クリスマスシーズンを熱く盛り上げたエリアンナ初のワンマンライブ!【ライブレポート】
エリアンナ
渋谷の街並みがイルミネーションでキラキラと輝き、クリスマスムードの高まる12月13日、シンガーとしてまたミュージカル俳優として活躍するエリアンナの単独ライブ「Message ~ Christmas Edition 〜」が、道玄坂のeplus LIVING ROOM CAFE&DININGで、開催された。
アニメ、CM、ゲーム音楽等のシンガーとしての活躍と同時に『RENT』『アイ・ガット・マーマン』『プリシラ』『ビューティフル』『メリー・ポピンズ』等、優れたミュージカル作品の数々に出演し、卓抜した歌唱力を披露してきたエリアンナは、eplus LIVING ROOM CAFE&DININGで不定期に開催されている「Living Room MUSICAL」にも出演。パワフルな歌の数々で、会場にスタンディングオベーションの熱狂をもたらしたことが記憶に新しい。
そんな彼女の意外にも初となる単独ライブとあって、この夜は開始を待つ人々の期待でスタート前からヒートアップ状態。おそらく同業者だなと思える人々も多く詰めかけ、客席からも実に華やかな雰囲気が漂う中、イントロが流れると「みなさんこんばんは~!」と明るい挨拶と共にエリアンナが登場。ステージに上がってまず1曲目に「This Christmas」を。季節に相応しいクリスマスソングも十二分にソウルフルでたった1曲でエリアンナの世界が広がった。
■エリアンナの個性に染まるクリスマスソングの数々
続けて「Christmas Song」が一転しっとりと歌われるが、その静かな中にも芯の強さがあるのが心地よい。大きな拍手の中「来てくれて嬉しい! あー楽しい! 皆の顔が見える!」と挨拶するエリアンナも興奮を隠せない様子。ソロシンガーデビュー15周年を記念しての初単独ライブを、エリアンナ自身が特別に大切なものとして受け止めているのがよく伝わってくる。
この日のステージを共に創るピアノ・エレピ・バイオリンの半田彬倫、アコースティックギターの小川翔が紹介されての3曲目は桑田佳祐の「白い恋人たち」。はじめは優しく語るように、次第に高音も地声で迫力を増していく変化に富んだ歌い方で魅了した。
ここで一旦バンドメンバーが退場して、YouTubeチャンネルで人気の「アカぺリアンナ」の説明がある。簡単に言うと、エリアンナの声を重ねていく一人多重録音による楽曲で、こんなものになりますという提示のつもりでアップした童謡の「ぞうさん」が大好評だったことから、童謡シリーズが続けられている。「大真面目にふざける、という私にピッタリの企画」とのことだが、今夜はこの「アカぺリアンナ」もクリスマスソングをチョイス。聖歌の「Angels We Have Heard On High(荒野の果てに)」が披露されたが、生の歌唱と本人の多重録音によるコーラスとの共演で、まるでゴスペルシンガーズがそこにいるかのよう! ライブの場でこんなことができるのか!という感動が広がる。同じ趣向でウィンターシーズンの定番曲となった「雪の華」に「きよしこの夜」をマッシュアップした凝った歌唱も。切々とした響きを持つ「雪の華」が明るく聞こえるのも面白く、季節に相応しい心温まるものがあった。
■ダンドイ舞莉花とのユニット「SHOW STOPPERS」の熱唱
そんな「アカぺリアンナ」の後、エリアンナが黒の中折れ帽を小粋にかぶって、「White Christmas」が。パワフルでソウルフルなアレンジに会場から手拍子が起こる中、ゲストのダンドイ舞莉花が登場。二人の声のコントラストが絶妙でひと際盛り上がる歌唱になった。
ダンドイ舞莉花
二人は演出家宮本亜門命名による「SHOWSTOPPERS」というユニットを結成している。二人曰く「激しめのノリノリの曲しかない」というアルバム「GLAMOROUS Xmas」をリリースしている。その中から「The First Noel」がダンドイのソロでスタート。二人のハモリが実にカッコ良くかつ美しい。2コーラス目はエリアンナがソロを取り、会場中を練り歩いて、シャウトの効いた新鮮なクリスマスソングが響き渡った。
歌い終わって「暑いね~!もう息切れがしてる!」と話す二人から、2019年3月に日生劇場での再演が決まっている『プリシラ』のナンバーを前日のFNS歌謡祭で披露して、3時間近い舞台の世界観を5分間で伝える為に大変なエネルギーを使ったエピソードも。また、実際の舞台ではバスで旅をする主役三人の分身であり、ディーバでもあるという役柄で、上から降りてくる登場シーンも必見です!という来春の舞台への誘いもあったのちに、1部ラストの曲は「すてきなホリディ」。バンドメンバーによるアコースティックバージョンで、ダンドイの語りかけるような歌い出しからはじまり、リズムが入ったところで会場から手拍子が。エリアンナが歌い継ぎ、サビでは二人のボーカルが絡み合う。後半では「ハッピーハッピーホリディズ」を客席と掛け合いで歌い合う。客席のコーラスの厚みがあって、客席の歌唱レベルの高さにも驚くうちに、クリスマスソング尽くしの第1部が終了した。
■ソロシンガーとしてのエリアンナにフューチャーしたオリジナル曲
エリアンナプロデュースによる、この日のオリジナルメニュー「グリルしたオマール海老のビスク風リゾット」や、赤ワインとコーラのオリジナルドリンク「ハッピーホリディ」(ノンアルコールもあり)等のメニューを楽しむうち、休憩は瞬く間に過ぎて第2部は真紅のドレスに着替えたエリアンナが客席から登場。「サンタが街にやってくる」からスタートする。客席とのハイタッチも熱量をあげる。
「ここでクリスマスソングは打ち止め!」と高らかに宣言したエリアンナは、ソロシンガーとして15年、ミュージカル俳優として10年が経ったが、人の前で歌うようになったのは7歳の頃からと振り返る。マイケル・ジャクソンの東京ドームのコンサートにチルドレンの1人として立った感動が歌手になりたいと思ったきっかけで、音楽を通して多くの人に感動を届けられるメッセンジャーでありたいと語り、オリジナル曲「明るい未来」を。明日は明るい!と信じるエリアンナらしい前向きな楽曲で、お客様との掛け合いも。これが半端ではない歌声で、改めて客席にも歌える人がどれだけいるのか、と感嘆させられる。
小川翔
続いて「二十歳の頃に作ってずっと温めていた。ソロライブが出来た時に届けたかった」という「あなたの空」が歌われる。愛する人を空のようにいつまでも見守っているから、翼を広げて羽ばたいて、と聞く者に勇気を届ける応援歌が、クライマックスの上にまたクライマックスを重ねた如きの歌唱で披露され、客席も水を打ったような静けさで聴き入った。
そして「やっぱり今年はこれを歌わないと!」と全世界で大ヒットしたミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』から「This is Me」。人の個性を多様性を認めよう! 「これが私!」と力強く宣言する楽曲は、エリアンナの底知れぬパワーにピッタリ。コーラスパートも全て1人で歌い切り、思わずガッツポーズが出たエリアンナに、会場は早くもスタンディングオベーションとなる。
半田彬倫
■十八番となった「I'm Here」から届けられたメッセージ
「今日が初めてのワンマンライブで、全ての人に感謝してもしきれない」と声を詰まらせるエリアンナに、デビュー当時の元マネージャーも花束を持って駆け付け、eplus LIVING ROOM CAFE&DININGは特別な雰囲気に満たさせる。その空気の中「Living Room MUSICAL」で大評判を呼んだ1曲、ミュージカル『カラーパープル』の「I'm Here」が。奴隷のような生活を強いられてきた薄幸の黒人女性が、私は生きている、私はここにいる、私は美しい!と自己を肯定するナンバーで、エリアンナのまさに渾身の熱唱が、歌の持つメッセージを深く、強く届けて本編が終了。
鳴りやまぬ拍手が続き、白いヘッドドレスをつけて再登場したエリアンナは「All I Want For Christmas Is You」を歌いながら会場中を練り歩き、アンコールがスタート。明るいはっちゃけた雰囲気が弾ける。それでも舞台に戻ると、感無量の様子で「ありがとう、他に言葉がありません、ですからこの感謝の心を歌で届けたい。声が続く限り歌い続けます!」と宣言。更に熱い拍手が贈られる中、10年前彼女にミュージカルの世界を拓いた『RENT』から、代表曲「Seasons of Love」がエリアンナのソロバージョンで歌われる。525600分の1年を何で計るのか、それは愛だ!というミュージカル『RENT』の代名詞でもある楽曲のテーマが、今のエリアンナの想いにも通じるものだったのだろう。ソロシンガーとして新たな魅力を感じさせる歌声に客席が聴き入り、特別な時間が過ぎていった。鳴りやまない喝采が長く長く続いた。
歌唱力があるから世に出られるとは限らないこの世界。きっと苦難の道も多かったに違いないエリアンナが、変わらずに歌い続けてくれたことの尊さと、明日への希望が満ちた初ワンマンライブは、こうして終了。2018年平成最後のクリスマスシーズンに相応しいステージだった。
取材・文=橘涼香 写真撮影=荒川潤
公演データ(公演終了)
■日時:2018/12/13(木)open18:30/start19:30
■会場:eplus LIVING ROOM CAFÉ&DINING
■公式サイト:http://eliana0514.com/