスが人類を救う」なんてテーマは、下ネタでありながらほっこりした気分にさせられる。

研究者のパッションとおバカなセンスを全身で感じよう!

2006年に平和賞を受賞した「ティーンエイジャー撃退機」のように実際に体験できる展示も

徹頭徹尾、シュールなものごとが満載の『イグ・ノーベル賞の世界展』。全体を通じて感じされられたのは、「考えることにおけるユーモアの大切さ」だ。ここで見た数多くの研究は、入り口は“おバカ”でもプロセスはとても学術的で、その結果は人類にとって本当に大切なことにつながっていたりする。もしこれらの研究がマジメなところから入っていたとしたら、こうして世界的な賞を受けることもなくどこかに埋没していたかもしれない。どんなにマジメなことでも、人の興味を誘うにはユーモアを交えることがひとつの手なのだ。

そんな風に、筆者は結果的にややマジメな感想を抱いたのだが、そもそもシュールの連続なので、見る人によって感想が異なるのは当然のこと。まずは肩肘張らずに笑いを求めて訪れてみてほしい。とりあえず、爆笑必至なのは間違いないはずだ。

イベント情報

イグ・ノーベル賞の世界展
日程:2018年9月22日(土)〜11月4日(日)
※開催期間中無休
時間:平日12:00〜18:00 、土日祝10:00〜18:00
※最終入館は閉館の30分前まで
場所:Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)
料金:大人(高校生以上)1,400円/小人(小・中学生)900円
※未就学児無料
URL:https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/event/ignobel2018.html
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