柳下大×平埜生成が孤児の兄弟役に!舞台「オーファンズ」
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柳下大・平埜生成
柳下大×平埜生成が孤児の兄弟役に!舞台「オーファンズ」
俳優集団D-BOYSの柳下大が主演を務める舞台『オーファンズ』が2016年2月、東京芸術劇場シアターウエストと、新神戸オリエンタル劇場にて上演される。
本作は、劇作家ライル・ケスラーが手掛けた戯曲で、1983年のロサンゼルス初演以来、幾度となく舞台化、映画化されてきた。日本では86年に劇団四季によって上演され、市村正親がトリート役を演じた。さらに00年には椎名桔平、根津甚八、伊藤高史の3人で上演された、不朽の名作として知られている。米フィラデルフィアにある古びた長屋にひそかに暮らす。トリートとフィリップの孤児の兄弟。そこへ泥酔した男ハロルドが迷い込む。兄弟は、男を誘拐して身代金を稼ごうとするが、ひょんなことからその男とおかしな共同生活を送ることになる。そして思わぬ結末に…。孤独な兄弟が、かつて孤児だった男の優しさに触れ、ぬくもりを分かち合うようになる。
三人芝居の秀作ともいえるこの舞台に挑戦するのは柳下大(やなぎした・とも)、孤児兄弟の兄トリートを演じる。そして弟フィリップを演じるのは、劇団プレステージの平埜生成(ひらの・きなり)、ハロルド役には高橋和也(たかはし・かずや)を迎える。演出を手掛けるのは、宮田慶子。
本作は宮田演出で上川隆也主演の舞台『真田十勇士』(13,15年 赤坂アクトシアター他)に猿飛佐助役で出演した柳下が、宮田の再演出を熱望し、自らオファーして企画化された。
今回、柳下と平埜に出演にあたって、話を聞いた。
柳下大・平埜生成
――柳下さんは宮田さんと「真田十勇士」以来の再タッグですね。
柳下:僕が「真田十勇士」の初演で宮田さんとご一緒し、最初に演出をつけていただき、その後も気にかけていただいて、僕が出演している舞台を観に来てくださったんです。宮田さんには僕が考えていることを見透かされるんです。「あなたこんなこと考えているでしょ?」って(笑)。あるとき、嬉しいメールをいただきました。「いつか柳下さんの舞台の演出をしたいです」という感じの内容で。
「それならば(演出を)やっていただけませんか?」とご飯を食べたときにダメもとで聞いてみたら「いいですよ」と返してくださって。そのときはまだどんな作品をやるか決まってなかったんです。宮田さんに演出していただくことが先に決まりました。
――どうしてそんなに宮田さんにお願いしたかったんですか?
柳下:宮田さんに演出していただくことで、自分になかった部分を引き出してもらおう、という想いが最初にありました。自分のイメージにない事、普通ではオファーがこないような役、うちの事務所ではやらなそうな作品で、チャレンジングな役を。宮田さんが演出を手掛けることで、よりその作品の良さが引き立つような…となり、三人芝居で会話劇という「オーファンズ」になりました。いろんな要素が入っているんですよ、この作品には。
――平埜さんはこれまで宮田さんの演出や作品に接したことはありますか?
平埜:演出は初です。作品としては「真田十勇士」を観させていただきました。宮田さんは、本読みやセリフをすごく大切にされると聞いていたので、どういう演出をするんだろうと。
――劇団で活動している平埜さんだけに、「作る側」目線でもこの作品を見てしまいますか?
平埜:見ます!どのくらいお金がかかっているのか、とか。
柳下:(笑)
平埜:小屋代とかも気になりますね。こういうところ(シアターウエスト)でやったことがないのでいくらかかるのかわからないし。照明も予算次第で吊るものが変わってきちゃうし。セットも変わる!
――この作品を演じる上で、宮田さんから何かリクエストはありましたか?
柳下:何もないです。ただ、「難しい役なので覚悟しておいてね」という感じのことは言われました(笑)出演者三人と宮田さんでどう作っていくか、が課題ですね。
――「オーファンズ」って、これまで映画や舞台など世界各国で何度も演じられてきた作品ですよね。
柳下:「オーファンズ」という作品が何回も、そして長年上演されている理由って、1シチュエーションで3人だからだと思うんです。例えばこれ、出演者3人が同じでも演出家が違ったら、全く違う作品になると思うし、僕だけ変わっても全く別の作品になると思う。そのときに組まれた座組みでしかできない、そのときにしかできない「オーファンズ」がある。だからこそ、何回も上演されているし、長年愛されているんだと思う。これまでの「オーファンズ」とは違う、自分たちなりの「オーファンズ」を導き出していけばいいと思います。
平埜:作品の中に、どの時代にも共通する普遍的なものがあると思うから、長年上演されている訳で、そこを理解したいと思います。しかもそれをあえて日本でやる意味を意識して読めたら、もっと楽しくやれるんじゃないかなって思っています。
――「オーファンズ」の魅力って何だと思いますか?
柳下:僕が感じていることですが、二人で生きてきた兄弟がいて、そこに一人の男性が入ることで人ってこんなに価値観や関係性が変わっていくんだってところが面白くて。人の気持ちの動きや感じ方だったり、孤児だからこそすごい孤独の中の小さな優しさやあたたかさを感じる…「孤独とあたたかさ」っていうのがこの作品の見どころかなって。
現代人って確かに簡単にコミュニケーションが取れるんだけど…SNSだったり。だからといってコミュニケーションが密なのかと言えばそれはどうか?と疑問に思うんです。この作品には人と人とのふれあいやあたたかさの原点があるように思う。この3人の方が僕たちより寂しい人のように見えるが、現代人も似たような寂しさを少なからず抱えている…そのあたりがリンクしてくると面白くなると思います。生きている世界が全然違うのになぜか共感できてしまう、とか、そういうのがある作品だなって。
平埜:差別の問題もあるとは思います。当初はそこが浮き彫りになっていたと思うんです。アイルランド系移民やユダヤ人などの。でも今この時代で「オーファンズ」をやる意味、しかもあえて日本でやる意味としてはたぶんそこが問題ではなくて…。
当時は今よりもっとコミュニケーションを取らないといけなかった時代で、生き残っていくための術(すべ)だった。でも今はそれがなくなったり、使わなくなった時代。だからこそ作品から浮き出てくるものがあるんじゃないかな。まだそれが具体的にはわからないけど。日本人って特にあまり自己主張しないから。差別の問題もあると思うけど、そこじゃないところを深めていくのがこの時代に「オーファンズ」をやる意味なのかなって思います。
――シアターウエストはキャパ200人くらいで、客席との距離も相当近いと思います。楽しみですか?それとも緊張しますか?
柳下:このキャパは初めてなんで楽しみです。
平埜:僕的にはこの劇場が神聖な場所なので、お客さんとの距離より、あの劇場で海外作品を上演する意味とか考えるのが楽しみなんです。これまで超小さい劇場でやってきたので。シアターウエストで上演されてきた芝居が好きで、よく観に行っていたんです。だから「オーファンズ」もそういう作品なんだなってこともわかる。こっちの世界に僕は足を踏み入れたんだな、って感じます。
柳下大・平埜生成
――柳下さんと平埜さんは初共演ですね。
柳下:初共演ですね。劇団プレステージとは今までほぼ接点がなかったんです。
――相手を意識したことはこれまでありましたか?若手の俳優集団という点では近しいと思いますが。
平埜:うちは劇団なので、D-BOYSとは集団の在り方が違うので「負けてられないさ!」みたいな意識はしたことがなかったですね。でもD-BOYSの舞台を観に行ったことはありますよ。なんだったかな。サンシャイン劇場でやってた作品。D2の方たちが出ていて…。
柳下:「TRUMP」だ!
――お互い会ったのはこれで何回目ですか?お互いの印象はいかがでしょう。
柳下:今日で4回目。初めて会ったときと変わらず、平埜くんは不思議くんです(笑)
独特の空気感がある。いい意味で虜になる。役とかぶっています。俺の中でフィリップっぽい。何を考えているかわからない部分とピュアな部分がかぶっているので。
平埜:不思議じゃないんです…人見知りなだけなんです(苦笑)
――平埜さんから見た柳下さんの印象は?
平埜:ええっと…「元ヤン」…人をいっぱい殴ってきていそうw
柳下:(爆笑)元ヤンじゃないっすよ!たまーに言われるけど。
平埜:強さ故のその「笑顔」かなって(笑)
柳下:横浜出身というと「ヤンキーでしょ?」と言われますね。髪の色が明るいときは特に。昔はヤンキーに憧れていたけど、親が厳しくてヤンキーになれなかった。すごいマジメに生きてきたので、ああいう不良っぽいことやってみたかった。僕の家、門限あったんですよ!
――じゃ、「ヤンキーっぽい」って言われて嬉しい!?
柳下:嬉しい…か!?嬉しくはないか(笑)
――お二人にとって自分の運命が動いた瞬間とは?
柳下:僕はやはりD-BOYSに入ったことですね。オーディションを受けていなかったら今頃大工さんをやっているかもしれない。
平埜:ヤンキー…
柳下:(笑)今よりもっとヤンキーになっていたかもしれない。こんなこぎれいでいる必要がないから、ジャージ姿でこんな帽子じゃなくて…
――ヘルメットだったかも?
柳下:そう、そしてボウズ頭だったかもしれない。髪をいじるのめんどくさいから(笑)
平埜:僕は昨年、蜷川幸雄さんの舞台に出たことですね。あれで運命が大きく変わったと思うんです
――これから稽古が始まりますが、お二人の距離感はどう詰まっていきそうですか?
柳下:お芝居が始まったら自然とうまくいく気がしますね。たぶん。
――平埜さん、人見知りは大丈夫ですか?
平埜:たぶん…大丈夫(笑)知っている方がいたら大丈夫なんですが、全く知らない方々ばかりだと人見知りしちゃいますね。今回は本当に知っている方が誰もいなくて、スタッフさんも初めての方ばかりで。アウェイです(笑)
――アウェイをホームにしていくコツって何かあるんでしょうか?
平埜:それは僕も知りたい。
柳下:その人それぞれのキャラですかねえ。僕はあまり現場をホームにしようと思ったことがないんです。
――最後になりますが、「オーファンズ」をどのような作品にしていきたいですか?
柳下:僕はこの作品がいろいろな節目の作品になると思うんです。タイミングとか、ケガからの復帰とか、自分で初めて企画した作品でもあり、宮田さんと一緒にできるってこともあり…来年デビュー10年目で、「オーファンズ」が自分の代表的な作品になるようにしたいと思っています。個人的な感情もいっぱい入ってます。観て損はさせない作品にします。
平埜:三人芝居って観る側からだと抵抗ありそうな気がするんです。しかもシアターウエストでやることで演劇チックだな、と思うかもしれません。でもこの作品は‟世代が違うから話がわからない”ということではない作品です。普通にみて理解できる作品だと思う。作品を観てお客さん同士で話し合ってほしい。そうして「オーファンズ」がいろんなところに広がっていったらいいなって思います。
「オーファンズ」公演チラシ
「オーファンズ」
<東京公演>
■期間:2016/2/10(水)~2016/2/21(日)
■会場:東京芸術劇場 シアターウエスト (東京都)
<兵庫公演>
■期間:2016/2/27(土)~206/2/28(日)
■会場:新神戸オリエンタル劇場 (兵庫県)
■出演:柳下大、平埜生成、高橋和也
■脚本:ライル・ケスラー
■翻訳:谷賢一
■演出:宮田慶子