札幌芸術の森美術館で『テオ・ヤンセン展』 プラスチックチューブでできた生命体「ストランドビースト」13体を展示
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『テオ・ヤンセン展』が、2019年9月1日(月)まで、札幌芸術の森美術館にて開催中だ。
テオ・ヤンセンは1948年オランダのスフェベニンゲン出身。デルフト工科大学で物理学を学んだ後、画家に転向、1990年より「生命体をつくる」思いに駆られ、プラスチックチューブでできた生命体「ストランドビースト」(以下ビースト)を生み出した。スフェベニンゲンの砂浜に生育し、風をエネルギーとして動くビーストは、さまざまな機能を身につけながら、約30年の間に進化を重ね、『アニマリス・〇〇』と名の付く、その種の数は50を超える。
アニマリス・プランデンス・ヴェーラ
ビーストの最大の特徴は、「本物の生き物のような動き」だ。その動きの根底にあるのが、脚の形と構造である。ヤンセンは物理学の知識とコンピュータ・プログラムを駆使して、その形を導き出した。使用するプラスチックチューブの長さと位置関係の比率を表す13の数字を定め、それらは「ホーリー・ナンバー(聖なる数字)」と名付けられている。特定の生物をモデルにすることなく、自身の頭の中に思い描いた「生物」の動きを実現しているのが、ホーリー・ナンバーの脚なのだ。
ビーストが日本で初めて公開されたのは、2009年日比谷パティオ(旧三信ビル跡地・現東京ミッドタウン日比谷)。翌2010年には日本科学未来館にて展示された。2011年大分市美術館の展覧会では当時の館の新記録となる14万人超の来場者数を達成。その後も2014年長崎県美術館、2017年の三重県立美術館、沖縄県立美術館、2018年アクアマリンふくしま、と日本各地でビースト旋風を巻き起こしてきた。さらに旋風は日本のみならず、2018年にはシンガポール、エクアドル、チリ、2019年はイタリア・ミラノ、ドイツ・フランクフルトと世界中に吹き荒れている。
アニマリアス・ムルス
北海道初上陸となる作品群は、新作3体を含む12種類13体のビーストだ。
テオ・ヤンセンは生命体であるビーストの進化系統樹をつくっている。また、地質時代にならって、ビーストの特徴と誕生時期にあわせ、〇〇期という名前をつけている。今現在は「ブルハム期」と呼ばれていて、ブルハム期のビーストの特徴は「キャタピラ型」だ。同じ形の素材がいくつもつらなったビーストが、頭部に帆を張り、風を受けると体を波打たせて移動する。波の形は見事なサインカーブを描き、とてもプラスチックチューブでできるとは思えない動きだ。
「アニマリス・ムルス」「アニマリス・カリプス」がそれぞれキャタピラ型で、従来型のビーストでは「アニマリス・オムニア」がお目見え。ラテン語で「すべて」を意味するオムニアを名前に持つこのビーストは、進化の過程で備えた「自身の体をハンマーで砂浜に固定する機能」「ペットボトルに圧縮空気を溜める機能」「尾を振って人の気をひく機能」等を持ち合わせている。