人気漫画の5度目の舞台化 『ミュージカル「黒執事」―地に萌えるリコリス2015―』レビュー
2015.11.24
レポート
舞台
アニメ/ゲーム
-
ポスト -
シェア - 送る
漫画の舞台化として人気のミュージカル『黒執事』―地に萌えるリコリス2015―の東京公演が、11月21日、赤坂ACTシアターで開幕した(29日まで、のち福岡公演あり。大阪・宮城公演はすでに終了)
物語の背景となるのは19世紀後半、ヴィクトリア朝のイギリス。名門貴族ファントムハイヴ家の少年当主シエルに仕える万能で完璧な執事セバスチャン。その正体は、シエルと契約を交わした悪魔だった…。
06年から月刊「Gファンタジー」に連載中の原作漫画(枢やな)は、ユニークな設定と華麗なビジュアル、謎やアクションにギャグもちりばめた構成で熱烈な女性ファンを獲得。08年から3度にわたってTVアニメ化され、舞台化も09年から今回で5回目となる。12月には中国三都市での海外公演も予定していて、その人気はさらに上昇中だ。
今回は、昨年上演されたミュージカル『黒執事』―地に萌えるリコリス―に新キャラも加えてバージョンアップ。主役のセバスチャンにはミュージカルで活躍中の古川雄大が初めて挑んでいる。また、シエル役は、ドラマ『とんび』(13年)で佐藤健の少年時代を演じ、映画『るろうに剣心 伝説の最期編』などにも出演した中学2年生の福崎那由他が昨年から続投している。
【物語】
わずか13歳で玩具・製菓会社ファントム社を率いるシエルは、「女王の番犬」として難事件を解決するという裏の顔を持つ。彼の執事は、契約によって命令に絶対服従する悪魔のセバスチャン。今回、女王陛下の秘書武官兼執事のWチャールズ(チャールズ・グレイとチャールズ・フィップス)から持ち込まれたのは、切り裂きジャックによる連続娼婦殺人事件を解決することだった。シエルのおばで社交界に顔のきくマダム・レッドや、貿易会社の支店長だが裏の顔を持つ劉の協力を得て、犯人の可能性がある人物が絞り込まれるが…。
【物語】
わずか13歳で玩具・製菓会社ファントム社を率いるシエルは、「女王の番犬」として難事件を解決するという裏の顔を持つ。彼の執事は、契約によって命令に絶対服従する悪魔のセバスチャン。今回、女王陛下の秘書武官兼執事のWチャールズ(チャールズ・グレイとチャールズ・フィップス)から持ち込まれたのは、切り裂きジャックによる連続娼婦殺人事件を解決することだった。シエルのおばで社交界に顔のきくマダム・レッドや、貿易会社の支店長だが裏の顔を持つ劉の協力を得て、犯人の可能性がある人物が絞り込まれるが…。
古川は長身とルックスに歌唱力を活かして、魅力的なセバスチャンを演じる。「あくま(悪魔)で執事ですから」といった極め台詞で、恭しくシエルにかしずく姿は、女性ファンの心をくすぐる。2幕には死神グレル(植原卓也)との激しいアクションシーンもあって、目が釘付けになる。
シエルの福崎は「偉そうにしているけれど、本当は寂しい」という気持ちが伝わってくる。衣裳替えもいろいろあって楽しいが、中でも捜査のためにピンクのドレスで女装するシーンは、セバスチャンとのダンスもあるので必見だ。マダム・レッドと絡む場面では、芝居の上手さが光る。
マダム・レッドには、宝塚在団中から歌の上手さで注目され、退団後は『CHESS』などミュージカルで活躍するAKANE LIV。ビジュアルもはまっているが、歌唱力は圧倒的で、ソロはもちろん、最後のシエルとのデュエットも聴かせる。
劉を演じるのは、俳優集団D-BOYSや音楽ユニットD☆DATEで活躍、今年はソロデビューもした荒木宏文。原作ではつかみどころのないキャラクターを、一癖ある感じで演じている。女性アンサンブルと一緒のダンスもあるナンバーも見どころだ。
植原グレルはダンス力が圧巻で、死神だとカミングアウトしてからのオネエキャラも強烈。初演から続投でまさにはまり役だ。その上司・スピアーズ役の輝馬も、原作ファンも納得させるキャラクターの再現度で、短い出番でもインパクトが絶大。
切り裂きジャックの可能性あり…とされるドルイット子爵の佐々木喜英は、歌もダンスも達者なうえに華やかで、登場すると場をさらってしまう。
演出は「少年社中」主宰の毛利亘宏で、原作のギャグシーンを再現して爆笑させるかと思えば、映像を使った回想シーンは生々しい。舞台上にいるのが2人か3人という場面でも、役者を上手と下手に配したり、高いセットの上下に置いたりして、観るものに全方向への注意力を喚起させる。
歌にダンスにアクションと見どころ満載の舞台で、最後に残るのは切ない思い。これだけ何度も再演されるのが納得の作品である。
【取材・文/笠松綾(C)2015 枢やな/ミュージカル黒執事プロジェクト 撮影/岸隆子(Studio Elenish)】
公演情報
ミュージカル「黒執事」
原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)
演出:毛利亘宏
脚本:井関佳子
出演:古川雄大 福崎那由他
植原卓也 矢田悠祐 広瀬友祐 輝馬/佐々木喜英
鷲尾昇 河原田巧也 坂田しおり 高木俊 寺山武志 和泉宗兵
荒木宏文/AKANE LIV ほか
公式サイト:http://www.namashitsuji.jp
<国内公演>
11月21日(土)~11月29日(日) 東京・赤坂ACTシアター
12月4日(金)~12月6日(日)福岡・キャナルシティ劇場
<中国公演>
12月11日(金)~12月13日(日) 上海・藝海劇院
12月18日(金)~12月20日(日) 北京・北京展覧館劇場
12月25日(金)~12月27日(日) 深川・深川保利劇院
※深川(シンセン)の「川」は、「土」に「川」