箱根・ポーラ美術館で、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト・大山エンリコイサムの『Kairosphere』展

2019.1.18
ニュース
アート

大山エンリコイサム《FFIGURATI #207》2018 エアブラシ、 アクリル性エアロゾル塗料、 ラテックス塗料、 墨/カンヴァス(アルミニウムストレッチャーにマウント) 244×914 cm Artwork (C) Enrico Isamu Ōyama Photo (C) Go Sugimoto

画像を全て表示(2件)

ポーラ美術館(神奈川県・箱根町)にて、2019年3月23日(土)〜7月28日(日)まで、現代美術展示スペース「アトリウム ギャラリー」におけるHIRAKU Project第8回目の展示として、大山エンリコイサム『Kairosphere』展が開催される。

ニューヨークを拠点に活動する大山エンリコイサムは、「クイックターン・ストラクチャー」と呼ぶ表現を用い、制作を続けるアーティストだ。「クイックターン・ストラクチャー」とは、地下鉄や都市の壁などにかかれたライティング(グラフィティ)の文字や色彩を取り除くことで見えてくる描線の型「クイックターン」を使用して画面を構築する、大山独自のスタイル。彼は過去15年間にわたり、カンヴァスや壁、ファウンド・オブジェクト、さらにコム・デ・ギャルソンとのコラボレーション(2011年春夏パリ・コレクション)では衣服など、多様なメディアに「クイックターン・ストラクチャー」を展開してきた。

大山エンリコイサム《FFIGURATI #9》2009 アクリル性エアロゾル塗料/アクリルキューブ Artwork (C) Enrico Isamu Ōyama

国内初の美術館での個展となる本展では、初公開となる新作の絵画《FFIGURATI #207》(2018年)を展示。縦244cm、横幅914cmという過去最大の絵画作品は、15年間の制作活動で積み重ねられてきた「クイックターン・ストラクチャー」の集大成とも言えるだろう。また、彼にとって制作の節目となった、アクリルを用いた立体作品《FFIGURATI #9》(2009年)も併せて展示することで、これまでの探究の軌跡を目の当たりにできる。

本展タイトルの「Kairosphere」(カイロスフェア)は、「kairos」(時間)と「sphere」(圏)を組み合わせた大山による造語。「kairos」は主観的な時間の概念であり、彼が制作のプロセスの中で感じた内面的な時間を表している。また「sphere」は「stratosphere」(成層圏)や「atmosphere」(大気圏)といった語の接尾辞だが、彼はこれを気体のように不定形かつ流動的な空間と定義した。これらを組み合わせた「Kairosphere」には「緩やかにふくらむ、時間と空間の圏域」という意味が込められている。

このタイトルに示されるように、本展覧会では「クイックターン・ストラクチャー」が作品の物理的な枠と制作の時間を超え、空間全体に満ちていくようなインスタレーションを体感できるだろう。

イベント情報

大山エンリコイサム 『Kairosphere』
会 期:2019年3月23日(土)~7月28日(日)
会 場:ポーラ美術館 アトリウム ギャラリー
主 催:公益財団法人ポーラ美術振興財団
協 力:Takuro Someya Contemporary Art

アーティストプロフィール

大山エンリコイサム(おおやま・えんりこいさむ)
1983年、 東京生まれ。 慶応義塾大学卒業後、 東京芸術大学大学院修了(2009年)。 エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを翻案したモティーフ「クイックターン・ストラクチャー」をベースに壁画やペインティングを制作する。 ポーラ美術振興財団在外研修員としてニューヨークにて研修(2013年)。 主な個展に「Improvised Mural」 ロンドン芸術大学チェルシー校(ロンドン、 2015年)、 「Windowsill」 ルミネゼロ(東京、 2017年)、 「Ubiquitous: Enrico Isamu Ōyama」 マリアンナ・キストラー・ビーチ美術館(カンザス、 2017年)、 「Black」 タクロウソメヤコンテンポラリーアート(東京、 2018年)など。 著書に『アゲインスト・リテラシー―グラフィティ文化論』(2015年、 LIXIL出版)。 現在ニューヨーク在住。
  • イープラス
  • 美術館/博物館
  • 箱根・ポーラ美術館で、ニューヨークを拠点に活動するアーティスト・大山エンリコイサムの『Kairosphere』展