WHITE ASH ファイナルでUNITが踊り揺れた強靭なグルーヴとライブの神髄を観た
WHITE ASH One Man Tour 2015“ Put A Smile On Your Face!” @代官山UNIT
「やっぱりロックンロールって最高だよなぁ」
身も蓋もないが、強固で精密なアンサンブルによって生み出される、強烈な肉体性を帯びたグルーヴを前にすると、そんな感想しか浮かばない。あとは自然と笑顔になって体を揺らすだけだ。きっとそれで十分で、だから最高なんだ。ロックンロールは。
WHITE ASHがシングル「Insight / Ledger」のリリースに伴って全国7箇所を周り、追加公演として開催された代官山UNITでのライブは、そんなプリミティヴなロックンロールの魅力に満ちていた。
ほぼ定刻通りに現れたメンバー。のび太(Vo/G)が満員の客席に向かって、準備はいいか?とばかりクールに指をさすと、それだけで大歓声だ。そのまま彩(B)の生み出すゆったりとヘヴィな重低音から最新シングルの「Ledger」へ。
……が、ここで音響トラブルが発生。いきなりの中断を余儀なくされたメンバーであったが、ここからが凄かった。急遽「こんばんは! WHITE ASHです!!」と予定外のMCを始め、「7箇所やってきて、初めて起こることもある。……これがライブですよ!」と言い放つ。さらには「いま出てきたことにしてもらっていいですか?」と笑いまで取り、むしろ盛り上げの材料にしてしまった。強靭なのはサウンド面だけではないようだ。
改めて「Ledger」をやり直し、そのまま前半から飛ばしまくる。イントロから飛び跳ねるオーディエンス達が会場を揺らした「Ray」、山さん(G)とのび太がステージの際まで出てギターを掲げてスタートした「Kiddie」、疾走感と半強制的に揺らしてくるアンサンブルが最高だった「Velocity」、ハンドマイクを手にしたのび太がユラユラと踊りながら歌い、ラストは「どうだ!?」とばかりに大きく両手を広げた「Paranoia」。「パンチが強い…なんか、こう、ガンガンくる……」とのび太が曖昧に表現して山さんに突っ込まれていたセットリスト前半だったが、とにかくもう、気持ちいい。超気持ちいい。
その後も縦横自在にグルーヴを操りノセていくWHITE ASH。シンプルなようで実は緻密に構成された楽曲達を、ライブならではのダイナミズムを失わずにここまで演奏できる事実は、彼らのバンドとしての成長を如実に物語っている。特にそれが顕著だったのは、ダーティなリフと軽快なリズム、ハイトーンのメロディラインが絶妙な「Hopes Bright」や、剛(Dr)によるタメの効いた強烈なビートが牽引し、のび太と彩のツインボーカルがセクシーな『METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN』のタイアップソング「The Phantom Pain」あたりだろう。
その後、部活話に花が咲いたMCを挟んで、ツアー中も各地で行ってきたリクエスト曲を披露するコーナーへ。文字通りスウィートな「Xmas Present For My Sweetheart」はライブ全体の中で良いアクセントになっていて、4声のハーモニーでも魅せた。「Faster」「Pretty Killer Tune」は、それぞれシングルのカップリングというレアな楽曲で、ファンにとってはたまらない。しかも「Pretty~」に至ってはコール&レスポンス(しかも途中から往年の名曲・「学園◯国」のフレーズに!)が大盛況で、隠れたパーティーチューンぶりを見せつけた。実際、彼らの中でライブでのこの曲の序列が上がっているらしく、のちのMCでスポーツ選手のレギュラーと2軍に例えて明かし、爆笑が起きた。
後半戦は序盤のキラーチューン連打を上回る濃さ。重低音が渦を巻く「Casablanca」に始まり、もはや鉄板の「Jails」や「Crowds」の一体感とドライヴ感に狂喜したオーディエンスは全てを絞り出す。本編ラストはのび太が「特に好きな曲」と語った、轟音に泣きのギターが冴えるロックバラード「Aurora」で締めくくった。タイトでエッジーな楽曲の印象が強い彼らだが、こういった聴かせるタイプの楽曲によって、実はとんでもない美メロセンスも持ち合わせていることを実感。
アンコールでは「ツアーファイナルには、解禁される情報がないと満足しないんじゃないかと思ってーー」と2016年にニューアルバム情報が飛び出し、歓喜の声が上がる。その新作からいち早く披露された「Blaze」は、”WHITE ASH節”ともいうべきガレージロックを軸にしつつも、サイレンのような鋭いギターサウンドをアクセントにハイトーンの美メロが印象的なナンバー。これを聴いてしまっては、新作への期待も否応なしに高まるではないか。
オーラスは一度聞いたら病みつきの最強リフで問答無用にブチあげる「Stranger」で締め。12月には『Cycle』で福島・東京でのライブが控え、年明けにはアルバム…と勢いを増す彼らを象徴するような、終始トップギアのステージだった。
自分たちの「色」であるガレージなロックンロールと真っ向勝負して、最新型に塗り替えるだけのタフネスとクオリティ。今のWHITE ASHは本当にかっこいい。
撮影=柴田恵理 文=風間大洋
One Man Tour 2015「Put A Smile On Your Face!」
2015.11.7 代官山UNIT
1. Ledger
2. Ray
3. Thunderous
4. Kiddie
5. Velocity
6. Paranoia
7. Just Give Me The Rock ’N’ Roll
8. Hopes Bright
9. The Phantom Pain
10. Xmas Present For My Sweetheart
11. Faster
12. Pretty Killer Tune
13. Casablanca
14. Number Ninety Nine
15. Jails
16. Crowds
17. Insight
18. Aurora
[ENCORE]
19. And Gypsy
20. Blaze
21. Stranger