崎谷明弘『ベートーヴェン:ピアノソナタ全曲集・第2巻』発売
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1番から弾いていくことでベートーヴェンの心境の変化が見えてくる
ブゾーニ国際ピアノコンクール第3位やハエン賞国際ピアノコンクールで優勝など国際的に活躍する崎谷明弘さん。2年前に『ベートーヴェン:ピアノソナタ全曲集・第1巻』でCDデビューを果たし、11月7日には第2巻が発売となった。
そもそもなぜ、いきなりベートーヴェンピアノソナタ全曲集だったのか…。CDを制作するにあたって「プログラムにこだわりを持って作ろう」とディーピック・エンターテイメントの社長 鈴木俊行氏に言われたことがきっかけだった。崎谷さんにとってベートーヴェンの音楽は「自分の“芯”に触れる音楽」であり、「自分の正面にある音楽」だという。崎谷さんはもともとオーケストラや弦楽四重奏などをイメージしてピアノを弾くのが好きだったそうだ。ベートーヴェンは交響曲を書くための実験としてピアノソナタで多くのことを試した。何か近いものを感じているのだろう。
そんな崎谷さんは、あえてソナタ第1番から順番に収録することにこだわった。「1番から弾いていくことでベートーヴェンの心境の変化などが見えてくる」のではないかと考えているからだ。そして25歳で始めたこのプロジェクトは10年以内、つまり35歳までには完成させたいという。「30代後半になってくるとベートーヴェンの音楽を今とは違う捉え方をしていると思うので、35歳までに一区切りつけたい」と崎谷さん。
現在、彼はベートーヴェンのピアノソナタ全曲録音というビッグプロジェクトを抱えながらコンクールに挑戦し続け、さらに東京芸術大学の博士後期課程の学生として研鑽を積んでいる。大学での研究テーマは「コンクール」だ。このテーマにした理由は「コンクールには演奏するテンポ、選曲などその時、その時のトレンドがある。それをはっきりさせていくことでこれからコンクールに挑戦する人たちの参考になればいいな」と思ったからだという。崎谷さん自身、長年にわたりコンクールを受け続け、学問として研究している今だからこそ「コンクールは結果次第では注目が集まる一方で、ピアニストを継続的に見ることができない。ピアニストというのは陸上で例えるなら『マラソン選手』。でもコンクールは『短距離走』。もっともっと継続的にピアニストを育てるシステムがあったら」と感じている。だからこそ「コンクールというのは良い結果を出した“その後”の方が難しいし、大切だ」と何度も言っていた。
インタビューの最後に今後どんな活動をしていきたいか尋ねてみた。すると「室内楽をもっともっとやっていきたいですね。ソロしかやっていないと自分の中で完結してしまうので、周りから色々な刺激をもらいたいです」との答えが返ってきた。崎谷さんといえば『ソリスト』というイメージが強かったので少し意外だった。そして「演奏家としては、難しい作品をわかりやすく解釈して伝えたい。そのために作曲家が許容し得る範囲で解釈する技術を磨いていかなければいけないなと思っています」と語ってくれた。
■日時:2015年11月20日(金)
■会場:神戸新聞 松方ホール
■料金:一般3,000円 学生・松方ホール友の会2000円(税込・当日500円増)
■曲目:
ベートーヴェン/ピアノソナタ第5番 ハ短調 作品10-2
スクリャービン/ピアノソナタ第9番 “黒ミサ” 作品68
シューマン/ダヴィット同盟舞曲集 作品6 他
■公式サイト:https://www.akihiro-sakiya.com/japanese.html