柚希礼音、一人ミュージカル『LEMONADE』に奮闘中! 稽古場レポート&インタビュー
今年芸歴20周年を迎えた柚希礼音が、「REON YUZUKI one-man show Musical『LEMONADE』」に挑戦する。2019年5月より、東京・大阪、そして宝塚退団後初の台湾にて上演される本作では柚希が原因不明の病気から多重人格となり、それぞれの人格とどのように向き合っていくか、が描かれる。タイトルにもあるとおり、様々な人格者を「一人で」演じることとなる柚希の様子を見るため、稽古場にお邪魔した。
稽古場には仮で組まれた舞台セットと、可動式のスクリーンが2基。セットの脇にはベッドやソファ、小振りなチェストなどが置いてあり、主人公の部屋のようなしつらえだった。「ワン、ツー、スリー、フォー」とカウントを取る声に合わせて、柚希が踊り、その動きと共にスクリーンも動き出す。スクリーンには後程撮影する別の柚希のキャラクターが映し出されているていで、この日は振付助手が代わりに踊っていた。振付指導をする川崎悦子が一つずつ丁寧に意見を出し、動きの提案を重ねていく。その言葉を受けて柚希も踊るが、いかんせん、スクリーンにはまだ映像が映される前の段階なので、皆が手探りでタイミングやその時々の動きを模索しているようだった。ついには演出席から小林香もステージに登場し、全員で真剣にディスカッション。この場面のゴールを皆が探し求めていた。
稽古が一区切りついたところで、柚希と小林に話を聴く機会がいただけた。
柚希礼音&小林香インタビュー
ーー稽古お疲れさまです。なんだかとても大変な事になっているようですね。
柚希:本当に。また、映像とコラボしなければならないので本当に大変で~。
小林:あのスクリーンはあの場面だけ登場するので、他の場面では普通の舞台セットだけなんです。
ーーそうなんですね。早速今回の舞台について伺っていきます。まずは待望の一人芝居という事ですが。
柚希:できれば一人芝居は難しそうだから、なるべく避けたいなあと思っていたんですが、20周年という事もあって、何かに挑戦したいと考えて、一人でパフォーマンスする事なら出来るかも、と思ったんです。以前香さんが手掛けた原田薫さんの一人パフォーマンスの映像を拝見して、こういうものならやってみたいかも……から始まりました。やるからにはメッセージ性も欲しいし、こういうカッコいいこともしたい、などといろいろお願いしていった結果、一人ミュージカルということになりました。
ーーそんな柚希さんからいただいた、具体的なリクエストとは?
小林:カッコイイ男性を演じたい、メッセージ性があるものにしたい、めっちゃ踊りたい、というリクエストを受けました。それらを受けて考えてみたんですが、一人舞台って難しいなあ、と。何もないところで何故喋るのか、その理由も必要ですし。また小さな劇場を使いますのでそれほどセットを変える事も出来ない。そういった様々な制約がある中で、やりたい事を実現するために多重人格という設定が生まれたんです。
ーーその設定から生まれた『LEMONADE』。役作りはいかがでしょうか?
柚希:一つの役だけでも作るのに1か月かかるので、3役作るって……驚きですよ。
柚希礼音
小林:しかも人格交代の時に映像の力を借りてませんしね。解離性同一性障害の方って普通に生活していてふっと別人格に変わりますから柚希さんにも同じ事を演じていただいているんです。
柚希:そうなんです。芝居の中で自分で人格を変えていかなければならないんです。
ーー現在の進捗はいかがですか?
柚希:これ、出来たらとっても面白いだろうと思いますが、実際は本当に大変で、まだ面白いと感じるレベルまでたどり着いてないです。でも病気のせいで心が止まっていた人がすべてが自分なんだと認めることが出来、そこから……というコンセプトは好きです。ゴールに向けた最初の作り込みがまだまだ練れてないので。あと数日で稽古が終わってしまうのでどないしよう~って感じです(笑)。
小林:そもそも一人ミュージカルってあまりないじゃないですか。こんな大変な事をやろうって普通思わないですよ。一人パフォーマンスと一人ミュージカルってまったく別ものですから。
小林香
柚希:今、ほんまに大変なことをお願いしたんや、と思ってます(笑)。以前やった『REON JACK3』も相当大変だったけど、今回はその100倍大変!
小林:助けてくれる人がステージ上に誰もいないわけですからね。
柚希:日頃周りに人がいる事のありがたさを痛感しています(笑)。いざ舞台に上がって映像の自分がいることで安心することもあるかもしれませんが。今日もまだ映像がないのにスクリーンを見ちゃいましたから(笑)。
ーー先ほどの稽古見学中にも多くのスタッフさんたちが総出でディスカッションしていましたし。
小林:柚希さんの20周年を祝うステージですし、今のうちに私たちが一丸となって頑張らないと、本番の幕が開いたら本当に一人になってしまいますし。佳境に入ってきてスタッフもピリッとする場面もありますが、すべては柚希さんのため。その事をあえて口に出してはいませんが同じ気持ちで臨んでいる空気をひしひしと感じています。
柚希:この段階になって、今ここをはっきりさせておかないと、後々私が困るんじゃないかと思ったのか、皆さんがいろいろ意見を挙げてくださってます。すごいありがたい事ですね。
(左から)小林香、柚希礼音
ーー今さらですが、お二人の初めましてはいつ、どの作品ですか?
小林:出会いは『お気に召すまま』でしたね。
柚希:そう、私が初めてワンピースを着るような女の子の役で。あの時は海外の演出家さんだったので、女の子としての台詞の言い回しをあまりやった事がなく、苦労していたんですが、香さんが訳詞で参加していて「あなた、大丈夫よ!」って声をかけてくださったんです。どうしたらいいんだろう、って悩んでいた時に背中を押してもらえた気がしました。
でも実はそれよりさらに前に出会っていたんです。『プリンス・オブ・ブロードウェイ』という舞台の中で日本語で歌った『蜘蛛女のキス』の訳詞をしてくださったのも香さんで! 今回の現場でその事を知ってびっくりしたんです。
小林:あの時、宝塚退団後一発目の仕事で、一人アメリカに渡って、ハロルド・プリンスさんの作品で……ものすごく緊張しているだろうなあ、と思いながら見ていました。『蜘蛛女のキス』だけはババーン! と行けるようにいい歌詞を書いてお渡しすることが陰ながらのお手伝いだなと思っていました。
ーーさて、今回どのような柚希さんを見せたいですか?
小林:普段の柚希さんは非常にドラマティックな役を演じられることが多いんですが、せっかくの小さな小屋なので、普通の自然な等身大の女性を演じていただきたいと思っています。
柚希:そう、そこは今あがいています(笑)。日本の名前だし、現代劇。ただでさえ一人ミュージカルで大変なのに役どころも新しい挑戦だから、もうタジタジ(笑)。
柚希礼音
ーー柚希さんならこんな役でもきっとやり抜いていけるだろうと思っているからこそじゃないですか?
柚希:そう思って頑張ります!
小林:「トップオブトップ」と呼ばれてきた柚希さんですが、その言葉の意味は「ものすごく努力してきた人」。だから、今回はきっと苦しみながらも千秋楽までにはたどり着く事が出来る人だろうと思ってます。
柚希:とにかく必死に頑張るのみ! 皆様楽しみに待っていてください!
(左から)柚希礼音、小林香
取材・文・稽古場撮影=こむらさき インタビュー撮影:早川達也
公演情報
小林香
柚希礼音
CBGKシブゲキ!!
2019年5月24日 (金)~6月9日(日)
CLAPPER STUDIO
(台北市中山區市民大道三段2號 三創生活園區5F)
2019年7月6日(土)・7月7日(日)
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2019年7月13日 (土) ~ 7月15日 (月・祝)