SHISHAMO ワンマンツアー初日のレポ到着 『SHISHAMO 5』楽曲を軸に披露した熟成ぶりと新境地
SHISHAMO 撮影=岡田貴之
SHISHAMO ワンマンツアー2018-2019
「ねぇ、あなたとあの娘は夢でしか逢えない間柄なのにどうして夜明けにキスしてたの?」
2018.11.9 Zepp DiverCity
宮崎朝子(Gt&Vo)、松岡彩(Ba)、吉川美冴貴(Dr)が登場すると、盛大な拍手が起こった。“ホーム”と言いたくなるくらい、このオール・スタンディングの空間がSHISHAMOの3人にはしっくりきている。ステージから観客席の上まで、たくさんの電球が吊された空間はどこか幻想的だ。11月9日のZepp DiverCity。11月2日に台北 Legacy Taipeiでのライブを行っているものの、日本国内ではこの公演が初日ということになる。「本日はツアー、国内初日です。楽しんでいきたいなと思います」と宮崎のMC。この日のステージ、歌の世界の幅はさらに広がり、曲に込められた感情がより深く、より強く、より鋭く届いてくる。バンドは着実にパワーアップしていた。
SHISHAMO・宮崎朝子
6月にリリースした最新作『SHISHAMO 5』のアルバム・ツアーという位置付けのステージ。このツアーが初披露となる曲もたくさん演奏された。当たり前のことだが、家でアルバムを聴くのと、ライブ空間で実際に聴くのはまったく違う。ステージ上で新曲の数々と出会うのはとても刺激的な体験となった。学校に例えるならば、クラスにたくさんの転校生が一挙にやってきたようなワクワク感、ドラマに例えるならば、個性的な新キャラが続々と登場してきたようなスリルがある。この曲がここで演奏されるのか。こんな表情を持っていたのか。こんな届き方をするのか。驚きの数々がステージに新風を吹かせていく。
SHISHAMO・松岡彩
SHISHAMO・吉川美冴貴
台北でのライブ後ということで、3人がそれぞれ、MCのために覚えた台湾の公用語である中国語(北京語)のフレーズを披露する場面もあった。「謝謝」(シェイシェイ)といった簡単な言葉だけでなく、複雑な長文も披露されて、バンドの海外公演にのぞむ真摯な姿勢も見えてきた。楽曲の数々からは天才的なきらめきも感じるのだが、SHISHAMOは基本的には努力型の真面目なミュージシャンの集合体だと思うのだ。3人とも台湾公演について、「楽しかった」とのこと。バンドは未知の体験も糧として、ツアーにのぞんでいた。
SHISHAMO・宮崎朝子
アルバムのリリースからは半年あいたが、新曲を熟成させる期間にもなっていたのではないだろうか。新曲が加わることで、曲調もリズムもコーラスもさらに多彩になり、構成もさらに起伏に富んだものになっていた。SHISHAMOの楽曲史上、もっともせつない曲だと個人的に思ってた曲も披露された。せつなさの極地と表現したくなる歌と演奏に胸が震えた。もしも数値化して計測できたならば、せつなさ指数は過去最高の値を記録していたのではないだろうか。孤独感や疎外感や虚無感など、パーソナルな思いをさらけ出していく歌も披露された。胸の奥底にある感情をきっちり表現していくには、テクニックはもちろん、メンバーそれぞれが歌の世界を深いレベルで共有することが不可欠になってくる。ズシッとした感触をもたらす演奏が見事だった。
SHISHAMO・宮崎朝子
最新アルバムの曲以外にも人気曲、定番曲も演奏。会場内が一体となって盛り上がり、熱気に包まれた。国内初日ということで、メンバーそれぞれ、かなり緊張したとMCで語っていた。宮崎は自分ではまったく緊張してないと思っていたのに、間違えて、履くつもりだったものとは違う靴を履いてステージに上がってしまったとのこと。吉川は開演時間を30分間違えて、心の準備が整う前にステージに上がってしまったという。松岡は純粋に、素で緊張していたとのこと。が、客席の歓声や笑顔や熱気によって、メンバー3人は初日の緊張感を集中力へと変換して、エネルギッシュかつエモーショナルなステージを展開した。
SHISHAMO・松岡彩
SHISHAMO・吉川美冴貴
ワンマンツアーの恒例のMCコーナーとなっている“吉川美冴貴の本当にあった○○な話”では、ドラムを練習していて腰を痛めて、早く直したかったので整体に行ったエピソードが紹介された。往診表に職業・ドラマーと書いて出したら、整体師が「バンドやってるんですか? 東京ドームとか目指してるんですか?」と話を振ってきたのだという。さらに治療している相手がSHISHAMOのメンバーと知らずに、「等々力とかどうですか? 夏にSHISHAMOが中止になったじゃないですか?」と振ってきたのだという。意外な展開、MCのクオリティーの高さがすごい。と同時に、腰を痛めるほどに練習していることもうかがえる。こうした地道な努力が着実な成長に繋がっているのだろう。
「新曲をやっても良いでしょうか。出来たてほやほやの曲なんです」との宮崎の言葉に会場内が「おおっ!」とどよめいて、未発表の新曲も演奏された。クラビネット的な音色のキーボードのシーケンサーも加わり、ファンキーなテイストも備えた16ビートを基調とした曲だ。嫉妬心や独占欲がモチーフとして描かれていて、胸の奥の闇の部分があぶりだされていく。この曲もSHISHAMOの新境地と言えそうだ。胸に染みるというよりも、胸に突き刺さってくるような歌や、胸の奥に沈んでいた感情をえぐり出していく歌が目立っていた。ダークな歌と演奏、ディープな世界に引きこまれる場面が多く、一般的にネガティブと言われるような感情を極限まで掘り下げて演奏することによって、ハッピーに盛り上がる曲とはまた違う次元でのカタルシス、浄化作用をもたらしていく。このヒリヒリとした気持ち良さはクセになりそうだ。
SHISHAMOが描くキラキラした光の世界も魅力的だが、ヒリヒリしていて、グサグサ刺さってくる闇の世界も魅力的だ。そうした歌の世界観と電球の光を効果的に使った空間とがよく似合っていた。様々な角度から、爽快感や痛快感や感動や興奮を味わう夜となった。今回のツアー、これまでの魅力に加えて、新たな魅力がたくさん加わっている。最新アルバムの楽曲はおそらくツアーの中でもどんどん違う表情を見せていくに違いない。1本1本が唯一無二。SHISHAMOは今、そんな貴重なツアーを展開している。
取材・文=長谷川誠 撮影=岡田貴之
今回のワンマンツアーは全箇所2DAYSで開催されており、それぞれの日にしか演奏しない楽曲も用意されている。2日間それぞれに楽しめるのは当然のこと、さらに両日観ることで完成するようなライブとなっている。
そして先日開催されたZepp Osaka Bayside、Zepp Nagoyaのライブ中にはそれぞれ大阪と名古屋での追加公演を発表。追加公演は『SHISHAMO ワンマンツアー2018-2019 追加公演「ねぇ、あなたとあの娘は夢でしか逢えない間柄なのにどうして夜明けにキスしてたの?」スペシャル!!!』と題されており、どんな“スペシャル”な内容になるのか、期待が集まる。
ツアー情報
「ねぇ、あなたとあの娘は夢でしか逢えない間柄なのにどうして夜明けにキスしてたの?」
SHISHAMO ワンマンツアー2018-2019
18:00 OPEN / 19:00 START
17:00 OPEN / 18:00 START
17:00 OPEN / 18:00 START
16:00 OPEN / 17:00 START
18:00 OPEN / 19:00 START
17:00 OPEN / 18:00 START
18:00 OPEN / 19:00 START
17:00 OPEN / 18:00 START
代:券種
1Fスタンディング 前売¥5,000-(税込)
2F指定席 前売¥5,000-(税込)
※ドリンク代別途必要
※3歳以上必要
※仙台公演は2F指定席なし
SHISHAMO ワンマンツアー2018-2019 追加公演
「ねぇ、あなたとあの娘は夢でしか逢えない間柄なのにどうして夜明けにキスしてたの?」スペシャル!!!
1月19日(土) 大阪 Zepp Osaka Bayside
17:00 OPEN / 18:00 START
1月20日(日) 大阪 Zepp Osaka Bayside
16:00 OPEN / 17:00 START
1月25日(金) 愛知 Zepp Nagoya
18:00 OPEN / 19:00 START
1月26日(土) 愛知 Zepp Nagoya
17:00 OPEN / 18:00 START