クリムト47点を含む約400点の至宝が集結! 『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』記者説明会レポート
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日本・オーストリア外交樹立150周年記念『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』展が、2019年4月24日(水)〜8月5日(月)にかけて国立新美術館(東京)で開催される。東京での会期終了後は、クリムト18点、シーレ11点、ココシュカ8点を含む巡回展が、8月27日(火)〜12月8日(日)まで国立国際美術館(大阪)で開催される。
この展覧会は、日本・オーストリアの外交樹立150周年を記念するもの。ウィーンの世紀末文化を、「近代化(モダニズム)への過程」という視点から紐解く試みになるという。
展覧会(東京展)フライヤー
東京展で約400点、大阪展は約330点
東京展には、クリムト47点、シーレ22点、ココシュカ17点を含む約400点の作品が公開される。これほどの規模で開催できるのは、所蔵品数100万点強を誇るウィーン・ミュージアムが、リニューアルに伴い一度閉鎖されるタイミングだからなのだそう。ウィーン・ミュージアムの拡張・修復工事は2019年3月のはじめから。完成は2022年暮れの予定。
ウィーン・ミュージアム ウーズラ・ストーク 副館長
絵画、建築、工芸、音楽を網羅する
出品数だけでなく、その網羅性にも注目したい。油彩画だけでなく、工芸、デザイン、インテリアなど、様々なタイプの美術品を紹介する。日本でも人気のクリムトやシーレの作品を中心に据えつつ、彼らが活躍するよりも前の時代(18世紀中ごろ)から扱うことで、ウィーンの芸術文化が熟していく背景にもライトをあてる。
グスタフ・クリムト《第1回ウィーン分離派展ポスター》(検閲後) 1898年 カラーリトグラフ 97×70 cm ウ ィーン・ミュージアム蔵 (C) Wien Museum / Foto Peter Kainz ※大阪展では同作品の別版を出展します。
「世紀末芸術」は突然生まれたわけではない
国立新美術館 本橋弥生 主任研究員
「ウィーン・モダン」という言葉は、展覧会のための造語だという。これについて、国立新美術館主任研究員の本橋弥生氏は次のように語る。
「19世紀末から20世紀初頭にウィーンで開花した『世紀末芸術』と呼ばれる芸術運動を、モダニズム、あるいは、モダニズムへの過程であると捉えることを主旨としています。これまでは注目されてきませんでしたが、『世紀末芸術』は突如として誕生したものではありません。18世紀に蒔かれた種が19世紀に育まれ、19世紀末から20世紀の初頭にかけて開花したもの」
そのプロセスを、実際の美術作品、数々の傑作を通してたどることが、『ウィーン・モダン』のコンセプトだという。
クリムトにシーレ、ウィーン工房が手掛けたココシュカのカラーリトグラフ、銀食器や、音楽家シェーンベルクが手掛けた絵画作品に、建築家オットー・ヴァーグナーの素描など、見どころは尽きないが「皆さまウィーンの芸術の中でも、興味のあるところは少しずつ違うかと思います。どこがお好きだとしても、期待を裏切らない内容」と、本橋氏は笑顔をみせた。
アルノルト・シェーンベルク《グスタフ・マーラーの埋葬》1911年 油彩/カンヴァス 43×34 cm ウィーン ・ミュージアム蔵 (C) Wien Museum / Foto Peter Kainz
『ウィーン・モダン』全4章の概要
会見風景
この展覧会は、「啓蒙主義時代のウィーン」「ビーダーマイアー時代のウィーン」「リング通りとウィーン」「1900年-世紀末のウィーン」の4つのテーマのもと、全4章で構成される。第1〜3章は本橋氏が、第4章はウィーン・ミュージアム副館長のウーズラ・ストーク氏が見どころを語った。
第1章「啓蒙主義時代のウィーン」では、女帝マリア・テレジアと、その息子ヨーゼフ2世が統治した時代背景を紹介する。
第2章のテーマは、「ビーダーマイアー時代のウィーン」。ナポレオン戦争終結後の1814年から15年にウィーン会議が開催され、1848年に革命が勃発するまでの期間を「ビーダーマイアー」と呼ぶ。この時代は家具も工芸品も、極端なまでに装飾を排除したものだという。素材の美しさやシンプルなプロポーションが特徴であり、20世紀のモダンデザインに通じるものがあるそうだ。
19世紀中ごろから後半を紹介するのが、第3章「リング通りとウィーン」。中世の古い城壁を取り壊し、ウィーンが近代都市へと変わっていく。ミュージカルの人気作『エリザベート』で描かれる時代でもある。クリムトに影響を与えた画家、ハンス・マカルトの《1879年の祝祭行列のための素描ー菓子製造組合》は、この章で展示される予定。
第4章「1900年-世紀末のウィーン」で扱われるのは、建築家オットー・ヴァーグナーが、ウィーンの近代的な都市デザインプロジェクトを多く提案した時代だ。プロジェクトのうちで実現に至ったものは、現在のウィーンの街並みを印象づけているという。クリムトやシーレ、ココシュカなどの絵画作品も、この章で紹介される。
オスカー・ココシュカ《「クンストシャウ、サマーシアター」の演目、『殺人者、女たちの希望』のポスタ ー》1909年 カラーリトグラフ 125.5×82 cm ウィーン・ミュージアム蔵 (C) Wien Museum / Foto Peter Kainz ※東京展では同作品の別版を出展します。
グスタフ・クリムトの《エミーリエ・フレーゲの肖像》
グスタフ・クリムトのキャリアは、リング通りのいくつかの建物の装飾の仕上げの仕事からはじまったという。その後、画家として活躍し、1897年には若い画家たちを率いて、ウィーン分離派を結成する 。
「成功した市民階級の女性たちにとって、クリムトに肖像画を描いてもらうことは、世間に向けて、良い印象をイメージづけるためのものでもありました」
グスタフ・クリムト《エミーリエ・フレーゲの肖像》1902年 油彩/カンヴァス 178×80 cm ウィーン・ミュ ージアム蔵 (C) Wien Museum / Foto Peter Kainz
今回の展覧会ポスターにも採用されているクリムトの《エミーリエ・フレーゲの肖像》は、ウィーン・ミュージアムのコレクションの中でも、最も有名な作品のひとつ。
「描かれているのは、姉とともに高級ブティック『フレーゲ姉妹モードサロン』を営んでいたエミーリエです。グスタフ・クリムトの人生の中でも、最も大切な女性でした。ふたりの関係は、当初は恋愛から始まったとされていますが、その後はクリムトが死ぬまで続く、分かちがたい友情で結ばれたものとなりました」
この作品は、クリムトが注文を受けたわけではなく自ら描いた、唯一の女性ポートレートなのだそう。
早世の天才画家エゴン・シーレ
エゴン・シーレ《自画像》1911年 油彩/板 27.5×34 cm ウィーン・ミュージアム蔵 (C) Wien Museum / Foto Peter Kainz
クリムトの次の世代に属し、表現主義の画家として活躍したのがエゴン・シーレだ。クリムトより18歳若いシーレは、28歳の若さで、スペインかぜでこの世を去る。
「表現主義の画家の肖像画は、描かれた人物の外面的にみるものよりも、内面を重視し、内面を再現する試みが特徴です」
さらに同時代の作品として、カール・モルの絵画や、コロマン・モーザーのグラフィック作品も展示される。
ウィーンの芸術文化を集結する展覧会
「オーストリア国内でも例のない規模」とストーク氏が語り、「通常の展覧会が2〜3回企画できてしまう出品数」と本橋氏も語る、大展覧会『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』は、2019年4月24日から8月5日まで。
東京展と時期を同じくして、4月23日から7月10日には、偶然(主催者説明よる)にも、上野・東京都美術館で『クリムト展 ウィーンと日本 1900』が開催されるので、あわせてチェックしたい。
なお『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』の入館料は、後日発表の予定。
イベント情報
『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』
東京会場
■会期:2019年4月24日(水)~8月5日(月)
■会場:国立新美術館 企画展示室1E
大阪会場
■会期:2019年8月27日(火)~12月8日(日)
■会場:国立国際美術館
展覧会HP:https://artexhibition.jp/wienmodern2019/