エド・シーラン、初の東京ドーム公演で5万人が大合唱「東京ドームでプレイしていることが信じられないよ!」
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Ed Sheeran photo by 岸田哲平
2017年3月にリリースした3枚目のアルバム『÷(ディバイド)』が世界的な大ヒットを記録しているエド・シーラン(Ed Sheeran)が、約1年ぶりとなる来日公演を4月9日に東京ドームで開催した。
オープニングにスペシャル・ゲストとして登場したのは、初の東京ドーム公演を昨年大成功させたONE OK ROCK。TAKA(VO.)が、「東京ドームとはいえ、1人分のステージに4人立つのは狭いんですよね......」とMCで話していたが、確かに会場の大きさに対してステージセットがかなりコンパクトに感じられた。過去に東京ドームで観た公演を思い返してみたが、ここまで小さなステージは記憶にない。そもそも、これまでアーティストが最初から最後までたった一人で行ったライヴを東京ドームで観たことがあっただろうか。
Ed Sheeran photo by 岸田哲平
開演予定時刻19時ぴったりに暗転すると、ステージに向かって歩いてくるエドの姿がスクリーンに映し出された。満面の笑顔で登場したエドを5万人が大歓声で迎え入れると、早速ループ・ステーションを使用してトラックを構築していき、ショーは「Castle On The Hill」でスタート。今回も、基本的なプレイスタイルは変わっていないが、更に増した音の深みと広がり、彼から生まれる”グルーヴ”、そしてソウルが宿る歌声に初っ端から心を動かされた。
「元気? 戻って来られて本当に嬉しい。日本は一番好きな国なんだ。東京には何度も来たことがあるし、外から東京ドームを見たことも何度もある。ここでプレイするのはどんな気分なんだろうって思っていたから(今ここでプレイしていることが)信じられないよ!」と、話す。また、「この場でループ・ステーションに録音したものを再生していくから」と、演奏は全て”ライヴ”であることを伝え、軽いデモンストレーションを行ったのち、そのままギターでリフやリズムを録音して「Eraser」へ。ラップ(のようなフロウで歌う)パートではハンドマイクでステージ前方を左右に動きまわり、曲後半ではループ・ステーションを使ってコーラスを重ねていくなど、1曲の中でも見どころ、聴きどころだらけだ。その場で、あまりにも自然に曲を作り上げていく様子は、何度見ても気分が高揚する。
Ed Sheeran photo by 岸田哲平
「18歳の時に書いて、これまで全てのショウでプレイしている」という「The A Team」では、ファンが掲げるスマートフォンのライトによって会場が星空に包まれた。「次は踊れる曲だから、もしも踊り方がわからなかったら隣の人の真似をして」というMCのあとに始まった曲は「Don't」、会場中がサビを熱唱した「Dive」、また、自分のライヴに来てくれる人についての研究結果————98%は常にニコニコしながら歌って踊っているけど、2%は本当は来たくなかった”彼氏たち”と子供の付き添いで来ている”スーパーお父さん”(エドのお父さんもそうだったとか)————を小噺のように面白おかしくトークし、2%の「愛する人を喜ばせるためにここにいる人々」へ感謝の気持ちを伝えた。
曲が終わるごとにガブガブと水を飲み、恐らく以前パブで演奏していた時とさほど変わらないであろう距離感でオーディエンスに語りかけるエド。物理的な距離は今までで一番遠いはずのエドがとても身近な存在に感じられたのは、彼が極々自然体で演奏をし、お喋りをしていたからなのだろう。ライヴが進むにつれて、彼との心の距離感は更に縮まっていった。
Ed Sheeran photo by 岸田哲平
「静かに曲に耳を傾けてもらいたい」と語っていた「Bloodstream」に続いては、昨年の武道館公演では披露されなかったジャスティン・ビーバーに提供した大ヒット曲「Love Yourself」のセルフ・カヴァー。これには、どよめきにも似た歓声がそこら中で上がっていた。「ライヴでプレイするのが一番好き」だという「Tenerife Sea」での優しいファルセットと地声とが重なり合うハーモニーは、まるでチャペルで賛美歌を聴いているような美しさだった。彼の歌声は、人を惹きつけ、包み込む。改めて、彼が放つ歌のパワーを実感した。
その後は、「デビュー・アルバムがリリースされたタイミングでは日本でちゃんとしたツアーを出来なかったから......」と、アルバム『+(プラス)』から「Lego House」、「kiss Me」そして「Give Me Love」がメドレーで披露された。ループ・ステーションを使用しないシンプルな弾き語りによる演奏は、曲の良さが際立っていただけでなく、より体に沁み入った。曲が変わるたびに会場からは大きな歓声が上がり、2011年のツアーで1曲目に歌っていたという「Give Me Love」では、当時と同じように曲の後半で会場を左右に分けて、それぞれがハーモニーの低いパートと高いパートを担当。そのハーモニーにエドが歌う主旋律が合わさった時の5万人の一体感たるや。今思い出しても鳥肌がたつ。エドも、「美しかった!」と大絶賛していた。
「なんて素敵な国なんだろう。いつか引っ越したいな」。そんな嬉しいMCを挟むや否やギターのボディを叩いてビートを録音し、早くも次の曲「Galway Girl」へ。テンポよく、緩急のある曲の並びでショウは進行していく。
カヴァー曲「Feeling Good」では、エドのソウルフルな歌声が全面に出ていた。続く「I See Fire」では、オーディエンスが歌うハーモニーの下のパートをエドが歌ったが、この日はオーディエンスとエドが一体化して生み出されるマジカルな瞬間が何度もあった。
Ed Sheeran photo by 岸田哲平
「この曲を一緒に歌えない人は間違って違うコンサートに来てしまったかも(笑)」というMCの後に始まったのは「Thinking Out Loud」。エド曰く、”シンガロング・パート”とのことで、この後も「One」、「Photograph」、「Perfect」と、美しいメロディーが心に沁みる楽曲が続き、会場中がシンガロングしていた。
間髪入れずにアイリッシュ・フレイヴァー漂う「Nancy Mulligan」へと流れていきガラッと雰囲気が変わった後は、本編最後の「Sing」。サビのパート「Oh oh oh oh〜〜」をオーディエンスが大合唱する中、エドはステージを後にした。
Ed Sheeran photo by 岸田哲平
5万人の大合唱に応え、野球日本代表「侍ジャパン」のユニフォーム姿でほどなく再登場したエドは、最初にギター・パートを録音。つづいてキーボードで「Shape Of You」のリフを弾いた瞬間、この日最大の歓声が会場中に響き渡った。もちろん最初から最後まで大合唱だ。そしてラストは「You Need Me, I Don't Need You」。ハンドマイクでステージの淵まで行き、曲の後半ではかき鳴らしたギター音やコーラスを録音し、曲がどんどん展開していく。”高速ラップ”中に何度かループ・ステーションを操っているエドの足元がスクリーンに映し出されたが、絶妙なタイミングと恐ろしい速さで繰り広げられるその”超絶足さばき”は、もはや芸術の域に達しているのではないか。いくら場数を踏んでいるとはいえ、ただただ驚嘆するばかりだった。
気付けば約2時間があっという間に経過していた。
たった一人で、5万人の心を鷲掴みにし、ひとつにまとめ、東京ドームを巨大なライヴハウスにしたエド・シーランは、登場時と同じく満面の笑顔で「アリガトウゴザイマス、トウキョウ!」と、お辞儀をしてステージを後にした。
4月23日には京セラドーム大阪公演が行われ、こちらはソールドアウトで4万人を動員。2日間で動員数計9万人を記録した日本公演は大盛況のうちに幕を閉じた。
文=岡村有里子 photo by 岸田哲平
セットリスト
「Ed Sheeran DIVIDE WORLD TOUR 2019」
2019.4.9 東京ドーム
1. Castle On The Hill
2. Eraser
3. The A Team
4. Don’t / New Man
5. Dive
6. Bloodstream
7. Love Youself
8. Tenerife Sea
9. Lego House / Kiss Me / Give Me Love (Medley)
10. Galway Girl
11. Feeling Good / I See Fire
12. Thinking Out Loud
13. One / Photograph
14. Perfect
15. Nancy Mulligan
16. Sing
17. Shape Of You
18. You Need Me, I Don’t Need You