サカナクション・山口ほか登壇!「劇場・ホール2016年問題」を考える

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2015.11.6
劇場・ホール2016年問題・記者会見

劇場・ホール2016年問題・記者会見

今、首都圏の劇場やホール、アリーナ施設の閉鎖が相次いでいることはご存知だろうか?

この10年ほどで、新宿コマ劇場、厚生年金会館、青山劇場といった1000人~2000人を収容する劇場、横浜BLITS、SHIBUYA-AXなどのコンサート会場、五反田ゆうぽうと、カザルスホールといったバレエやオペラで何度となく使われてきたホールが次々と閉鎖となり、さらに老朽化などの問題で日本青年館、渋谷公会堂、パルコ劇場といった横浜アリーナ、さいたまスーパーアリーナ、東京国際フォーラムA,C、日比谷公会堂、代々木競技場第一体育館など、音楽・演劇・各種式典で使われる会場が改修・改築により一時閉鎖となる。2016年中に閉鎖となる会場の席数を合わせるとざっと64000を超える、なんともすさまじい状況だ。この結果、コンサート会場が壊滅的に不足してしまうことが現在深刻な問題となっている。

劇場・ホールの閉鎖および改修・建替え時系列表(会見資料より抜粋)

劇場・ホールの閉鎖および改修・建替え時系列表(会見資料より抜粋)

この閉鎖の原因は、決して観客が減少していることによるものではない。事実、コンサートの公演数や聴衆数はここ10年で急増しており、ミュージカル、オペラ、バレエ、演劇などの観客も順調に伸びている。しかし、劇場設置者の経済的な理由などから閉館となったり、先に触れた老朽化の問題、耐震補強や機能改善などのための改修・建て替えを迫られると、それをきっかけに施設の維持・運営が断念されるという残念な傾向にある。

この状況に危機感を覚え、エンタメのジャンルを問わず、解決の糸口を共に考えていくための第1歩として、本日、都内で記者会見が開かれた。

会場には、主催者である野村萬(日本芸能実演家団体協議会会長)をはじめ、サカナクションの山口一郎、バレエダンサーの斎藤友佳理、尺八奏者の川瀬順輔、JAM Projectの影山ヒロノブが登壇。古典芸能、音楽、ダンス、邦楽、アニメといった普段はなかなか交わることがないジャンルを代表するメンバーが顔を揃え、胸中を語った。

山口一郎(サカナクション)

山口一郎(サカナクション)

先日、1年半ぶりに日本武道館でコンサートを催したサカナクションの山口は、「コンサート会場でしかできないエネルギーの交換のようなもの、コンサート会場での出会いも数多く生まれてきた。だが、現在会場の確保が非常に困難になっている。待ってくれているファンがいてそれに応えたい僕らがいる。だがそれが実現できない…1年、1年半と会場が使えない制約がかかってしまう。音楽を愛する皆さんとアーティストが出会う場所が首都圏域を中心にどんどん減ってしまうことを危惧しています」と語り、「今まで1万人規模の会場を使っていたアーティストが5千人規模の会場を使うと、そこを2日間使うことになり、5千人規模の会場を使っていたアーティストは2千人規模の会場を2、3日間使うことになり、2千人規模の会場を使っていたアーティストは…玉突き現象で最後はライブハウスにまで影響が出てしまうかも。新人アーティストがライブハウスに出たくても入る隙間がないことになる」と危惧した。

野村萬

野村萬

もちろん、改修・改築は観客の安心・安全のために行われていることは皆十分承知の上だが、「改修時期の調整、代替施設の確保や既存のホールの有効活用についても十分考えてほしい」という思いもあるようだ。

斎藤友佳理

斎藤友佳理

バレエ界を代表して、斎藤は「総合芸術の上演できる条件と機構があるバレエに携わるものにとっては五反田ゆうぽうとの閉館で大きな影響を受けた。東京のほとんどの劇団がここで上演し、稽古やリハーサルなどを含め年間150日ほど使ってきた。総合芸術の道を選んだ若者たちは5年後、10年後、その舞台に立つために国の援助などなくても一生懸命取り組んできた。でもその発表をする場がなくなると、抱いてきた目的を果たせないことになる。それが深刻なことです」と後進の育成についても危機感をあらわにした。

影山ヒロノブ(JAM Project)

影山ヒロノブ(JAM Project)

また影山は「アニソンというジャンルが年々大きくなっており、当初は小規模だったコンサートも今やさいたまスーパーアリーナで数日間開催され、満員となるくらいの大規模開催となった。観客にとってもライブが生活の一部になってきている。その願いをつなげていくこと、行える場所の確保がとても大事」と語り、世界に発信していく日本文化の一つとしてそれを発信する場が減っていくことを憂いていた。

川瀬順輔

川瀬順輔

「首都圏の劇場・ホールが減るなら地方公演を増やすなど、全国規模で考えられることはないか?」といった質問も飛んだが、これに対して山口は「関東での公演がいちばん収益が出るんです。一方、地方公演はスタッフ全員・機材などすべてを東京から運んでいくので、経済的にも負担がかかるんです。僕らは関東での収益を主にして、地方公演をしていく。だから関東でのコンサートが不足すると、地方にも行けなくなってしまうんです」影山は「東京公演が組めないと、そこから続く地方公演のスケジュールも組めず、会場も抑えられず、スタッフが大変な思いをしている」と、そう簡単に事は進まない旨を口にした。

山口一郎(サカナクション)

山口一郎(サカナクション)

2020年の東京オリンピックに向け、スポーツ施設の改修が進んでいることは誰もが知っていること。一方、開催国の文化が注目されるのもオリンピックの特徴でもある。身近な場所で文化や表現の場が減っていくことは、長い目で見ると、日本の文化そのものが失われていくことでもある。今回の会見では、まずはこの件について社会的関心を作りたいという思いがあり、中には、経済的な問題で閉館を考えている企業に対する国の支援、現状、国や市の条例などで、使用規制されている文化施設の利用や現存する施設の利用時間の緩和、スケジュールの延長といった貸館ルールの見直しなど、具体的な要望も出ていた。

これはすべてのジャンルにまたがった問題。そして、アーティスト側だけの問題でもない。ここからどういうアクションを起こしていけばいいか、一緒に考えてほしい、という思いを残して会見は終了となった。

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