吉田鋼太郎演出の『ヘンリー五世』、松坂桃李らキャストのビジュアル撮影現場をレポート!
(右から)吉田鋼太郎、松坂桃李
蜷川幸雄の後継者として、彩の国さいたま芸術劇場にてシェイクスピア全37戯曲の完全上演を目指すシリーズの2代目芸術監督で演出、そして自ら出演もしている吉田鋼太郎。吉田演出版のシリーズ2本目にあたる『ヘンリー五世』が、いよいよ始動開始した。先日、都内のスタジオにて吉田を筆頭に、主演のヘンリー五世役の松坂桃李、フランス皇太子役の溝端淳平、フランス王役の横田栄司、ピストル役の中河内雅貴、フルエリン役の河内大和が順々に集まり、チラシやパンフレットのためのヴィジュアル撮影が行われた。その模様をレポート、加えて各キャストの意気込みもインタビューしたので紹介する。
グレイのバック紙を前にタキシード姿の吉田がフロア中央にスッと立つと、撮影がスタート。シャッター音に合わせて、カメラマンの「Good!」という声がリズミカルに響く。「ライトに向けて、身体を振ってください」「目線はカメラでお願いします」「ちょっと大きめなポーズで」など、デザイナーの指示に合わせてポーズを変えていく吉田。何枚か撮った時点で、モニターチェック。スタッフたちが「カッコイイ!」と言いながらモニターを覗き込んでいると、吉田も自らチェックしに来て「いいじゃない!」と満足げに微笑んでいる。
吉田鋼太郎
吉田鋼太郎
デザイナーが「では次は説明役っぽい表情で」と注文を出すと、「後ろのほうから見守ってる風がいいかもね」と吉田。そこで、腕を組んだり、逆に手を大きく広げてみたりと、少しずつ動きを加えていく。「目に優しさが出ているのでもう少し厳しめに」というリクエストが耳に入ると、キリッと目に力を込めてからポーズ。「目ヂカラがいいですね!」と声がかかると、つい照れ臭そうにプッと吹き出して笑ってしまう場面も。さらにカメラが近寄り、アップを撮ることになると箱馬に座り、少し前傾姿勢に。強めの照明を当てて、陰影を濃く出すシリアスモードのショットとなる。「ナイス、かっこいい!」とのカメラマンの声に、早速モニター前に確認しに行った吉田は「なんだか俺じゃないみたい。これ、いいな。家に飾りたいくらい!」と、嬉しそうな表情。
吉田鋼太郎
順調に撮影が進み吉田のソロショットが撮り終わると、次は松坂桃李とのツーショット撮影に。久しぶりだったのか、顔を合わせた途端に吉田が「痩せたねえ」と声をかけると「この前まで撮っていたドラマでちょっと痩せなきゃいけなかったんで……」と松坂。待機中には、ドラマ『ゆとりですがなにか』で共演した当時の話になり、その一瞬で大いに盛り上がる二人。
(右から)吉田鋼太郎、松坂桃李
撮影が再開されると、「お待たせしました!」と会釈しながら登場した松坂は、長いマントを肩から後ろに垂らすように衣裳に装着している。デザイナーから「最初は二人ともカッコいいイメージで」と言われると、ピシッと背筋を伸ばしてポーズ。カメラマンからの「男らしく足を広げて」「右手の親指をポケットに入れてみて」などの細かい指示にもひとつずつ丁寧に反応していく。照明の位置を微調整する間の、ちょっとした待ち時間も談笑する吉田と松坂の姿を見て「そのリラックスしている雰囲気もいいね」と、すぐさまシャッターを切るカメラマン。そんな楽しげな二人も、シリアスな表情で見つめ合う二人も、どちらもかなり絵になるショットが撮れていた模様だ。このあとも、キャストたちはそれぞれ同様にソロショットの撮影に挑んでいた。どんなビジュアルになったのか、発表されたチラシやポスターで確認しよう。
(右から)吉田鋼太郎、松坂桃李
松坂桃李
そしてこの日、ビジュアル撮影を行った松坂、溝端、横田、中河内、河内にそれぞれインタビューを行うことができた。彼らに作品への想いや意気込みなどを訊いた。
松坂桃李
松坂桃李
鋼太郎さんの演出を受けるのは今回初めてなので、どうなるんだろうとドキドキ感があります。実は鋼太郎さんって、普段はお風呂みたいにあったかい人だなって感じがしているんですけどね(笑)。『ヘンリー四世』で初めてシェイクスピアのセリフに挑戦した時は非常に難解で理解するのに時間がかかってしまいましたが、稽古をすればするほどセリフに込められた愛の表現などがわかるようになってきて、すごく素敵だと感じました。それから5年以上経ち、今度は『ヘンリー五世』をやらせていただくわけですが、この5年あまりで経験してきたものをすべてぶつけたいと思っています。難解なセリフも多いシェイクスピアということで、わかりにくいと思われるかもしれませんが、どんな人が観てもスッと物語に入っていけるように、スタッフ、キャスト共にカンパニー一丸となって作っていきたいと思っています。
溝端淳平
溝端淳平
前回『ヴェローナの二紳士』で初のシェイクスピア作品、しかも女性役に挑ませていただきました。僕にはそれが最後の蜷川さんと共有できた時間で、いろいろなことをまだ覚えていますし、その記憶は一生の宝物だと思っています。その蜷川さんのシェイクスピアシリーズを、尊敬してやまない吉田鋼太郎さんが継いで演出してくださるということで、今回はお声をかけていただき本当に感謝しています。今日の撮影でも本番の衣裳でないとはいえ、鋼太郎さんがこだわって選ばれた衣裳なので袖を通すと身が引き締まる思いがしました。『ヘンリー五世』は歴史劇でもあるので、その時代の歴史背景、現代の自分たちにはない情緒や熱量を大事にし、言葉ひとつひとつ漏らすことなくセリフを大切に言うことを心がけようと思います。蜷川さんの遺志を根底に鋼太郎さんの斬新な演出のもと、誠心誠意お芝居させていただくつもりです。
横田栄司
横田栄司
僕は新国立劇場版の『ヘンリー五世』にも出ていますが、前回はイングランド軍側の役柄でした。今回はフランス軍、しかもフランス王をやらせていただきますので、今回はもしかしたらフランスが勝つんじゃないかと、そんな気持ちでやろうかと思っています(笑)。鋼太郎さんがこの作品をどう演出されるのか、とても楽しみです。当たり前ですけど鋼太郎さんがいるだけで作品が充実しますし、とにかく力強くて頼もしい先輩なのでいてくださるだけで本当にありがたいです。なんといっても日本のシェイクスピア界の大黒柱ですからね。蜷川さんや鋼太郎さんとやっているこのシリーズは、大げさな言い方をすると日本のシェイクスピア上演史の一部だと思います。今回の『ヘンリー五世』も本当に面白い歴史エンターテインメントになるはずですので、ぜひともお見逃しなく!
横田栄司
中河内雅貴
中河内雅貴
以前、吉田鋼太郎さんが出演されていた『ジュリアス・シーザー』をさいたまに観に行った時に、蜷川さんにお会いすることができ「君と一緒に何かできたらいいね」と言葉をかけていただいていたんですが、結局それは叶わぬ夢になってしまいました。その後、僕も役者としてもうひとつ、ふたつ階段を上がりたいなと思っていた時期に『ビリー・エリオット』で鋼太郎さんと初めてご一緒することになり、俳優としていろいろと教えていただきました。そして、今回こんな大きなチャンスをいただくことができました。今まで自分が得てきたものをすべて出して、さらに一皮むけたらという思いでがんばります。稽古場では恥をかきながら、自分にできることを精一杯駆使して全力で挑みたいです。ピストルという役は無頼漢でお調子者、でもとてもやりがいのある役です。蜷川さんにも観ていただくつもりで、鋼太郎さんを信じて突き進んでいく覚悟です!
中河内雅貴
河内大和
河内大和
『ヴェローナの二紳士』で初めてこのシリーズに参加させていただき、前作の『アテネのタイモン』で吉田鋼太郎さんの演出を受けられた時は本当に楽しかったです。しかも今回はフルエリンの役をオファーいただいて、大役過ぎてまさかと思いながらも率直に嬉しかったです。死に物狂いでやりたいですね。『ヘンリー五世』は戦争を背景にした作品なので、血のたぎり方が登場人物たちの言動や感情から滲み出てきますし、出てくるキャラクターもそれぞれが個性的なので彼らがイキイキと動くだけでかなり面白くなると思います。その上でしっかりと人間ドラマもありますので、当時のイングランドとフランスの史実を知らなくても、舞台上に戦場の風が吹くさまを楽しめるのではないでしょうか。自分としてはとにかく鋼太郎さんをガッカリさせないよう、そしていい意味でそのイメージを壊せるように演じてみたいですね。
河内大和
【完成したビジュアルはこちらの記事から】
吉田鋼太郎演出、松坂桃李主演 彩の国シェイクスピア・シリーズ第34弾『ヘンリー五世』ソロビジュアル&プロモーション映像が解禁
吉田鋼太郎演出、松坂桃李主演、彩の国シェイクスピア・シリーズ第34弾『ヘンリー五世』のチラシヴィジュアルが解禁&インタビュー動画も到着
取材・文=田中里津子 撮影=敷地沙織
公演情報
吉田鋼太郎 溝端淳平 横田栄司 中河内雅貴 河内大和
鈴木彰紀* 竪山隼太* 堀 源起* 續木淳平* 高橋英希* 橋本好弘 大河原啓介 岩倉弘樹 谷畑 聡
齋藤慎平 杉本政志 山田隼平 松尾竜兵 橋倉靖彦 河村岳司 沢海陽子 悠木つかさ 宮崎夢子
*さいたまネクスト・シアター
<スタッフ>
作: W.シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)
美術:秋山光洋
照明:原田 保
音響:角張正雄
衣裳:宮本宣子
ヘアメイク:佐藤裕子
擬闘:栗原直樹
演出助手:北島善紀
技術監督:小林清隆
舞台監督:やまだてるお
制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団、 ホリプロ
企画:彩の国さいたま芸術劇場シェイクスピア企画委員会
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
■一般発売:11月17日(土)
期間:2019年2月8日(金)~24日(日)<全19回>
劇場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
http://www.saf.or.jp
【仙台公演】
期間:2019年3月2日(土)~ 3日(日)<全3回>
劇場:仙台銀行ホール イズミティ21・大ホール
主催:仙台放送
共催:(公財)仙台市市民文化事業団
http://ox-tv.jp/sys_event/p/
【大阪公演】
期間:2019年3月7日(木)~ 11日(月)<全6回>
劇場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
主催:梅田芸術劇場/ABCテレビ
http://umegei.com/schedule/767/