シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム第四十九沼(だいよんじゅうきゅうしょう) 『ネットショッピング!沼』
「welcome to THE沼!」
沼。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れることを
「沼」
という言葉で比喩される。
底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。
第四十八沼(だいよんじゅうななしょう) 『ネットショッピング!沼』
多分、去年までの私は世に言う浪費家、という類の人間だった。
アホみたいに毎日何かしらの買い物をして、物欲に支配され、目に入るものを片っぱしからポチってしまっていた。
欲しいものを検索して買うのはもちろんのこと、オークションなどで何かが目に入った瞬間、必要なさそうなものまでポチってしまう。
インターネットはユーザーの興味に沿って、欲しい商品に誘導するという悪魔のような仕掛けが施されている。
なかでも一番危険なのはスマホだ。
インスタやFB、あるいはTwitterなどのSNSを開いていると、なぜだか自分の興味のある商品の広告がさりげなく表示されるのだ。
そして、無意識の内に誘導される。
すると、最初の目的(SNSを読んだり書いたり)をすっかり忘れて何かをポチっているのだ。
Amazonを始め、宅配のダンボールが毎日大量に届いていた毎日。
なんで物のサイズと箱のサイズがあんなに合ってないんだ!
そして、特に疲れているときや、眠くて判断力が鈍っている時間帯が最も危険だ。
元気を取り戻そうと、物欲で満たそうとする。
よく深夜にTVで通販番組がやっているが、あれは完全に確信犯だと思う。
しかし、届いた商品を開封した瞬間に、そのワクワクは嘘のように消え去る。
所有したという安心感を得たらそれで終了なのだ。
そして、また心を満たそうと次の獲物を探すという無限回廊にハマっていく。
これは、いわゆる買い物依存症という病気だ。
インターネットは危険だ。
カード情報が保存されているので、ポチるというワンアクションで、瞬時に何でも買えてしまうのだ。
我が家の大蔵省は妻だ。
いつも財布にはせいぜい1万円くらいしか入ってない。
すぐに財布を落とすからだ。
そのため、外出時はほとんどをカードで決済している。
去年末、いったい自分がどれだけの買い物をしているのか、データを妻から見せてもらった時、失禁しそうになった。(少し漏れた)
毎日なんだかの買い物をしている。
1つ1つはそこまで高いものではないものの、9割はどうでもいい、必要じゃないものばかりだった。
あまりの自分の酷さに愕然とし、妻に言われるまでも無く猛省し、丸刈りにして詫びようかと思ったくらいだ。(していないが)
「絶対に必要なもの以外買わない!」
昨年末、そう心に決めた。
そして、クレジットカードは妻に渡して(没収とも言う)、私はツアーなどの旅先以外では、現金しか使わないことにした。
今年に入り、既に6ヶ月が経過した。
そして、なんと私はこの6ヶ月の間、ポチったのはたった一個だけ。
第47沼で紹介した「香炉」だけだ。
でかしたぜ。
『遊ぶために生きる』を50年間信条としてきたが、実際の消費額を数値で見たときに目が覚めた。
同時に物なんかなくても、いくらでも遊びを楽しめる、という事も少しずつ実践できるようになった!
習慣というものは侮れない。
しばらく買い物をしない日を続けると、自然と物欲も無くなり、正直今は何もほしいものが無い。(ランボルギーニ・カウンタック以外)
50歳にして人間変わる事ができると実感している。
そんな私の唯一ささやかな楽しみがタバコだ。
周りの喫煙者がどんどん禁煙に成功するなか、私の喫煙数は増加の一途を辿る。
数年前にお酒をやめたときは、一瞬にしてスムーズに止める事ができたが。
ただ、喫煙に関しては健康や周囲の事も考えて「やめたい」と思う反面、本気でやめようと思っていない自分がいるのも確かだ。
特に締め切り前の制作仕事は、めちゃくちゃ本数が多い。
これもニコチン中毒という立派な病気だという事はわかっている。
さて、どうしたものか。
話は戻るが、買い物依存から脱出できたもう一つのコツはストレスを徹底的に排除するという事だ。
方法は以外と簡単に見つかると思う。
例えばランニングをしてみるとか、大自然に触れるとか。
私の場合は、とにかく「疲れたら寝る」事と「1日全く何もしない日を設ける」事でストレスがどっかに飛んでった。
それと「音楽を聴く」事。
これは月1000円くらいお金がかかるが、私の場合は経費にもなるのだ。
音楽配信サイトを利用して、世界中のさまざまな音楽を聴きまくる。
現在の音楽配信サービスは、かなりマニアックな作品も大量に用意されていて素晴らしい。
実のところ、いままで他人が作った音楽をほとんど聴かない(聴かないように努めていた)私が考えを改めて、いろんな音を聴くようになった。
それが意外とよかった。
ジャケがダサ過ぎたり、評論や人の噂などの先入観で聴いてこなかった過去の作品を何気なく聴いてみたらかなり良かったりする。
発見する楽しみ。
まあ、これ以外にも買い物に依存しなくても人生楽しむ方法はいくらでもある。
みんなも物欲の沼から這い出して、遊びをクリエートする、という沼に入ってみないか?