神田沙也加『キューティ・ブロンド』 菊田一夫演劇賞を受賞した当たり役、ハッピーでポップなミュージカルが再演
2001年公開の映画『Legally Blonde』を原作としたミュージカルで、2007年にブロードウェイで初演。ハッピーで爽快な物語とポップな音楽で瞬く間にヒットし、トニー賞7部門ノミネート、イギリス・ウェストエンドではオリヴィエ賞3部門を受賞し、超人気作となった『キューティ・ブロンド』。日本初演は2017年。いつも前向きで恋におしゃれに勉強に、すべてに全力投球の主人公エル・ウッズを演じた神田沙也加は第43回菊田一夫演劇賞を受賞し、誰もが認める当たり役に。2019年春の再演は、喜びもひとしおだった。
再演決定の知らせが届いたのは、完売御礼の初演の大千穐楽の日。舞台上で、キャスト全員と喜びを分かちあった。「再演まであと2年と思っていたらあっという間に来て、その間もいろいろな作品に参加させていただき、充実していたと感謝の思いでいます。初演に続いて、エル・ウッズというとてもバイタリティのある女性を演じさせていただきます。2019年最初の作品が『キューティ・ブロンド』ということで、喜びを感じています」と神田。
●初演に続いて、エル・ウッズを演じる神田沙也加●
写真提供:東宝演劇部
持ち前のポジティブさで周囲の偏見や困難を吹き飛ばしていくエルを生き生きと演じた神田。まさにはまり役と思ったが、本人は周囲とは異なる印象を抱いていた。「私自身がエルと似ているかというと全然そう思っていなくて。でもなぜかピッタリと言っていただくことがあって。それは褒め言葉だと思うので、そういう言葉をたくさんいただけて嬉しかったです」。ブロードウェイのオリジナル版は21歳の時に観劇した。以来、日本での上演を希望していた。だが、まさか自分がエル・ウッズを演じるとは思いもせず、「エルのどのあたりが神田沙也加と思って選んでいただいたのか、とても興味が湧きました(笑)」。
日本初演の稽古の日、演出の上田一豪に「なぜ私を?」と尋ねた。すると「僕はこの作品を神田沙也加の当たり役にして、神田沙也加のキャリアの中でも代表作にしようと思っています」と答えたという。その言葉どおり、神田は第43回菊田一夫演劇賞を受賞する。
「賞をいただいて、一豪さんがおっしゃったことを有言実行できたという状況を差し上げられたことが一番嬉しかったです。今までは受賞された同年代の役者さんに「おめでとう」と言う立場でしたが、そう言いながらいつか自分もという思いも沸々とありました。演劇の世界は誰の指図もなく自分から入ったので、賞をいただくことは、演劇を続けてきたことに「よくできました」という判子を押してもらえるような気がしていました。それを得ることができれば間違いじゃなかったと確信を持てるかなと思っていたので、そういった理由でも賞は欲しいと思っていました。なので、受賞のお知らせをいただいた時は本当に嬉しくて、やっといただけたという思いもあって、涙があふれてきました」。
初演での忘れられないシーンを尋ねると、東京公演の初日、1幕の終わりに「So Much Better」という歌を歌い終わった時だという。「拳を突き上げて歌いきって終わる場面なのですが、自分が十数年前にブロードウェイで観た舞台『Legally Blonde』のような、あまり日本では聞かないような喝采を耳にした時が本当に嬉しかったですし、びっくりしました。どう受け入れられているのか分からないまま作ってきたものが一つ昇華したように感じて、あの瞬間が本当に感動的でした」。
その熱狂は、主演キャストはもちろんアンサンブルの力にもよると続ける。「個性的で、パーソナリティの固まりみたいなアンサンブルが集まっていたので。臆することなく爆発させるエネルギーがあって、それが全員の士気を高めたかなと思いました」。
●今回も「お待たせしました!」という思いを持って臨みたい●
神田沙也加
再演ではアンサンブルも半分が入れ替わり、メインのキャストに平方元基が新加入する。舞台『マイ・フェア・レディ』でも共演したばかりの神田と平方。すでに相当な気合を入れている印象を受けたという。エルの先輩、エメットを演じる平方に「初演とは相当違う印象になると思います。元基くんがどう来るか、楽しみにしています」と笑顔を見せた。
自身も待望の再演に、はやる気持ちを素直に表現する。「賞の助けもあってかもしれないですけど、エル・ウッズという役をもう1回観たいという声をすごく聞きました。それだけ望んでいただいているものをまた上演できることが嬉しいです。私も、エルでいられることがとっても楽しい。『ハッピーMAX』と謳っているだけあって、上演期間中はマイナスな気持ちになることが少ないんです。今回も「お待たせしました!」という思いを持って臨みたいと思います!」
ファッショナブルでダンサブル、そしてコメディとしても楽しめる本作。「上質なコメディとしての骨組みもしっかりしているので、男女問わずちゃんと刺さると作品だと思います!」と意気込んだ。
ミュージカル『キューティ・ブロンド』は2月11日(月・祝)より東京・日比谷シアタークリエで幕を開ける。大阪公演は3月14日(木)~18日(月)、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演。他、全国7都市をめぐる。発売中。
取材・文・写真=岩本和子
公演情報
2月11日(月・祝)~28日(木)
東京都 シアタークリエ
3月3日(日)
山形県 やまぎんホール(山形県県民会館)
3月6日(水)
静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート)
3月9日(土)・10日(日)
愛知県 刈谷市総合文化センター
3月14日(木)~18日(月)
大阪府 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
3月20日(水)・21日(木・祝)
広島県 はつかいち文化ホール さくらぴあ 大ホール
3月23日(土)・24日(日)
福岡県 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
3月27日(水)・28日(木)
長野県 ホクト文化ホール 中ホール
3月31日(日)
富山県 オーバード・ホール
平方元基/植原卓也/樹里咲穂/新田恵海/木村花代/長谷川初範/
まりゑ/美麗/MARIA-E/武者真由/青山郁代/折井理子/濱平奈津美/山口ルツコ/
上野聖太/高瀬雄史/棚橋麗音/古川隼大
音楽/詞:ローレンス・オキーフ、ネル・ベンジャミン
脚本:ヘザー・ハック
翻訳/訳詞/演出:上田一豪