五皿の絶品料理が味わえるような舞台『ア・ラ・カルト』が30周年! 台本を書き、自ら演じる高泉淳子がこの名物舞台の魅力を語る

2018.10.15
インタビュー
舞台

高泉淳子

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2018年12月14日(金)~12月26日(水)に東京芸術劇場 シアターイーストにて、12月28(金)~12月29(土)に近鉄アート館にて移動レストラン『ア・ラ・カルト』-美味しいものは心を動かすところにある 30th anniversary が上演される。本公演の台本を執筆し、役者としても出演する高泉淳子に舞台の魅力を聞いた。

ーー『ア・ラ・カルト』が30年目を迎えたことについて、改めて心境をお聞かせください。

まず、あるのは感謝ですね。演劇を長く続けるだけでも大変なことなのに、ひとつの作品をここまでやってこられたというのは、本当に多くの方々が関わって、応援してくださったからだと思います。そして、何よりも観に来てくださる方がいなければ続かなかったわけですから。ほとんどすべての公演を観ている方もいらっしゃれば、何度も何度も足を運ばれた方、そして若いころに観ていて、その後しばらく来られなかったんだけどまた来るようになった方もいらっしゃる。初めて観たのは小学生、中学生だったとか、両親に連れられて来た子が大人になってまた来てくれたりもしますしね。だって初演のころに生まれた赤ちゃんが30歳になっているわけですから、それを考えると本当にすごいことだなあって思います。

ーー『ア・ラ・カルト』の歴史を振り返ってみると。

30年は長かったような気もしますが、あっという間だった気もします。1983年に遊◉機械/全自動シアターを旗揚げして翌年から本公演を行ってきたんですが、その5年後に『ア・ラ・カルト』はスタートしたことになりますね。当初は年間に2本か3本、遊機械~の本公演用に作品を作っていたんですが、どうしてもいくつかボツになるシーンがあって。それを解決するのにいい方法はないかと考え、生まれたのが“シーズンオフシアター”だったんです。シーンをアトランダムに並べて、流れがつながらないところでは歌を歌ったりして。そうしたら役者も楽しいから毎年やりましょうということになり、お客さんも増えてきて。そのうち青山円形劇場で『僕の時間の深呼吸(1986年初演)』という作品をやらせてもらうようになり、そこで劇場プロデューサーが紹介してくださって中西(俊博)さんに出会えた。でも私たち、実は会う前から中西さんのお名前は知っていたんですけどね。まさに『僕の時間の~』の客入れの時に中西さんの曲を使っていたりしたので。

高泉淳子

ーーそれは、たまたまですか?

そう、たまたまなんです。それが31年前の話で、この出会いが中西さんの生演奏が加わったスタイルの『ア・ラ・カルト』につながったわけです。まずは試行錯誤しながら3年はやってみよう、その3年が5年になり、そのうちに巻き起こったレストランブームも後押しになって、気がつけばなかなかが取れない人気公演になっていたというのが8年目くらいでしたかね。そして次は10周年までやろう、20周年までがんばろう、と。​

ーーそう考えると、本当に歴史のある作品ですね。

20周年のとき、メンバーの白井(晃)と陰山(泰)さんがこれを最後にやめたいと。続けるかどうか随分悩みましたね。メンバーを新たにして『ア・ラ・カルト2』で再スタート、軌道に乗り始めたら、今度はまさかの展開で作品よりも先に劇場のほうがなくなってしまうということに、これには驚きました。

ーーあれには驚きました。

予想もしないことでした。私達にとって拠点を失うことは大問題でしたね。『ア・ラ・カルト』はレストランを題材にした作品です。ワイン、料理名が沢山出てくる会話は難しく、テーブル回りのリハーサルも必須。そして生演奏とののタイミング。時間と手間がかかる作品が成立していたのは恵まれた稽古場があったからこそ。どうやって続けていこうかまたもや岐路に立たされて。 “移動レストラン”という、何もない空間にその場限りのレストランを作ってしまおうというスタイルで再々スタート。こうしてやり続けてきての30年です。でもこのタイミングでまた青山劇場が復活するのかも? みたいなニュースもつい最近飛び込んできて、またまた驚いているところです(笑)。

ーーそして今回は、30周年を記念してどんなことを狙っていますか。

『寅さん』のようにお馴染みの人物が登場するというのがコンセプト。毎回お話とゲストが変わる。一番初めにレストランにやって来て食前酒を頼むひとりの女性、次に登場するのはお馴染みのキャラクターでもあるちょっと風変わりなサラリーマン “高橋”。ここで前菜のお話。その次はメイン料理、ゲストが登場する男と女のお話、デザートは老人のカップルのお話。長年連れ添った夫婦の場合もありますし、出会ったばかりの場合もあります。そして最後は食後酒で締めくくる。今回も、こういう流れにはなります。​

ーー場面が、四皿のお料理のようになっている。

あ、でも真ん中の三皿目として、にぎやかしのお話、ナマのお客様が入るので。だからそうなるとお皿は全部で五つ、ですね。

ーーそこが日替わりゲストの登場シーンになるわけですね。今回も、とても豪華な顔ぶれが揃います。

毎回、新たなゲストの方に入って頂けたらと思っていて。今回何と言っても驚きなのが尾上流4代目家元尾上菊之丞さんが出演してくださる。以前から、私は菊之丞さんに『ア・ラ・カルト』に出てほしいと思っていたんですよ。​

ーーお知り合いだったんですか?

いえいえ、違います。私が狂言を観に行った時にゲストで出ていらして、すぐにファンになりました。それで、『ア・ラ・カルト』の夏バージョンのような、実際にシェフがお料理を作ってくれる、お芝居と歌のライブで構成した『恋する夏のレストラン』(2016年)という公演をやった時に、菊之丞さんにゲストで出ていただいたんです。いきなり『ア・ラ・カルト』に出ていただくよりも、私自身の企画なら自分が責任を持てばいい話ですから。馴染んで頂けるか、嫌がられたらどうしようと心配してましたが、これがお見事!素晴らしかった! 日本舞踊の尾上流四代家元で、お忙しい方なので私がお稽古場に伺って、そこで本読みを一度だけやらせていただいて。「一応、高泉さんがやってほしいことを全部言ってください」っておっしゃるので、歌ってほしい曲が1曲、あと一緒に歌いたい曲を2曲、踊ってほしい曲を1曲、って言ったら全部引き受けてくださったんです。それで当日は場を当たって、セリフも歌も一回だけ合わせてみただけだったのに、パーフェクトでした。また歌が素晴らしくうまいんですよ。それで、いずれは『ア・ラ・カルト』に出ていただきたいとずっと胸の中で思い続けてました。​

高泉淳子

ーーそして舘形比呂一さんも初参加ですよね。

はい。こちらは最近もしょっちゅう会っているお友達です(笑)。昨日もうちで打ち合わせをしていました。一昨年、兵庫県立芸術文化センターがプロデュースしている『sound theater』という公演で初めてご一緒して、何日かの稽古と、兵庫での4日間を一緒に過ごしていたらすっかり仲良くなって。彼、私のことを“アツコねえさん”って呼ぶんですよ。なんだそれは? って思っていますけれども(笑)。そして、レ・ロマネスクのTOBIさんは前回初めて出ていただいて素晴らしかったので、また出演していただこうと。で、ROLLYと(春風亭)昇太さんはもう、レギュラーみたいなものですからね(笑)。また(高橋)源一郎さんは、私が学生のころからファンだったんですよ。ラジオで一回、ご一緒させていただいた時には、私が『男と女のレストラン』の短いバージョンと長いバージョンを書いていったら、長い20分のほうをナマでやってくれてね。

ーーいきなりですか、それはすごいですね。

「リハなしでやるんだ、この人!」って驚きましたけど、これがすごく良かったんです。さすがに歌まではどうかなと思っていたら、去年出てくださった時にちゃんと歌ってくださって。

ーー篠井(英介)さんも、ゲストに出られるのはちょっと久しぶりですよね。

そうです、そうです。英介さんとはもう、戦友同士みたいな関係だというか。

ーーまさに同世代の。

きっと30周年だから、お祝いで出てくださるんだと思います。そういう方なんです。有り難いです……。さて、今年はみなさん、それぞれ何を歌っていただけるでしょう。芝居の設定もゲストの方々のキャラクターに合わせて書きますので、ぜひ楽しみにしていてください。​

高泉淳子

ーーキャストの中では、中山祐一朗さんも4年ぶりの出演です。

彼はホント、ちょっと癖のある、他にはなかなかいないキャラクターの持ち主ですからね。大好きです。それで4年前“高橋”の相手役、部下として抜擢したんですけれども、どうやら結構な緊張しい、らしいんですよ。こうして30年も続けてやっているようなところに途中参加で入ってくるのって、確かに大変だと思います。毎日眠れなかったらしいですしね。そうは見えなかったけど(笑)。また是非一緒にやりたいと思って声をかけました。意外なところから仕掛けてくる面白い役者です。まあ、この数年の間に彼も結婚したり子供が生まれたりしていて、4年も“高橋”と離れていてどんな風になっているんだか。どういう状況にしようかなあと、思案中です。どこかにいって出世している設定にしようかなとか。​

ーーそうか、この4年の間にキャラクターが暮らす環境が変わっているかもしれないんですね。転職していたりして?

そうですよ、別の仕事をしているのかも。向こうは成功組で、“高橋”は負け組かもしれませんね(笑)。

ーーそして、今後も『ア・ラ・カルト』は続いていく、と。

これからどうなっていくのかは正直、わからないですけれどね。ただひとつ私が近頃思うことは、年をとるといろいろなことが起きるじゃないですか、退職をして生活環境が変わったり、親も年をとってきて介護をしなければならなくなったり、大事な人を失ったり…。自分の人生なんだったんだろう思うこと、あるかと。そんなとき、どんな歌を聞きたいか、どんな映画を観たいか、どんな舞台を観たいだろうか……? もしかしたらその候補に『ア・ラ・カルト』という作品もあるのかなと、思ったりするんです。もちろん他にもいい演劇沢山あるけれど、『ア・ラ・カルト』のような色味の作品って、私はあまり観たことがないなと思っていて。​

ーー確かに、唯一無二ですね。

それに『ア・ラ・カルト』の観客層って、実は演劇ばかり観ている方たちでもないんですね。年に1回だけこのお芝居を観に来るんですとか、コンサートにはよく行くけれどお芝居は『ア・ラ・カルト』だけとか、家族揃ってみんなで観に来るという方もいる。「社会人になって初めて両親にをプレゼントした作品が『ア・ラ・カルト』なんです…」と聞いたりすると、本当に嬉しくなります。人生落ち着いた頃に楽しめる大人の演劇、ステージ、これからなくてはならないと思ってます。観たいとおっしゃるお客様がいる限り、私が動ける限り、この作品はやり続けていきたいですね。​

ーーなるほど、それも素敵なことですね。

私自身もこれから年老いて、だんだん動けなくなってきて、舞台には上れなくなる日がくるでしょう。家の中で四六時中、映画鑑賞じゃねえ。外に出てナマの音楽聞きたいし、踊り観たいし、やっぱり舞台観に行きたい。そのときに、『ア・ラ・カルト』のようなステージ観てみたい。まだ一度も観たことないし(笑)。その日限りの演奏を夢中でプレイするミュージシャン、その日限りの踊りを全身全霊で舞う舞踊家、その日限りの演技を精一杯演じて見せる役者、私の表現の理想です。『ア・ラ・カルト』はそうであって欲しい……。ですからこれからもできる限り、私が動けている間はずっと提供していけたらいいなあと思いますね。​

高泉淳子

取材・文=田中里津子 撮影=鈴木久美子

公演情報

移動レストラン『ア・ラ・カルト』
-美味しいものは心を動かすところにある 30th anniversary

 
<東京公演>
日程:2018年12月14日(金)~12月26日(水)
場所:東京芸術劇場 シアターイースト
<大阪公演>
日程:2018年12月28(金)~12月29(土)
場所:近鉄アート館
 
出演: 役者=高泉淳子/山本光洋/中山祐一朗/采澤靖起  
音楽家=中西俊博(vl)/竹中俊二(g)/パトリック・ヌジェ(acc)/ブレント・ナッシー(b)  
<東京公演>
日替わりゲスト(50音順)=尾上菊之丞/篠井英介/春風亭昇太/高橋源一郎/舘形比呂一/レ・ロマネスクTOBI/ROLLY  
<大阪公演>
ゲスト=ROLLY
 
演出:吉澤耕一  
台本:高泉淳子  
音楽監督:中西俊博
 
前売開始:10月27日(土) 東京・大阪一斉発売
入場料金:7,500円(全席指定・消費税込み)
 
公式サイト:http://alacarte2016.com/
 
協賛:メルシャン株式会社
企画制作:有限会社遊機械オフィス
 
<東京公演>
お問合せ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00~18:00)
主催:サンライズプロモーション東京
<大阪公演>
お問合せ:近鉄アート館 06-6622-8802
提携:近鉄アート館
主催:サンライズプロモーション東京、遊機械オフィス
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