南沙良がサプライズ参戦、大高健志、倉本美津留、直井卓俊、横川良明と映画・アート・演劇を語る『B面キックオフイベント/B面会議 Vol.1』レポート
(左から)大高健志 石井龍 倉本美津留 南沙良 直井卓俊 横川良明
『B面キックオフイベント/B面会議 Vol.1』というイベントが2019年8月21日(水)、WIRED CHAYA 浅草店において開催された。本イベントは、2020年4月18日(土)と19日(日)に浅草九劇で開催されるカルチャーイベント『B面フェス』のキックオフとなり、映画、アート、演劇などさまざまなジャンルのB面キュレーターが自身の好きなカルチャーについて語り合う場となった。
登壇したのは、『M-1グランプリ』など数多くのテレビ番組を手掛ける放送作家の倉本美津留、今年6月に浅草九劇で上演された『アルプススタンドのはしの方』で初の演劇プロデュースをした直井卓俊、クラウドファンディングサービスMotion Gallery代表取締役の大高健志、今年アニメーションスタジオ「FLAT STUDIO」を設立した石井龍、映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆する演劇ライターの横川良明の5名。この5名は『B面』のコンセプトに賛同し、第一期キュレーターを務めている。
「100人の好きと100人のクリエイターがカルチャーを共創する」という『B面』とは何を意味するのか。音楽ディスクにはA面のタイトル曲とB面のカップリング曲が収録されるが、A面にはヒットを求められる曲が選ばれる一方で、B面はアーティストのクリエイティブが自由に発揮された曲が選ばれる。つまりA面ではできない先鋭さや実験性をB面で爆発させることができるということで、『B面』ではまさに音楽ディスクのB面のように、はち切れんばかりの表現欲求を抱えたクリエイターが集まり、出会い、創り、表現し、届いていく場所を目指しているという。
今回のイベントでは、登壇者がカルチャーにはまったきっかけ、2019年のおすすめクリエイター、来年開催される『B面フェス』でどんなクリエイターに出会いたいかなどがテーマにあげられ、途中からアニメ好きで知られる女優の南沙良もサプライズゲストとして緊急参戦し、それぞれのカルチャーに対する思いを熱く語りあった。
カルチャーにはまったきっかけについて、倉本は小学校3年生の時に出合ったつげ義春の漫画『ねじ式』に衝撃を受けたという。そこから目に見えるもの以外のところで大事なものがあるのではないかと学んだと語れば、横川は、幼い頃から人とコミュニケーションをとることが苦手で、そんな時に観た野島伸司のテレビドラマ『未成年』を見て救われ、それ以来カルチャーに苦しみを肩代わりしてもらったと語った。大高は幼い頃から千葉ロッテマリーンズのファンだったが、当時まわりは読売ジャイアンツファンが多く「なぜパ・リーグの球団が好きなんだ」といじられたことから、マイノリティー側のスタンスを取り始めたとユニークなエピソードを披露した。
倉本美津留
大高健志
南は小学生の時に見た『黒子のバスケ』でアニメ好きになったと語り、プライベートでは時間がある限りアニメを見ていると明かした。アニメ以外にも大きい生き物が好きで、特に最近はサメにはまり「『シャークネード』が面白いんです!」と熱く語る意外な一面を見せていた。
南沙良
直井は2019年におすすめしたいクリエイターについて、16歳のシンガーソングライター・諭吉佳作と、今年の8月に上演された倉本朋幸(オーストラ・マコンドー)作・演出の舞台『明日もう君に会えない』(制作「山口ちはる」プロデュース)、そして8月24日(土)から公開される、自身が企画し南が主演する映画『無限ファンデーション』を取り上げた。面白いクリエイターはどうやって見つけているのかという質問に対して、自分で見つけることはほとんどなく、だいたい人に紹介されて出会うことが多いと語り、面白い人は面白い人を呼ぶという言葉が印象的だった。
直井卓俊
一方、最近サッカーにはまっているという石井。今のサッカー界は社会人チームを合わせるとJ6まであり、J1を目指していくため、チームごとにカラーやステイトメントを作ろうと各チームが思想の戦いのようになっているところが面白いと語った。こうしたことを見ていると2019年はみんなが価値観を探ることを意識するようになるのでは、と締めた。
石井龍
最後に、来年行われる『B面フェス』でどんなクリエイターに出会いたいかという質問に対して、自分の中で完結してしまいがちな演劇の世界だからこそ、外に向けて発信ができる人に参加してほしい(横川)、カルチャーというと映画や演劇というイメージだが、サッカーの話が出たようにカルチャーの概念をはずして話ができると面白いと思う(大高)、『B面フェス』だからこそできる企画として映画『バッファロー'66』みたいなことをやってみたい(直井)、表舞台に立つ人は一人だけれど、その人を支えるチームの総合力が重要だと感じているので、作る側だけでなく観る側のお客さんで面白い人に出会いたい(石井)、女の子が着る洋服に興味があって洋服を作ることが好きなので、着ている洋服から物語を生み出してくれるような人に出会いたい(南)とそれぞれの思いが語られた。
横川良明
登壇者それぞれが独自の視点で語るカルチャーはとても興味深く、「そういう視点で見ることができるのか」と驚きの連続だった。まさにB面を存分に堪能できた2時間だったが、来年開催される『B面フェス』では、さらにどっぷりB面カルチャーの世界に浸れる予感がした。
今回登壇した5名のキュレーターから、コメントが到着しているので紹介する。
石井龍コメント
私は芸術やエンターテインメントは生きるうえでの「嗜好品」ではなく「必需品」だと思います。あれば助かる存在ではなく、なければ生きていけない存在ではないか。クリエイターによって"A面"と"B面"の捉え方は様々だと思いますが、本企画のテーマは「好きを自由に表明すること」だと感じました。私も参加するみなさんと一緒に、自分の好きを伝えていければと思います。どうぞよろしくお願い致します。
<プロフィール>
クリエイティブスタジオ「ANSWR」、ソーシャルTV局「2.5D」を経てデザインコンサルティングファーム「THINKR」へ。2019年1月イラストレーターのloundrawとともにアニメーションスタジオ「FLAT STUDIO」を設立。これまでに1000名を超すクリエイターと協同しプロジェクトを推進するなど、異なるカルチャーのクリエイティブを繋ぐプロデューサー&マネジメント。loundraw、佐野徹夜を担当。
大高健志コメント
昨年の「うずフェス(仮)」に参加して、いま東京オリンピックの風も受けて盛り上がっているイーストトーキョーの盛り上がりと、古くて新しい文化の震源地になりそうな予感をひしひしと感じました。海外の旅行者も集まる「WIRED HOTEL ASAKUSA」を舞台にして、B面というCDで音楽を聞いてきた時代の文化の持つオルタナティブな価値を、現代でもまた新しい価値として盛り上げていく今回の取り組みにワクワクしています。みんなで、新しいB面を作りましょう!
<プロフィール>
早大卒業後、外資系コンサルティングファーム入社。戦略コンサルタントとして事業戦略立案等に従事後、東京藝術大学大学院に進学。制作に携わる中で、 クリエイティブと資金とのより良い関係性の構築の必要性を感じ、 ’11年にクラウドファンディングプラットフォーム『MOTION GALLERY』設立。以降30億円を超える資金調達をサポート。 ’15年グッドデザイン賞「グッドデザイン・ベスト100」受賞 。 ’17年、誰でも自分のまちに映画館を発明できるプラットフォーム『POPcorn』設立。「さいたま国際芸術祭2020」キュレーター就任。MOTION GALLERY STUDIO第一弾長編映画『あの日々の話』第31回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門選出。
倉本美津留コメント
ピュアがジャンルレスに集うと、とんでもない面白い未来が始まるはず! B面はその為に用意された地面なのかもしれません。期待!!
<プロフィール>
放送作家。「ダウンタウンDX」「M-1グランプリ」「浦沢直樹の漫勉」「アー!!ット叫ぶアート Ah!!rt」NHK Eテレの子ども番組「シャキーン!」など、数々のテレビ番組手がける。これまでの仕事に「ダウンタウンのごっつええ感じ」「伊東家の食卓」「たけしの万物創世記」「EXテレビ」他。著書に「ことば絵本 明日のカルタ」「倉本美津留の超国語辞典」「笑い論 24時間をおもしろくする」「パロディスム宣言 笑い伝道師の名画鑑賞術」。
直井卓俊コメント
今回誘われて改めて考えた事ですが、絶対的に当てなければいけない「A面」に賭ける人たちのプレッシャーとちょっと違う「B面」だからこその自由と無欲から生まれる奇跡の逆転ーーーそれこそが今までうちがやって来た事かもしれません。同じマインドを持った人たちと集まって何かができたらきっと幸せだろうな、なんて想像をしながら、このプロジェクトの成功を祈っています。どうぞ宜しくお願い致します。
<プロフィール>
1976年、栃木県生まれ。法政大学卒業後、アップリンク勤務を経て、SPOTTED PRODUCTIONSとして配給、宣伝などを手がける。配給作品に『SRサイタマノラッパー』シリーズ『フラッシュバックメモリーズ3D』『自分の事ばかりで情けなくなるよ』『百円の恋』、企画・プロデュース作品に『劇場版神聖かまってちゃん』『5つ数えれば君の夢』『私たちのハァハァ』『少女邂逅』など。気鋭の映画監督×アーティストによる映画祭「MOOSIC LAB」など。6月には初の演劇プロデュース作品『アルプススタンドのはしの方』が浅草九劇で上演され、好評につき映画化が決定している。
横川良明コメント
「Everything (It's you)」より「デルモ」、「月光」よりも「Arrow of Pain」、「らいおんハート」よりも「オレンジ」が大好きだった少年時代。B面の持つ、秘密の暗号のような魔力にいつも心をドキドキさせていました。きっとこのフェスでも、そんなB面らしい、自由で、エッジィで、遊び心たっぷりのパフォーマンスに出逢えると信じています。すべてのエンタメ・カルチャー好きにとって最高の2日間となるよう一緒に応援していきましょう!
<プロフィール>
1983年6月13日生まれ。大阪府出身。映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆。男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。
なお、8月21日(水)から『B面』クラウドファンディングが始動した。500円から支援が可能なので、詳しくは公式ホームページやツイッターを確認してほしい。
イベント情報
■場所:WIRED CHAYA浅草店(東京都台東区浅草2-16-2 1F)
■出演:大高健志、倉本美津留、直井卓俊、横川良明/南沙良
・クラウドファンディングプロジェクトサイト(Motion Gallery)
https://motion-gallery.net/projects/bside_2020
・開催期間:2019年8月21日~2019年12月8日
・『B面』Twitterアカウント:https://twitter.com/bmen_sideb