シンセ番長・齋藤久師が送る愛と狂気の大人気コラム・第五十二沼 『いびき!沼』

2019.7.25
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「welcome to THE沼!」

沼。

皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?

私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。

一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、その世界にどっぷりと溺れること

という言葉で比喩される。

底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。

これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。

毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。

第五十二沼(だいごじゅうにしょう) 『いびき!沼』

私のイビキを聞いた事がある人は、その破壊力がどれほどのものなのか知っているだろう。

ある日、連日の徹夜明けで、あるステージの楽屋で爆睡していた時、目を覚ましたら分厚いパーテーションで周囲を囲まれていた事があった。

また庭でテントを張って寝ていたら、近所の人に「熊が出た」と大騒ぎになった事もある。

家族は私より先に寝ないと、あまりの轟音に不眠になってしまうほどだ。

このイビキ、実は小学生の頃から続いているのだ。

小学校6年生の時、あまりのイビキの酷さと、鼻炎になると鼻で息ができなくなるという二重苦のため耳鼻科で診察を受けた。

鼻腔があまりにも狭いという診断で、鼻腔を削る地獄のような手術を受けた。

鼻で息を吸えるようにはなったのだが、残念ながらイビキは治らなかった。

そして現在でも、そのすさまじいイビキが続いていたわけだ。

そのいびき、異常なんじゃない??

ある日 妻が言った。

「夜中寝ているとき、1分くらい呼吸してないときがあって、死んでるかと思ったよ」と。

いわゆる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」というヤツらしい。

忙しさにかまけて、妻に言われてからも放置していたが、あるとき「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」についてネットで少し調べてみた。

そしてこの症状を放置しておくと、とんでもなく恐ろしいリスクが伴う事が分かった。

 

まず、無呼吸の最中は当然体内に新しい酸素が取り入れられていない。

起きている時は息を止めていると苦しくなるが、睡眠中はその苦しさを伝える機能もストップしているというのだ。

つまり、体全体、そして特に脳に酸素が行かない事によって身体に変調をきたすという。

50年間、調子悪いのが当たり前だと思っていた。

例えば、昼はずっと怠いし、元気もない。

身体中がなんか痛い。

全身が凝る。

頭が痛い。

若い頃と比べて朝起きた時の爽快感が無く、目の前が暗い。

寒いのに汗かいたり、暑いのに鳥肌立ったりと、自律神経がおかしい。

長距離歩けない。(マックス1km)

集中力が持続しない。

こんな事は、人間のアベレージだろうと考えていた。

しかし、ネットを調べて怖くなった私は、直ちに睡眠外来に飛び込んだ。

そして、一晩 変なヘッドギアみたいなのを付けて、睡眠の状態を計測する事になった。

 

ドクターからの診断に生つばゴクリ・・・

計測後しばらくして結果が出たとの事で、私は再び睡眠外来の門を叩いた。

そこで先生から言い渡された言葉は。

「これ、重症ですよ。けっこうヤバいです」

という非情な死刑宣告だった。

先生はこう続けた。

「良い睡眠をとる事は重要です。齋藤さんの場合、立派な睡眠障害ですよ。
コレ、ほとんど寝ていない感じです。
このまま放置すれば、強い眠気や倦怠感や集中力低下などが引き起こされ、日中の様々な活動に影響が生じるだけで無く、脳卒中のリスクが著しく高まるのでCPAP治療をしましょう」

聞き取りずらかったので、一瞬「シーパックス?シーパックスアシッドクルー?」とマジでボケてしまったが、CPAPという鼻にチューブを付けて、無呼吸を改善するギアがあるという。

だいたい月に一度の診察で、あとはそのギアをつけて寝るだけで、改善するという。

コストは月5000円。

けっこうな値段だと思いながらも、早速CPAP治療をお願いした。

その機器を製造しているフィリップスと睡眠外来の医療機関が連携されており、機器からは常に睡眠の状態を測ったデータが無線で送られ、フィリップスと医療機関で共有し、月一の治療時に私に合わせたチューニングを施してくれるというシステムだ。

見た目のエグさとは違い、超ハイテク。

なんだか、最初は騙されているのかと思ったが、ものは試し。合わなかったやめればいいだけだ。

家族もビビる私の睡眠ギアのすごさ!

しばらくして、フィリップスの人が、わざわざ自宅までCPAPの機器を持ってきてくれた。

基本的にリースになるようで、もし形が自分にあわなければ、いつでも数種類ある機器の中から自分に合ったものに取り替えてくれるという。

さらに、一年使ったらまた新品に交換してくれると言っていた。

私の使用する機器は鼻だけを覆うタイプだ。

鼻と口の両方を覆うタイプのものもあったが、苦しそうなのでやめた。


その夜、早速そのギアを装着してみた。


音はものすごく静かだ。

ただ、頭からベルトで止めるために、すこし違和感があるのと、息を吸う時は良いのだが、吐く時にちょっと息苦しい。

そんな事を考えながら、知らないうちに眠りに落ちていた。
寝つきの悪い私がこんな早く寝るってだけでもすごい。


そして、翌朝起きてビックリした。

「視界が明るい!」と思わず叫んでしまった。

いや、正確に言うと眩しかった。

曇り空だというのに、やけに明るく見える。

靄が消え去ったようなクリアーな視界に驚くと同時に、50年間もの間まともな睡眠を取れていなかったのだと一瞬で気づいた。

身体がどこも痛くないのだ。

いつも家族に言ってバカにされていた「扁平足だから足の裏が凝る」という症状も一切無い。

頭が痛くないどころか、爽快すぎて、今すぐどこかに遊びにいきたい!と思うほど。

昼頃、ただならぬ眠気と気だるさに襲われていた今までの自分は何だったんだろう。

試しに、いつもは車を使う子供の幼稚園に徒歩で迎えに行った。

「疲れないw」

それどころか、元気がありあまって、なんかしなくちゃいられないw

実は結構いる?CPAP仲間たち

この状況をSNSで報告したところ、驚く事に多くの人が「試したい!」という反応。

それだけではない。

既に「18年使ってます」「手放せません」などのCPAP先輩方々のコメントが世界中から多く寄せられた。

しかしだ!

このCPAP治療は、根本治療では無いのだ。

ず〜っと装着し続けなければならない。

死ぬまで装着し続けなくてはいけないのである。


しかし、最初はちょっと高いと思った(年間6万円)ランニングコストもこの快眠を得られるなら安いものだ。と本当に思う。

もしも、私と同じような症状を感じたら、睡眠外来に行く事をオススメする。

追伸:実は、最初にCPAP治療を教えてくれたのがDJ TOBYたんだった。
ありがとう!これで私も仲間だぜ。

みんな、いびき!沼、いや、睡眠障害沼から這い出して、安眠沼へ移住しよう!

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