ピーター・ブルック最新作『BATTLEFIELD—戦い終わった戦場でー』25日より開幕
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<撮影:阿部章仁>
「この勝利は敗北だ」
11月24日、新国立劇場中劇場にて、25日から初日を迎えるピーター・ブルック最新作『BATTLEFIELD—戦い終わった戦場でー』の公開舞台稽古が行なわれた。
2015年9月15日にフランス・パリにて世界初演の幕を開けた本作品は、1985年にアヴィニヨン・フェスティバルで初演され、以後日本を含む世界各地で上演された伝説的偉業『マハーバーラタ』に、御年90歳のブルックが再び挑んだ注目の舞台。“再び”といっても、様相はだいぶ異なるものとなった。
<撮影:阿部章仁>
全18編、約10万の詩句から成るインドの長大な叙事詩『マハーバーラタ』を、前作では「賭け」「追放」「戦争」の三部作に集約して、全9時間かけて上演した。今回は、すべての戦いが終わり、無数の骸(しかばね)で大地が覆われた戦場(battlefield)が舞台となる。
これ以上ないほど簡潔な空間に、土取利行がひとりジャンベの音を響かせる中、4人の俳優が、さまざまな人や動物を演じ分けてゆく。大量殺戮によって勝者となった軍の総帥が「この勝利は敗北だ」と吐き捨て、悔恨や罪悪感にさいなまれる姿は、奇しくもパリでの同時多発テロが起こり、不安定な世界情勢下にある今、これが遥か昔の物語でありながら、同時に現代の苛酷な争いを映し出している事に気づかされることだろう。
<撮影:阿部章仁>
<ピーター・ブルックのコメント>
3000年前の話であっても、そのことが起こるその瞬間、心を動かされ、彼らの問題が今の私たちの、すなわち私の問題になるということだ。それが私の目指すところだ。今回「マハーバーラタ」に戻り、その豊かさに大いに助けられたが、だからこそ前とは全く異なるアプローチをしていて、焼き直しではない。だからこれは「バトルフィールド」というタイトルなのだ。私たちがやっていることは、現代のことなのだ。
「マハーバーラタ」の原典では、なんと100億の死体が出てくる。その数字が古代インドで出てきたのだ。私たちの現代の戦争でさえ、そこまでの死傷者はないが、それほどの人間を殺す大量破壊兵器という発想が、古代にすでにあったんだ。今日の私たちには、それを現実的に感じることができる。くどくど言わなくても、これが文化とは芸術の枠に収まる古い題材でないことがわかる。現代の劇作家が書くどんなものよりも、説得力があるかもしれない。私は、とても興味があるが…残念ながらロンドンに行ってオッペンハイマー※の芝居を見ることはできないが、二つ(の芝居の主張)は同じものだ。最初の原爆が落とされた時、オッペンハイマーが抱いた疑問と、『バトルフィールド』の中でユディシュティラが、大戦争に勝利した王として、自分の責任で起きたことを目の前にして言う短いシンプルな台詞、「勝利は敗北だ」は。
<撮影:阿部章仁>
【脚本】ピーター・ブルック ジャン=クロード・カリエール マリー=エレーヌ・エティエンヌ
【演出】ピーター・ブルック マリー=エレーヌ・エティエンヌ
【音楽・演奏】土取利行
【公演日程】2015年11月25日(水)~29日(日)
【会場】新国立劇場中劇場
【料金】7,000円/U-25
【
【総合お問合せ】パルコ TEL:03-3477-5858 http://www.parco-play.com/
下記公演終了後に、本公演演出 マリー=エレーヌ・エティエンヌによるアフタートークショーの開催が決定。
11月23日(土)13:00公演終了後
出演:マリー=エレーヌ・エティエンヌ(「バトルフィールド」演出)
※上記日時の公演