Aimer その歌声で確かな「夜明け」を告げたツアーファイナル
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Aimer
Aimer Live Tour "DAWN" @人見記念講堂
自己最高の売り上げを記録した最新アルバム『DAWN』を携えての全国ツアー『DAWN』最終公演を、11月3日に人見記念講堂にて行なった、シンガーソングライターのAimer。彼女が時にナイーヴに、時に力強く描いたのは、夜明けを迎えるまでのドラマとこの先への希望。どうしたって、胸が震えずにはいられなかった。
場内が暗転、紗幕に映ったのは、星の瞬く夜空と月が浮かんでいるように見える湖の水面。幕開けは、アルバム『DAWN』の始まりと終わりを飾る、スタンダードナンバーのカバー「MOON RIVER」だ。彼女の歌声はわかりやすく表現するなら“ハスキー”なのだけれど、その穏やかな深い響きはたちまち心を浄化して、なおかつ満たしてくれる。
一転、バンド演奏が入り紗幕が落ちると、眩い光に照らされ深々とお辞儀をする、黒いドレスをまとったAimerの姿が。胸元で彼女がクラップをすると、オーディエンスもクラップ。「Believe Be:leave」「Noir! Noir!」と、軽やかで温かな中に切なさも感じさせながら、歌声がよく伸びて耳に心地良い。青いライトの下、サビで差し込む赤いライトが千路に乱れる心模様と鮮烈に重なったのは「あなたに出会わなければ」。愛は手にすれば美しいもの、失えば哀しいものだ。
実直な人柄の滲む丁寧なあいさつをはさんで、アンバーな光に照らされた「Re:far」で聴けたのは柔らかで優しい歌声。彼女は一体、どれだけ表情豊かなヴォーカリストなのだろうか。
「みなさま、雨女という存在をご存知でしょうか。わたくしAimerは生粋の雨女でして。これまで数多、ライヴの日に雨を降らし、果ては台風まで呼んでライヴ会場変更を余儀なくされたこともあるんです。しかし、今回のツアーは9月に始まって以来一度も雨が降らず、今日もカラっと晴れまして。普段行いの良いみなさまにお集まりいただけたようで嬉しいです(笑)」
驚きの歌力とえらくギャップのある、ゆるめのMCで和ませた後は、ONE OK ROCKの「Heartache」をアコースティックでカバー。今年、ONE OK ROCKのツアー『35xxxv』にゲスト参加した彼女だが、比類なきアーティスト同士がリスペクトし合って生まれるのは、また新たな感動だ。
ピアノと歌だけで届けてくれたのは、まるでほの暗い海を漂うような幻想感をたたえた「誰か、海を。」。感情の揺らぎをあまりにも見事に歌声で表現したAimerに、歌い終わりで大きな拍手が巻き起こった。「AM02:00」「AM03:00」「AM04:00」からなるメドレーでは、エモーショナルな歌声に呼応するようにオーディエンスも立ち上がってクラップ。ドラムのキメに合わせて小さくジャンプするAimerも笑顔だ。そう、夜明けは近い。
白いドレスに着替え、「私の決意の曲たちです」という言葉で導いたのは、ドラマティックな「LAST STARDUST」「Brave Shine」。凛と響かせる歌声には、揺るがない力強さがある。
「デビューしてからの4年、私はずっと眠れない夜を歌ってきました。それは、私自身がそういう音楽を聴いて居場所にしてきたからです。でも、この4年間、私の歌を居場所にしてくれる人たちに出会えたことで、アルバム『DAWN』で夜明けに導きたいと思いました。前回のツアー中、ノドの病気を患ってステージの上で突然声が出なくなったとき、ステージに立つのが怖くなってしまったし、自分を信じられなくなったりもしたけど……みなさんの言葉から私は勇気をもらえたし、あのときに生まれた曲とともにこうしてツアーがまわれたことが本当に嬉しくて。また何度でも夜は訪れるけど、今日はひとつの夜明けであったらいいなと思います」
本編ラストは「DAWN」。日が昇れば、見たくないものも見えてしまうし、辛い現実と向き合わなくてはいけなかったりもするだろう。それでも、不思議ともう恐怖感はない。
「今日はみなさんのおかげで、夜明けの先が楽しみになる一夜を過ごすことができました。みなさん一人一人の哀しみ、辛い気持ちを本当の意味で理解することはできないかもしれないし、誰しも独りぼっちで生きていかなきゃいけないけれど……こうやってたくさんの人が集まって素敵な夜を作れる、それが歌を歌っていて良かったと思える瞬間。また、いつかの夜にお会いしましょう」
アンコールで、そう語ったAimer。何かにつまずいたり、もうだめだと諦めたり、それでも光を求めようともがいたり。波に揺られるような人生に、いつだってそっと寄り添ってくれるのが彼女の歌だ。
年内は海外でのイベントや 『COUNTDOWN JAPAN 15/16』に出演、2016年3月には単独公演『Billboard Live Tour』を東京・大阪で開催するAimer。夜明けの先に彼女がどんな未来を見出すのか、楽しみにしていよう。
文=杉江優花