『M-1グランプリ』を手がけた放送作家・倉本美津留の名画鑑賞術とは? 新刊『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』が発売
『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』表紙
『シャキーン!』『ダウンタウンDX』『M-1グランプリ』などの人気番組を手がけてきた放送作家・倉本美津留による新刊『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』が発売となった。
美術史に名を残す画家たちは、過去の作品から影響を受け、更なる高みを目指すため、引用やパロディを手法とした創作を盛んに行なってきた。そんなパロディを手法とした名画から刺激を受けた倉本は、名画にちょっとだけ描き足しを施すことで、新たな価値観で見せようとくわだて、リスペクトと愛をもって笑いに昇華する書きとりを「パロディスム」と命名。
『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』中面より
本書では、倉本の作品のほか、約50点の美術作品を紹介。取り上げたすべての作品を美術史家・宮下規久朗が徹底解説。美術史におけるパロディの系譜を、3つのコラムとともに考察する。
『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』中面より
1章では、名画から触発された倉本が制作した長年ためていたパロディ作品9点を掲載。放送作家として長年培ってきた物事の転換・展開方法を4つの視点にわけてエッセイとともに紹介する。
『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』中面より
『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』中面より
2章では、倉本が選出した巨匠によるパロディ作品を紹介。《モナ・リザ》の複製印刷にヒゲを描き足したことで有名な、マルセル・デュシャン《L.H.O.O.Q》をはじめ、マグリット、ダリやゴッホが過去の作品を引用し、どのように昇華させていったか。倉本による前フリとツッコミで、ページをめくるたび作家のコミュニケーションを垣間見ているかのように感じる構成。
『パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術』中面より
3章では、現代を生きる日本のアーティストによるパロディ作品を紹介。倉本のコメントとともに、元となった作品とが見開きに収められ、見比べながらその変化を楽しむことができる。
(左から)みうらじゅん、倉本美津留、しりあがり寿 撮影=吉澤健太
また、巻末スペシャル企画として、しりあがり寿×みうらじゅん×倉本美津留の鼎談を収録。パロディが盛り上がりを見せた70〜80年代のサブカルチャーの話を中心に、「パロディ」のもつ奥ゆかしさと魅力に迫る。
「ほんの少しのちょい足しやとらえ方の転換で、アートが心をグイグイ動かす愛すべきアホな遊びになる。こんな芸術の楽しみ方があってもいいんじゃないか」(本書より)
アートと笑いの境界線上に立つ倉本が、「パロディ」を切り口に始まる新たな美術の旅に、読者を誘う1冊となっている。