鈴木裕美&13人の俳優がチェーホフの魅力読み解く、「かもめ」稽古レポ
「かもめ」稽古より。
鈴木裕美演出による「かもめ」が4月11日に東京・新国立劇場 小劇場で開幕する。ステージナタリーでは、初日を約1カ月後に控えた3月12日の稽古の模様をレポートする。
本公演は、新国立劇場によるフルオーディション企画の第1弾。演出の鈴木、そして3396通の応募の中から選出された13人の出演者が、アントン・チェーホフの四大戯曲の1つである「かもめ」に挑む。
この日の稽古は、“伝え方”を鍛えることを目的としたウォーミングアップからスタート。このトレーニングは、2人1組に分かれた俳優たちが、出されたお題を絵や図のみで表現し、どのペアが早く正解できるかを競うというもので、俳優たちは頭を悩ませながらも、和気あいあいとした様子で協力し合いながら答えを導き出していく。
ウォーミングアップを終え、第1幕終盤の稽古が始まると、先ほどの和やかな雰囲気から一変、スタッフ・キャストは真剣な表情に。初めに披露されたのは、アルカージナ(朝海ひかる)一行が去る場面と、トレープレフ(渡邊りょう)とドールン(天宮良)、マーシャ(伊勢佳世)が会話する場面だ。トレープレフ役の渡邊は、ニーナ(岡本あずさ)への湧き上がる恋情を全身を使って表現してみせ、一方マーシャ役の伊勢は、トレープレフを愛するがゆえの苦しみや行き場のない思いを、ドールン役の天宮にぶつける。
続いて第2幕冒頭のシーンへ。談笑するアルカージナたちのもとにやって来たのは、シャムラーエフ(俵木藤汰)とポリーナ(伊東沙保)。このシーンでは、シャムラーエフとポリーナの登場により、それぞれの人物の思惑が交錯し、険悪なムードになっていく様が描かれる。スラリとした長身が目を引く朝海は、凛とした佇まいで大女優であるアルカージナを演じ、岡本はニーナのほとばしる若々しさをみずみずしく表現した。
本公演で用いられるのは、トム・ストッパードによる英語台本を、同劇場の演劇芸術監督である小川絵梨子が翻訳したもの。かねてより「かもめ」の上演を熱望していた鈴木は、台本に書かれている言葉を大切しながら、「かもめ」の面白さはどこにあるのか、作品に込められたチェーホフの“冷徹な笑い”の肝はどこにあるのかについて、言葉を尽くして俳優たちに伝える。
鈴木は時折ストップをかけつつ、台本に書かれているセリフに対して、どのような感情を持ちながら発語しているのかを、俳優陣と擦り合わせながら、1つひとつのシーンを丁寧に作り上げていく。鈴木の熱い思いに応えるように、キャストたちも自身の演技プランを積極的に提案し、言葉を交わしながら戯曲を読み解いていった。
「かもめ」は、4月11日から29日まで新国立劇場 小劇場にて。
「かもめ」
2019年4月11日(木)~29日(月・祝)
東京都 新国立劇場 小劇場
作:アントン・チェーホフ
英語台本:トム・ストッパード
翻訳:小川絵梨子
演出:鈴木裕美
出演:朝海ひかる、天宮良、伊勢佳世、伊東沙保、岡本あずさ、佐藤正宏、須賀貴匡、高田賢一、俵木藤汰、中島愛子、松井ショウキ、山崎秀樹、渡邊りょう
※山崎秀樹の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。