大泉洋が『障害者週間』講演会に登壇 「少しでも障害者と健常者の垣根をなくせる映画になれば」
左から、渡辺一史氏、大泉洋、大西瞳氏
12月4日(火)、東京・新宿ピカデリーにて行われた講演会に映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』主演の大泉洋、映画の原作者・渡辺一史氏、義足アスリート・大西瞳氏が登壇した。
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』は、渡辺一史氏のノンフィクション『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』(文春文庫刊)を原作とした映画。難病・筋ジストロフィーに羅患した鹿野靖明さんと、彼を支えるボランティアたちの不思議な関係を描いた物語だ。映画では、鹿野さんと同じ北海道出身の大泉洋が演じ、ボランティアスタッフの田中役で三浦春馬、美咲役で高畑充希、高村役で萩原聖人が出演している。
(C)2018「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」製作委員会
講演会は、12月3日から9日の期間で開催される『障害者週間』の特別企画として実施。鹿野さんのボランティアとしても活動した渡辺氏と、パラリンピックで活躍するランナーである大西さんが、映画を通じて思う障害者の自立生活や、社会参加への考え方などについて意見を交わした。
会場に駆け付けた大泉は、「この映画のタイトルを見た時には、なんてわがままを言う人なんだと正直思ってしまいました」と告白。撮影後にはとらえ方が変わったことに触れつつ、「あのタイトルを見ても、わがままだなんて思わなくなった」とコメント。撮影時には、鹿野さんを知る人々に話を聞きながら演技に臨んだという大泉。「関係者の方から話を聞いていると、それだけで感情移入してしまって、これから撮影だというのに泣いてしまうこともあったんです」と振り返った。
一足先に映画を鑑賞した大西氏は、「はじめは“わがまま”にしか聞こえなかったんですが、観ていくと、これは鹿野さんが自分らしく生きる上で必要なことなんだと感じるようになりました」と、やはり物語が進むにつれて鹿野氏への対する印象が変わったことを明かす。実際に生前の鹿野氏と交流のあった渡辺氏は、「この映画が、わがままっていうのをどうとらえるのか……健常者にとってはわがままだけど、障害者にとってはどうなのかそれを考えるきっかけになってほしい」と、原作・映画と一貫して込められた思いを語る。また、大泉が演じた“劇中での鹿野さん”については、「この映画を見た鹿野さんのお母さんも、『本当によみがえったんじゃないかと思った』と言われていたんです。それくらい大泉さんが演じた鹿野さんは、本人と瓜二つでしたよ」とべた褒め。大泉も「本当に鹿野さんのドキュメンタリーをやっているんではないかと思うほどでした」と語った。
左から、渡辺一史氏、大泉洋、大西瞳氏
また、渡辺さんは、劇中で語られる障害者の自立や社会参加について、「鹿野さんみたいな障害者の人たちにとって自立とは、“自分がどうしたいのかを自分で決める”ことなんだと、鹿野さんも訴えてきたと思うんです。そのために、人の助けを借りながら、共に生きていくことができる社会になってほしいと思います」と話した。大西氏は「障害者の方、健常者の方どちらにも、できる事、できない事は当然あるので、それを理解しあえる世の中になってほしいですね」とコメントしている。
最後に大泉は「子供には、『人に迷惑をかけるんじゃない』と、今まで教えることがありましたが、人に迷惑をかけることを恐れるよりも、自分でできないことがあれば、助けを求める。そして、逆に助けを求められた時には助ける。それが大事なんだと思いました」と語る。一方で、「でも、この映画は決して堅いメッセージがあるわけじゃないんです。笑える部分も多いので、気軽に見ていただいて、障害者の方と、その周りの方々の関係性や接し方について考えるきっかけにしてほしい」とアピール。さらに「この映画のタイトルがわがままに聞こえない社会になると良いなと思いますね。少しでも障害者と健常者の垣根をなくせる映画になれば」と、講演会を締めくくった。
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』は12月28日(金)より全国ロードショー。